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4章 闇底で交わす小指
生命になれなかった子たち 11
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ともかく、清音の保護が目的の1つだ。2人は早足で近づこうとすると清音が踵を返し、走り出す。まるでカンダタたちから逃げていくようだ。
清音の不審な行動に一抹の不安を抱きつつも追いかける。
カンダタと瑠璃では走る速度が違う。カンダタの足だとすぐに追いつくが、それだと瑠璃を置いて行ってしまう。
振り返ってみれば、瑠璃が顎で差す。「先に行け」の意味だと受け取ったカンダタは前を向き直り、速度を上げた。
全速力で走ってれば、すぐに追いつくと見越していた。が、思っていたより清音と離れておりその上、彼女の足が速い。
一本道の回廊なので見失うの心配はない。それよりもカンダタが抱く一抹の不安が心を乱していた。
臆病な清音の性格からしてみれば、カンダタたちを視認すればすぐ様こちらに助けを求めてくるはずだ。
それとは真逆の行動する清音はカンダタたちを回廊の奥へと誘っているようだ。
清音を追いかけて行くと長い回廊は終わりを告げ、扇状の大広間に着いた。カンダタが潜った出入り口は扇の要部分になっており、末広がりになった奥の両端には別室につながるドアが見分けられる。
床には裸体の女性が何体も倒れ、その腹部は裂かれている。
大広間の中央には山のように積まれた秘密箱があった。清音はその頂点を目指して登っていた。
「清音!」
カンダタは呼び止めるも、呼ばれた相手は振り向こうともしない。
「呼んでるの、私を呼んでる。見つけてあげないと」
カンダタの呼びかけには答えず、聞こえてくるのは虚ろに繰り返す独り言。
催眠にでもかけられているのだろうか。清音の手足や口調はどこか浮いている。このままでは連れ戻せない。
カンダタは秘密箱の山を登り始める。抱いていた一抹の不安は更に大きくばり、それは焦りとなっていた。
「いた!」
清音の声が弾んだ。カンダタからは後ろ姿しか見えない。
喜んだ清音が手に取ったのは赤子と同じ大きさの秘密箱。清音はそれを嬉々として閉じられたからくりを暴こうとする。
早く清音を捕獲しなければ取り返しがつかない、と不思議な直感が働いていた。
「仕掛けは何回? 38回?一週間足りないよ?それでいいの?」
清音の独り言はどこかおかしい。まるで見えない誰かと会話しているようだ。
ようやく清音のところまでの登り詰めるとカンダタは彼女の肩を揺さぶり、こちらに意識を向けさせようとする。
強く揺さぶっても清音の視線は秘密箱から外れず、表面の黒い板をずらしてはからくりの謎に夢中になっている。
清音に黒蝶の模様はない。服の下も確認したいところだが、それはカンダタがやるべきではない。それよりも清音から秘密箱を取り上げなければ。
清音の両手首を掴み、秘密箱の仕掛けを解く手を止めさせる。
カンダタの行為に清音は気分を害し、顔を歪めた。身を捩ると女子とは思えない筋力でカンダタを振り払う。想像以上の力に危うく山から崩れ落ちそうになった。
何とか身体を保ち、その場で踏み止まるもカンダタの手が離れた。
「邪魔しないでっ!」
普段の大人しい清音ではありえない。はち切れた甲高い怒鳴り声だった。
「私はこの子と会話しているのっ!」
カンダタを眼中に入れたが、言っていることは支離滅裂だ。そして清音は落ちないように体勢を保っていたカンダタの肩を強く押した。
角張った山の上、崩れかけていた体勢では均衡を保つ術はなく、あっけなく秘密箱からなだれ落ちた。
転がった拍子にいくつかの秘密箱がカンダタと共に落ちる。
清音の不審な行動に一抹の不安を抱きつつも追いかける。
カンダタと瑠璃では走る速度が違う。カンダタの足だとすぐに追いつくが、それだと瑠璃を置いて行ってしまう。
振り返ってみれば、瑠璃が顎で差す。「先に行け」の意味だと受け取ったカンダタは前を向き直り、速度を上げた。
全速力で走ってれば、すぐに追いつくと見越していた。が、思っていたより清音と離れておりその上、彼女の足が速い。
一本道の回廊なので見失うの心配はない。それよりもカンダタが抱く一抹の不安が心を乱していた。
臆病な清音の性格からしてみれば、カンダタたちを視認すればすぐ様こちらに助けを求めてくるはずだ。
それとは真逆の行動する清音はカンダタたちを回廊の奥へと誘っているようだ。
清音を追いかけて行くと長い回廊は終わりを告げ、扇状の大広間に着いた。カンダタが潜った出入り口は扇の要部分になっており、末広がりになった奥の両端には別室につながるドアが見分けられる。
床には裸体の女性が何体も倒れ、その腹部は裂かれている。
大広間の中央には山のように積まれた秘密箱があった。清音はその頂点を目指して登っていた。
「清音!」
カンダタは呼び止めるも、呼ばれた相手は振り向こうともしない。
「呼んでるの、私を呼んでる。見つけてあげないと」
カンダタの呼びかけには答えず、聞こえてくるのは虚ろに繰り返す独り言。
催眠にでもかけられているのだろうか。清音の手足や口調はどこか浮いている。このままでは連れ戻せない。
カンダタは秘密箱の山を登り始める。抱いていた一抹の不安は更に大きくばり、それは焦りとなっていた。
「いた!」
清音の声が弾んだ。カンダタからは後ろ姿しか見えない。
喜んだ清音が手に取ったのは赤子と同じ大きさの秘密箱。清音はそれを嬉々として閉じられたからくりを暴こうとする。
早く清音を捕獲しなければ取り返しがつかない、と不思議な直感が働いていた。
「仕掛けは何回? 38回?一週間足りないよ?それでいいの?」
清音の独り言はどこかおかしい。まるで見えない誰かと会話しているようだ。
ようやく清音のところまでの登り詰めるとカンダタは彼女の肩を揺さぶり、こちらに意識を向けさせようとする。
強く揺さぶっても清音の視線は秘密箱から外れず、表面の黒い板をずらしてはからくりの謎に夢中になっている。
清音に黒蝶の模様はない。服の下も確認したいところだが、それはカンダタがやるべきではない。それよりも清音から秘密箱を取り上げなければ。
清音の両手首を掴み、秘密箱の仕掛けを解く手を止めさせる。
カンダタの行為に清音は気分を害し、顔を歪めた。身を捩ると女子とは思えない筋力でカンダタを振り払う。想像以上の力に危うく山から崩れ落ちそうになった。
何とか身体を保ち、その場で踏み止まるもカンダタの手が離れた。
「邪魔しないでっ!」
普段の大人しい清音ではありえない。はち切れた甲高い怒鳴り声だった。
「私はこの子と会話しているのっ!」
カンダタを眼中に入れたが、言っていることは支離滅裂だ。そして清音は落ちないように体勢を保っていたカンダタの肩を強く押した。
角張った山の上、崩れかけていた体勢では均衡を保つ術はなく、あっけなく秘密箱からなだれ落ちた。
転がった拍子にいくつかの秘密箱がカンダタと共に落ちる。
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