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3章 死神が誘う遊園地
遊園地 14
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パレードはキャッスルタウンからリメインズエリアへと行進する。ヨーロッパ風の城下町が南米のジャングルが背景に様変わりする。
並んだカシの木、謎のポールと歴史が積まられていない真新しい遺跡。金楽器の陽気な音楽はなくなって、鳥の鳴き声が大自然さをわざとらしく表現する。不気味で謎めいたエリアね。
キャッスルタウンと比べて物静かな通りを賑やかなパレードが横断する。もちろん、そこでも多くの人々を魅了して引き寄せる。
人々の好奇は檻の中のあたしたちに向けられていた。
機械ミミズと吊された女子高生、捕縛された男2人に気絶した女と立ち竦む少女。これらを珍獣にしか見えていない。指を差しカメラのシャッターを連続的に押す。
「それで?この流れだと俺たちは脳みそをプラグで接続されるが、これが瑠璃のプラン?」
束縛され、見世物にされた挙句、魂のプログラムで人格を改変させられる予定だから光弥が不満になって文句を言ってきた。
光弥はそれと同じことを地獄やハザマでしているのに、いざ自分の身に降りかかると不安や不満になって嘆くのね。
カンダタもあたしと同じ考えをしたみたいで、非難する目が光弥を捉える。それでも、口には出さない。こんなくだらないもので言い争って気力を消費するのは馬鹿げてる。
「いつまでも従わないわ。目的地に着いたらキャストから逃げる」
着いた先で桐 首を探す。そこで待っているはず。
あいつは待っているとあたしに言った。
集会での桐 首に敵意はなかった。彼の目的はあたしであっても、危害は加えない、はず。
「俺たちは?」
あたしのプランには光弥とカンダタが入っていない。
「勝手にすれば?」
万が一、機械ミミズから解放されてされてもされなくてもあたしは白鋏で脱出するだけ。ついてきたいのなら勝手にすればいい。
パレードはナイトエリアに移動する。
その名の通りナイトエリアの空は夜に染まり、星々が点在している。建築物の風貌はパリの街並みに似ていて、名物のエッフェル塔もどきや凱旋門もどきがあった。
緑、黄、赤といったカラフルさはなく、リメインズエリアのような不気味さもない。穏やかな静寂が漂う。
踊り終わったダンサーが檻の前に立つとタッチパネルでパスワードを入力する。檻の扉は開かれてカンダタたちを束縛していた機械ミミズが解かれて天井に戻る。
「お疲れ様でした!こちらのホテルでごゆっくりとお休み下さい!」
キャストがエスコートするように手を差し出す。
カンダタたちの束縛を解いたのは意外ね。逃げられるとは考えていないのかしら。
いや、違うわね。逃げ場がないと奴らは理解している。ここは奴らによって作られた世界なんだからどこに逃げたって必ず捕まる。
あたしは差し出された手を無視して檻から出る。ハク、光弥が続いて、カンダタが出ると振り返った。
檻の中には昏睡している人と機械ミミズに繋がれた人がいる。
「後の放浪者様は私どもがお連れ致します!」
キャストが早く来いとカンダタを急かす。
檻に残される人がどこに連れて行かれ、何をされるのか。あたしも光弥も理解できた。だからといってカンダタには助けてやれる術を持っていない。
誰だって自分の身が精一杯なんだからそれ以上の重荷をどうして持とうと思えるのかそれが不思議で仕様がない。
「ヒーロー気取りもその辺で止めておいたほうがいいわよ」
「わかっている」
それはカンダタ自身が自覚している。カンダタはヒーローじゃない。生前もただの盗人だったらしい。何かを守れる範囲は限られている。
並んだカシの木、謎のポールと歴史が積まられていない真新しい遺跡。金楽器の陽気な音楽はなくなって、鳥の鳴き声が大自然さをわざとらしく表現する。不気味で謎めいたエリアね。
キャッスルタウンと比べて物静かな通りを賑やかなパレードが横断する。もちろん、そこでも多くの人々を魅了して引き寄せる。
人々の好奇は檻の中のあたしたちに向けられていた。
機械ミミズと吊された女子高生、捕縛された男2人に気絶した女と立ち竦む少女。これらを珍獣にしか見えていない。指を差しカメラのシャッターを連続的に押す。
「それで?この流れだと俺たちは脳みそをプラグで接続されるが、これが瑠璃のプラン?」
束縛され、見世物にされた挙句、魂のプログラムで人格を改変させられる予定だから光弥が不満になって文句を言ってきた。
光弥はそれと同じことを地獄やハザマでしているのに、いざ自分の身に降りかかると不安や不満になって嘆くのね。
カンダタもあたしと同じ考えをしたみたいで、非難する目が光弥を捉える。それでも、口には出さない。こんなくだらないもので言い争って気力を消費するのは馬鹿げてる。
「いつまでも従わないわ。目的地に着いたらキャストから逃げる」
着いた先で桐 首を探す。そこで待っているはず。
あいつは待っているとあたしに言った。
集会での桐 首に敵意はなかった。彼の目的はあたしであっても、危害は加えない、はず。
「俺たちは?」
あたしのプランには光弥とカンダタが入っていない。
「勝手にすれば?」
万が一、機械ミミズから解放されてされてもされなくてもあたしは白鋏で脱出するだけ。ついてきたいのなら勝手にすればいい。
パレードはナイトエリアに移動する。
その名の通りナイトエリアの空は夜に染まり、星々が点在している。建築物の風貌はパリの街並みに似ていて、名物のエッフェル塔もどきや凱旋門もどきがあった。
緑、黄、赤といったカラフルさはなく、リメインズエリアのような不気味さもない。穏やかな静寂が漂う。
踊り終わったダンサーが檻の前に立つとタッチパネルでパスワードを入力する。檻の扉は開かれてカンダタたちを束縛していた機械ミミズが解かれて天井に戻る。
「お疲れ様でした!こちらのホテルでごゆっくりとお休み下さい!」
キャストがエスコートするように手を差し出す。
カンダタたちの束縛を解いたのは意外ね。逃げられるとは考えていないのかしら。
いや、違うわね。逃げ場がないと奴らは理解している。ここは奴らによって作られた世界なんだからどこに逃げたって必ず捕まる。
あたしは差し出された手を無視して檻から出る。ハク、光弥が続いて、カンダタが出ると振り返った。
檻の中には昏睡している人と機械ミミズに繋がれた人がいる。
「後の放浪者様は私どもがお連れ致します!」
キャストが早く来いとカンダタを急かす。
檻に残される人がどこに連れて行かれ、何をされるのか。あたしも光弥も理解できた。だからといってカンダタには助けてやれる術を持っていない。
誰だって自分の身が精一杯なんだからそれ以上の重荷をどうして持とうと思えるのかそれが不思議で仕様がない。
「ヒーロー気取りもその辺で止めておいたほうがいいわよ」
「わかっている」
それはカンダタ自身が自覚している。カンダタはヒーローじゃない。生前もただの盗人だったらしい。何かを守れる範囲は限られている。
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