13 / 125
第13話 アサに迫り寄る影
しおりを挟む
「ケン、コレ…スキ…アゲル」
この船で生活を始めてまだ日が浅いけど、異国の言葉をいくつか覚え始めた。会話ができるほど話せるわけじゃないけど、少しなんとか意思疎通できるようになっていたと思う。
ほとんどが指をさして単語を言うってくらいだけど、それでも何もわからなかった頃に比べればましになってきたはず。未だに、会話に参加できないし、話しかけられても通じないから話し相手が諦めてため息をつくこともある…たまに気まずい思いをするけど、今、僕の目の前で必死に何かをお喋りしているケンは別だった。
ケンはこの船の厨房で働く男の子だ。この船に乗っていること、家に帰れないことを受け入れてから、僕は何もしない日々を送るのはもったいないと思いだした。
それでも、言葉の通じない僕に難しいことができるはずもなく、手伝えることと言えば料理くらいだったから、僕はほぼ毎日ケンの働く厨房で過ごしていた。
一緒に働きながら、ケンは毎日ちょっとずつ言葉を教えてくれる。教えてもらったばかりの数字で歳を聞いたら、18歳って言っていたから、多分、他の船員たちより僕と歳が近いはずだ。
年が近いせいか人懐っこい性格なのか彼だけは、ニールがいなくても僕がほっとできる存在になっていた。フワフワの髪の毛と健康的な肌色、大きな笑顔が目印のケンは、この船で唯一友達と思えるくらい気を許せる人だ。
僕は、午前中に厨房で作った茶菓子をケンに差し出した。確かこれは「ビスケット」っていうお菓子だったと思う。受け取ったビスケットを片手に微笑むと、ケンはあっと声を上げ立ち上がり、早口で何かを言うと走って自室へと駆け出して行ってしまった。
「オチャ? スグ、モド、ル?」
頭を巡らせ、今言われた言葉の意味を思い出そうと必死になっていた僕は、背後に迫っている影に気づかなかった。
この船で生活を始めてまだ日が浅いけど、異国の言葉をいくつか覚え始めた。会話ができるほど話せるわけじゃないけど、少しなんとか意思疎通できるようになっていたと思う。
ほとんどが指をさして単語を言うってくらいだけど、それでも何もわからなかった頃に比べればましになってきたはず。未だに、会話に参加できないし、話しかけられても通じないから話し相手が諦めてため息をつくこともある…たまに気まずい思いをするけど、今、僕の目の前で必死に何かをお喋りしているケンは別だった。
ケンはこの船の厨房で働く男の子だ。この船に乗っていること、家に帰れないことを受け入れてから、僕は何もしない日々を送るのはもったいないと思いだした。
それでも、言葉の通じない僕に難しいことができるはずもなく、手伝えることと言えば料理くらいだったから、僕はほぼ毎日ケンの働く厨房で過ごしていた。
一緒に働きながら、ケンは毎日ちょっとずつ言葉を教えてくれる。教えてもらったばかりの数字で歳を聞いたら、18歳って言っていたから、多分、他の船員たちより僕と歳が近いはずだ。
年が近いせいか人懐っこい性格なのか彼だけは、ニールがいなくても僕がほっとできる存在になっていた。フワフワの髪の毛と健康的な肌色、大きな笑顔が目印のケンは、この船で唯一友達と思えるくらい気を許せる人だ。
僕は、午前中に厨房で作った茶菓子をケンに差し出した。確かこれは「ビスケット」っていうお菓子だったと思う。受け取ったビスケットを片手に微笑むと、ケンはあっと声を上げ立ち上がり、早口で何かを言うと走って自室へと駆け出して行ってしまった。
「オチャ? スグ、モド、ル?」
頭を巡らせ、今言われた言葉の意味を思い出そうと必死になっていた僕は、背後に迫っている影に気づかなかった。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
次男は愛される
那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男
佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。
素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡
無断転載は厳禁です。
【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】
12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。
近況ボードをご覧下さい。



つまりは相思相愛
nano ひにゃ
BL
ご主人様にイかないように命令された僕はおもちゃの刺激にただ耐えるばかり。
限界まで耐えさせられた後、抱かれるのだが、それもまたしつこく、僕はもう僕でいられない。
とことん甘やかしたいご主人様は目的達成のために僕を追い詰めるだけの短い話です。
最初からR表現です、ご注意ください。
幸せの温度
本郷アキ
BL
※ラブ度高めです。直接的な表現もありますので、苦手な方はご注意ください。
まだ産まれたばかりの葉月を置いて、両親は天国の門を叩いた。
俺がしっかりしなきゃ──そう思っていた兄、睦月《むつき》17歳の前に表れたのは、両親の親友だという浅黄陽《あさぎよう》33歳。
陽は本当の家族のように接してくれるけれど、血の繋がりのない偽物の家族は終わりにしなければならない、だってずっと家族じゃいられないでしょ? そんなのただの言い訳。
俺にあんまり触らないで。
俺の気持ちに気付かないで。
……陽の手で触れられるとおかしくなってしまうから。
俺のこと好きでもないのに、どうしてあんなことをしたの? 少しずつ育っていった恋心は、告白前に失恋決定。
家事に育児に翻弄されながら、少しずつ家族の形が出来上がっていく。
そんな中、睦月をストーキングする男が現れて──!?

罰ゲームって楽しいね♪
あああ
BL
「好きだ…付き合ってくれ。」
おれ七海 直也(ななみ なおや)は
告白された。
クールでかっこいいと言われている
鈴木 海(すずき かい)に、告白、
さ、れ、た。さ、れ、た!のだ。
なのにブスッと不機嫌な顔をしておれの
告白の答えを待つ…。
おれは、わかっていた────これは
罰ゲームだ。
きっと罰ゲームで『男に告白しろ』
とでも言われたのだろう…。
いいよ、なら──楽しんでやろう!!
てめぇの嫌そうなゴミを見ている顔が
こっちは好みなんだよ!どーだ、キモイだろ!
ひょんなことで海とつき合ったおれ…。
だが、それが…とんでもないことになる。
────あぁ、罰ゲームって楽しいね♪
この作品はpixivにも記載されています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる