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3章 死神が誘う遊園地
支配される魂、抗う 9
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スイートルームの豪華な扉の前に着くと翡翠を下ろした。
カンダタは扉に耳をあてる。人の気配がしない。試しに扉を2回叩く。無反応。中に人はいないようだ。
どうやらカンダタと翡翠は政蔵たちよりも早く着いてしまったらしい。押してみるも扉は開かない。
「カードキーがあります」
翡翠は袖の中から薄い板を取り出すとドアノブの差し込み口に入れる。ドアノブの内部から閂が引かれ、扉が自動的に開く。
それと同時にエレベーターが到着を知らせる短い音を鳴らした。四角い箱に乗っていたのは政蔵だった。左右には銃器を持った2人のキャスト、そして何故か清音、ケイ、光弥がいた。
政蔵はカンダタたちを認識すると目を丸くさせた。
「まずい」
「撃て!」
反応が早かったのはカンダタだった。翡翠の背中を押しつけ、倒れるようにスイートルーム避難する。キャストたちによる無慈悲な弾幕がカンダタの背中を掠めた。
スイートルームの鍵を閉め、混乱しそうな脳内を整理する。弾幕は未だに続き、扉に銃弾が衝突し弾かれている。
「M203グレートランチャー付M16アサルトライフルです」
「は?」
耳がおかしくなる弾幕の銃撃音に翡翠は不明な単語を並べた解説をする。
「プレデターの主人公が使っていた銃器をモデルに作られました。お父様はアーノルド・シュワルツネッカーのファンなので」
翡翠のプログラムならば仕方がないと割り切っているが、こんな時に解説が入ればカンダタも苛立つ。
「俺が知りたいのはあの兵器はこの扉を破ってくるかだ」
映画のうんちくよりもカンダタたちを守ってくれる扉の強度を知りたい。
「頑丈ですよ。スイートルームは瑠璃の為にありますから。銃器くらいでは破れません」
翡翠の説明を裏付けるように弾幕は扉を破るのを諦めた。
「赤眼の男だね」
嗄れた声が近くでした。どうやら扉の前まで来ているようだ。
「君のことは知っているよ。我々の目的は一緒だ。そうだろう?」
こいつは何を言っているのか。まるでカンダタが元から仲間であると言いたげだ。
これには翡翠も困惑し、カンダタを見上げる。疑心と信心が半々になった複雑な境地は縋るように黒衣が袖を掴む。
「平気だ」
困惑しているのはカンダタも同じだ。だが、目的は変わらない。
「応答はなしか。彼が操作できないと言うのは事実らしいな」
黙っていると政蔵がぼやいた。
「まあいい。こちらにもカードキーがある。悪いが弾幕を受けてもらうよ」
こちらには逃げ道がないと知り、政蔵は宣言する。
「安心したまえ、赤眼の男はしばらく動けなくなるだけだ。出来損ないの双子は消滅するがね」
面白おかしく笑う政蔵の声に袖を掴む翡翠の手が震えた。不安を取り除こうとカンダタは囁く。
「隠れろ」
「カンダタさんは?」
「何とかなる。平気だ。俺はもう死んでるから」
背中を押して促す。翡翠は後悔が残りそうな足取りで浴室に走っていく。
カンダタは扉に耳をあてる。人の気配がしない。試しに扉を2回叩く。無反応。中に人はいないようだ。
どうやらカンダタと翡翠は政蔵たちよりも早く着いてしまったらしい。押してみるも扉は開かない。
「カードキーがあります」
翡翠は袖の中から薄い板を取り出すとドアノブの差し込み口に入れる。ドアノブの内部から閂が引かれ、扉が自動的に開く。
それと同時にエレベーターが到着を知らせる短い音を鳴らした。四角い箱に乗っていたのは政蔵だった。左右には銃器を持った2人のキャスト、そして何故か清音、ケイ、光弥がいた。
政蔵はカンダタたちを認識すると目を丸くさせた。
「まずい」
「撃て!」
反応が早かったのはカンダタだった。翡翠の背中を押しつけ、倒れるようにスイートルーム避難する。キャストたちによる無慈悲な弾幕がカンダタの背中を掠めた。
スイートルームの鍵を閉め、混乱しそうな脳内を整理する。弾幕は未だに続き、扉に銃弾が衝突し弾かれている。
「M203グレートランチャー付M16アサルトライフルです」
「は?」
耳がおかしくなる弾幕の銃撃音に翡翠は不明な単語を並べた解説をする。
「プレデターの主人公が使っていた銃器をモデルに作られました。お父様はアーノルド・シュワルツネッカーのファンなので」
翡翠のプログラムならば仕方がないと割り切っているが、こんな時に解説が入ればカンダタも苛立つ。
「俺が知りたいのはあの兵器はこの扉を破ってくるかだ」
映画のうんちくよりもカンダタたちを守ってくれる扉の強度を知りたい。
「頑丈ですよ。スイートルームは瑠璃の為にありますから。銃器くらいでは破れません」
翡翠の説明を裏付けるように弾幕は扉を破るのを諦めた。
「赤眼の男だね」
嗄れた声が近くでした。どうやら扉の前まで来ているようだ。
「君のことは知っているよ。我々の目的は一緒だ。そうだろう?」
こいつは何を言っているのか。まるでカンダタが元から仲間であると言いたげだ。
これには翡翠も困惑し、カンダタを見上げる。疑心と信心が半々になった複雑な境地は縋るように黒衣が袖を掴む。
「平気だ」
困惑しているのはカンダタも同じだ。だが、目的は変わらない。
「応答はなしか。彼が操作できないと言うのは事実らしいな」
黙っていると政蔵がぼやいた。
「まあいい。こちらにもカードキーがある。悪いが弾幕を受けてもらうよ」
こちらには逃げ道がないと知り、政蔵は宣言する。
「安心したまえ、赤眼の男はしばらく動けなくなるだけだ。出来損ないの双子は消滅するがね」
面白おかしく笑う政蔵の声に袖を掴む翡翠の手が震えた。不安を取り除こうとカンダタは囁く。
「隠れろ」
「カンダタさんは?」
「何とかなる。平気だ。俺はもう死んでるから」
背中を押して促す。翡翠は後悔が残りそうな足取りで浴室に走っていく。
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