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3章 死神が誘う遊園地
痛みの共鳴 10
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夢から覚めるのは意外と簡単であたしが現世を思い浮かべながら白糸を引っ張るとあっさりと目が覚めた。
パレードの時にできなかった技ができるようになっていた。
それから数日間、あたしとカンダタはそれぞれの考えをまとめた。謎となったのは「紅柘榴の秘密」と「ハクについて」だ。
ハクには申し訳ないと思う。ハクのことを聞きに行ったのにその目的を忘れてしまった。そんなハクは少し落ち込んでいる様子だった。
あと夢楽土会が朝のニュースで話題になっていた。問題視されていたのは「自殺を促す洗脳があったのではないか」だ。
会長の失踪、有名企業のCEOによる個人的な資金援助などと盛り上がる。
因みにそのCEOとやらは魂が抜けたような廃人となっていたらしい。彼が強い信念として抱いていた「真実の愛」が砕けたのね。
さえりは「生活に害を及ばさせない。私が必ず保障する」と語ってくれた。久しぶりに会った彼女は少しやつれていた。
朝7時のニュースを眺めながら叔母のマーマレードがたっぷり乗ったトーストを頬張る。
警察は真実を血眼になって探している。
それは永遠に証明されない。魂のプログラムや夢の世界で起きた出来事はあちら側であり、現世ではありえない現象なのだから。
「そういえば、首が隠していた紅柘榴の秘密だけど」
数日間のうちにまとめていた考えの1つをカンダタとハクに告げる。
「カンダタの話だと紅柘榴は蝶男に捕らえられていて塀の中で外の世界も知らないまま暮らしていたのよね?」
「生前の記憶だとそうなる」
「だとしたら彼女はカンダタが死んだ後、首と接触したことになるわね」
そう考えるのが自然だ。首がカンダタを知っていたならば、紅柘榴から首に話した。懐かしい思い出を語るように。
「それがなんだ?」
「紅柘榴って何者なの?」
「それは」
そこまで言ってカンダタは噤む。思い悩んでいる様子はわからないと言っていた。
蝶男が大事に隠していたもの。首が語らなかった彼女の秘密。カンダタにとっては想い人だけれど、彼女には謎が多すぎる。
「だが、秘密を持っていた首は消滅した」
首とは語らずに消滅した。
「もしかしたら、手がかりになる人物がいる」
首の話である人物が登場した。そして、その名前はケイの口からも出ていた。
「カゲヒサ」
大昔、首と共にハザマでテロを起こし、決別した人物。そのカゲヒサはケイを作った人物だ。
根拠はない。首と関わりがあったなら紅柘榴ついても知っているかもしれないという勘だ。
「カゲヒサ、影弥」
カンダタも聞き覚えがあるみたいで名前を復唱し、歩き回る。
すると、カンダタは何か思い出したかのようにピタリと動きを止め、口を手で覆う。明らかに動揺している。
「思い出した、影弥」
首が影弥についてカンダタに話していたのだろうか。それにしても動揺しすぎよね。
「俺が紅柘榴を連れて外で暮らそうと企てた時だ」
カンダタの話の切り口はまるで、生前の頃を語っている。
「そんな時、助言めいたことを残した人物がいた」
「じゃあ、カンダタ」
言いたいことが伝わり、カンダタは頷く。
「生前に会ってる」
名前だけしか現れなかった人物が実はカンダタと会っていた。しかし、カンダタはそれだけじゃないと告げる。それはあたしに2度の衝撃を与える。
「そいつ、影弥は蝶男と同じ顔をしていたんだ」
3章 死神が誘う遊園地 終
パレードの時にできなかった技ができるようになっていた。
それから数日間、あたしとカンダタはそれぞれの考えをまとめた。謎となったのは「紅柘榴の秘密」と「ハクについて」だ。
ハクには申し訳ないと思う。ハクのことを聞きに行ったのにその目的を忘れてしまった。そんなハクは少し落ち込んでいる様子だった。
あと夢楽土会が朝のニュースで話題になっていた。問題視されていたのは「自殺を促す洗脳があったのではないか」だ。
会長の失踪、有名企業のCEOによる個人的な資金援助などと盛り上がる。
因みにそのCEOとやらは魂が抜けたような廃人となっていたらしい。彼が強い信念として抱いていた「真実の愛」が砕けたのね。
さえりは「生活に害を及ばさせない。私が必ず保障する」と語ってくれた。久しぶりに会った彼女は少しやつれていた。
朝7時のニュースを眺めながら叔母のマーマレードがたっぷり乗ったトーストを頬張る。
警察は真実を血眼になって探している。
それは永遠に証明されない。魂のプログラムや夢の世界で起きた出来事はあちら側であり、現世ではありえない現象なのだから。
「そういえば、首が隠していた紅柘榴の秘密だけど」
数日間のうちにまとめていた考えの1つをカンダタとハクに告げる。
「カンダタの話だと紅柘榴は蝶男に捕らえられていて塀の中で外の世界も知らないまま暮らしていたのよね?」
「生前の記憶だとそうなる」
「だとしたら彼女はカンダタが死んだ後、首と接触したことになるわね」
そう考えるのが自然だ。首がカンダタを知っていたならば、紅柘榴から首に話した。懐かしい思い出を語るように。
「それがなんだ?」
「紅柘榴って何者なの?」
「それは」
そこまで言ってカンダタは噤む。思い悩んでいる様子はわからないと言っていた。
蝶男が大事に隠していたもの。首が語らなかった彼女の秘密。カンダタにとっては想い人だけれど、彼女には謎が多すぎる。
「だが、秘密を持っていた首は消滅した」
首とは語らずに消滅した。
「もしかしたら、手がかりになる人物がいる」
首の話である人物が登場した。そして、その名前はケイの口からも出ていた。
「カゲヒサ」
大昔、首と共にハザマでテロを起こし、決別した人物。そのカゲヒサはケイを作った人物だ。
根拠はない。首と関わりがあったなら紅柘榴ついても知っているかもしれないという勘だ。
「カゲヒサ、影弥」
カンダタも聞き覚えがあるみたいで名前を復唱し、歩き回る。
すると、カンダタは何か思い出したかのようにピタリと動きを止め、口を手で覆う。明らかに動揺している。
「思い出した、影弥」
首が影弥についてカンダタに話していたのだろうか。それにしても動揺しすぎよね。
「俺が紅柘榴を連れて外で暮らそうと企てた時だ」
カンダタの話の切り口はまるで、生前の頃を語っている。
「そんな時、助言めいたことを残した人物がいた」
「じゃあ、カンダタ」
言いたいことが伝わり、カンダタは頷く。
「生前に会ってる」
名前だけしか現れなかった人物が実はカンダタと会っていた。しかし、カンダタはそれだけじゃないと告げる。それはあたしに2度の衝撃を与える。
「そいつ、影弥は蝶男と同じ顔をしていたんだ」
3章 死神が誘う遊園地 終
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