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第86話 アサに注がれる熱
しおりを挟む熱すぎる舌が耳の淵を這い、首筋を舐める。じりっと肌が一瞬痛むのはニールが痕を残してくれた印だ。体を重ねるたびに、ニールが残してくれるそれはその後数日間僕の肌に残る。
まるで、花が咲いたように散らばる吸い痕を見るたびに、僕は自分の居場所はここにあるのだと確認できた。
「大丈夫か?」
「ウ、ンッ」
大きく広げられた脚がゆらゆらと揺れる。
ちゅっと軽く僕の唇に触れたニールがにこりと笑った。深く深く腰を押し込み、動きを止まった彼の手が金色の髪をかき上げる。僕の髪と違い、癖のあるそれは、汗に濡れてクルクルと弧を描いていた。
太く大きい指が真黒な僕の髪を撫でる。いつもは隠れている額に愛しそうに唇を寄せると、ニールは僕の耳元で言葉を紡いだ。
「アサ、もう少し付き合ってくれ」
「ン?」
自分の名前以外何を言われたか分からなかった。それもニールは分かっているはず。意思疎通が何とかできている僕たちは言葉をすべて理解できる必要はないように感じる。だって、この人は僕が嫌なことはしない。
何よりも優しく、慎重に扱ってくれるニールだからこそ、僕は安心できる。
「ヒャァ!」
ぐらっと視界が動くと、僕はニールの膝の上に座っていた。もちろん、おなかの中にはニールのモノが入ったままだ。自分の体重のせいでググっと奥へ進んでいく。その質量に喉の奥から叫び声が出そうだった。
「大丈夫か?」
「ハァン、ッ、ャッ、ンッ!」
下から小刻みに突かれて真っすぐ座っていられない。ガタガタとひざも揺れ出して僕は必至でニールの背中に手を回した。
広くない部屋に2人の吐息と、寝床がギシギシときしむ音が響き渡る。それだけでも恥ずかしくて、耳が熱くなってしまう。
「可愛いな、アサ」
「ボ、ク?」
「ああ、お前だ」
おなかの壁を突かれると気持ちよすぎて自然と涙が出てくる。ぽろぽろと泣いていると優しい仕草でニールが頬をぬぐってくれた。
それでも、ぐいぐいと最奥を突く腰を止めてくれるわけではなくて。僕の涙も止まることを知らずにこぼれ続ける。
腰をがっしりと押さえつけられた僕は逃げようがない。
まさか、逃げ出したいわけではないけれど、気持ちよすぎる行為に頭がおかしくなりそうで腰が自然と逃げる。
だけど、それが許されるわけでもなく。僕の腰が引く度に、腰を掴む手に力が加わった。
汗と石鹸の匂いが香る。
いつもと同じはずなのに、体を交えているときは何よりもこの匂いが熱を煽った。
鼻を目の前の逞しい胸に埋め、背中に回した手に力をこめると、頭上で僕の髪に唇を寄せ腰を突き続ける愛しい人が僕の名前を呼び続けた。
「アサ、もう駄目だっ」
「ィッ、ンッンッ!ハァ、ン、ダ、メ?」
何かをしてはいけないときに言う言葉だったはず。「ダメ」ってなんで?何をしちゃいけないの?そんな疑問が頭をめぐるけど、下からガンガンと貫かれ快感の波にのまれる僕はすぐにそんなことを忘れてしまった。
「ッ、ンッ、ァ、アッ、ニー、ル、ンーーーー!」
「…っ」
どくどくと熱が注がれ、じんわりと体の中に広がった。
パタリと、後ろに倒れたニールに引かれ、僕は汗ばんだ身体の上に身を任せた。
「ニール、スキ」
「はは、俺もだ」
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