運命の乗船

綿天モグ

文字の大きさ
上 下
43 / 125

第43話 アサの朝食

しおりを挟む

 朝ご飯を持って僕たちが泊まる宿に遊びに来たケンは、いつも通り元気いっぱいだ。

 ふわふわの卵焼きのような料理は「オムレツ」って言うらしい。ほうれん草に似た緑の葉っぱがたくさん入っていたけど、やっぱりケンはお料理上手。すごく美味しくてお腹も心もぽかぽかした。

 ニールと昨夜したことは僕の中では大人がすること。やってはいけないことをしてしまったような、不思議な罪悪感に駆られたけど、でも、だって、ニールだから、ニールにだけ、こういうことをやられてもダメって言えなくて。

 何でかとか、理由は説明できないんだけど、ニールのことが好きだから、肌に触れられるたびにドキドキしちゃうし、ニールが僕の中に入ってきた時なんて…

 あっ!そんなことばっか考えてると顔が真っ赤になっちゃう…

 今朝だって、ぎゅって手を握られただけで、頬がポカポカして体も熱くなったんだ。



 三人がお話してるのを眺めてると楽しそうだなって思う。僕も言いたいことが沢山あるし、聞きたいことだって沢山ある。

 毎日ニールとケンが言葉を教えてくれるから頑張って練習してるけど、会話ができるようになるには何年もかかっちゃうんじゃないかなあ。

「行くぞ、アサ」

 僕の手よりずっと大きくて頑丈な手が背中を擦る。ゆっくりと上下する指は優しくて心まで温かくなる。

「アサッ!早くはやく~!」

 もうドアノブに手をかけたケンはニコニコ笑ってぴょんぴょん跳ねている。

 今日はどこに行くんだろう?

 そんなことだって僕はまだ簡単に質問できない。船を降りてここには3日間泊まるんだって言うのはニールがゆっくり教えてくれたから分かってる。

 立ち上がると僕の背中は温かい体温に支えられた。背後からスルリと僕の頬を撫でるニールの指はちょっと冷たくて、火照った肌にちょうどいい。

 コツンとニールの顎が頭に添えられた。すごく背が高いニールに包まれると小さな僕はすっぽりと埋まってしまう。

 ニールやショーンほど大きくなるとは思わないけど、僕だってまだ成長期なはず!

 ふと顔を上げるとケンが何かを叫んでいる。なんだか分からないけどもうそろそろ出発したほうがよさそうだ。









 《ケンが叫んでいたこと》


「ちょっと!ニール?なんでアサにハグしてんの?僕もやる~!」
「はっ?!お前は先に行けっ」
「っ!僕の扱いひどくない?ショーンー、ニールがいーじーめーるー!」
「ケン、我々は先に出ていましょう」
「え?なんで?」
「手を」
「ん?手ぇ繋ぐの?」
「嫌ですか?」
「い、嫌じゃないよっっ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

次男は愛される

那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男 佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。 素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡ 無断転載は厳禁です。 【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】 12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。 近況ボードをご覧下さい。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

神獣の花嫁

綾里 ハスミ
BL
 親に酷い扱いを受けて育った主人公と、角が欠けていたゆえに不吉と言われて育った神獣の二人が出会って恋をする話。 <角欠けの神獣×幸薄い主人公>

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

つまりは相思相愛

nano ひにゃ
BL
ご主人様にイかないように命令された僕はおもちゃの刺激にただ耐えるばかり。 限界まで耐えさせられた後、抱かれるのだが、それもまたしつこく、僕はもう僕でいられない。 とことん甘やかしたいご主人様は目的達成のために僕を追い詰めるだけの短い話です。 最初からR表現です、ご注意ください。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

幸せの温度

本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。 まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。 俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。 陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。 俺にあんまり触らないで。 俺の気持ちに気付かないで。 ……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。 俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。 家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。 そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...