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3章 死神が誘う遊園地
夏と夢と信仰と補習 20
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道なりに進んでいくとアトラクションに辿り着く。木漏れ日と花と緑に覆われたエリア内にイースターエックの形をした建築物が私の前に現れた。
風景やパレードばかり意識を向けていたからアトラクションには参加しなかった。
こういうのは友人と来て楽しむものだしね。
1人の寂しさがぶり返す。
「エッグハンター参加しませんか?」
迷っているとキャストが私の隣に現れる。唐突の登場に私は驚かなくなっていた。
「エッグハンター?」
それがアトラクションの名前らしい。
「エッグを当てて景品をもらうアトラクションです! SNSでも話題になっていますよ!」
話題になっている。そのワードに弱くなっていた私は自然とイースターエックの建物の中に入っていた。
屋内はケルト音楽の踊りだしたくなるような楽しいメロディに包まれていた。
「ようこそ!エッグハンターへ!」
天井のサウンドからキャストのアナウンスが元気よく響く。私の他にも数種類の参加者がいて、アナウンス通りホールに集まる。
イースターエッグの内部は円状のホールになっていた。
正面のアーチゲートからキャストが手押しカートと共に現れる。カートには数十丁の小銃。
「アトラクションはこちらになります!」
キャストはエッグを当てると話していた。お祭りでいう射的みたいなものかな?
詳しい説明はこちらへとキャストは参加者をアーチゲートの奥に案内する。私の周りの流れに乗ってゲートを潜るる。
居心地の良い夢から覚ます悪臭が鼻をつく。木漏れ日の優しさがなくなり、森に広がるのは背筋を凍らす暗闇の静寂。腐った臭いに混じっていたのは錆びた鉄の臭い。
私はこの臭いを知っている。
「ルールは簡単!逃げるエッグを狙って撃つだけ!」
キャストの口調は変わらず、周りも何事もないように説明を聞いている。
私は鼻が曲がってしまう程の悪臭に耐えているのに、周囲の人々はどうして平気なの?
「狙うエッグはこちらになります!」
森の奥から、暗闇の奥から、車輪を回して運ばれてきたのはカラフルな鉄格子。閉じ込められていたのは人間だった。
私たちと同じ足を持ち、同じ手を持ち、同じように怯えている。
エッグなんかじゃない。私は後退る。
「弾を詰めて、エッグに狙いを定めて」
祭りの射的なら詰めるのはスポンジだろう。
この鉄と腐った臭いはそんな優しさはないと伝えている。
「引き金を引きます!」
銃声が響く。硝煙が舞う。参加者たちから歓声が上がり、狂気が走っていくのを肌で感じた。鉄格子の中の人は左胸に赤い丸が描かれ、崩れ落ちた。
私は悲鳴を飲み込んだ。歓声の中で1人だけ色が違う声は目立ってしまう。
私はなるべく静かに存在を悟られないよう、人の密集から離れようと後ろ足で退がる 。
逃げないと、ここから早く。
震えで退がる両肩を突然後ろから現れたキャストが止める。
「どうかなさいましたか?」
「ひっ」
悲鳴が短く漏れる。キャストの握力が強く、私の肩を固定させる。頭だけ振り向くと明るい笑顔を浮かべるキャスト。
「ちょっと、あの、き、気分が悪くなって」
何事もないと装おうとしたのに声と身体は勝手に震える。
「大変!ホテルへご案内しますね!」
この場合は医務室や救護室じゃないの?なんでホテルなんだろう。
「いえ、すぐに良くなるので、外の空気を」
何もかもが怪しく思えてきて、キャストの手から逃れようとする。
掴む握力が更に強くなって、長い爪が肌に食い込む。顔が歪み、喉が震える。痛みと恐怖から涙が溜まる。
「万が一ということもあります」
声のトーンも明るい笑顔も変わらない。なのに、人の皮で隠されたどす黒い狂気が私を捉える。
「ご安心下さい。我々はあなたを楽しませるのが役目ですから」
楽しい夢なんかじゃない。
私は悪夢に迷い込んでしまっていた。
風景やパレードばかり意識を向けていたからアトラクションには参加しなかった。
こういうのは友人と来て楽しむものだしね。
1人の寂しさがぶり返す。
「エッグハンター参加しませんか?」
迷っているとキャストが私の隣に現れる。唐突の登場に私は驚かなくなっていた。
「エッグハンター?」
それがアトラクションの名前らしい。
「エッグを当てて景品をもらうアトラクションです! SNSでも話題になっていますよ!」
話題になっている。そのワードに弱くなっていた私は自然とイースターエックの建物の中に入っていた。
屋内はケルト音楽の踊りだしたくなるような楽しいメロディに包まれていた。
「ようこそ!エッグハンターへ!」
天井のサウンドからキャストのアナウンスが元気よく響く。私の他にも数種類の参加者がいて、アナウンス通りホールに集まる。
イースターエッグの内部は円状のホールになっていた。
正面のアーチゲートからキャストが手押しカートと共に現れる。カートには数十丁の小銃。
「アトラクションはこちらになります!」
キャストはエッグを当てると話していた。お祭りでいう射的みたいなものかな?
詳しい説明はこちらへとキャストは参加者をアーチゲートの奥に案内する。私の周りの流れに乗ってゲートを潜るる。
居心地の良い夢から覚ます悪臭が鼻をつく。木漏れ日の優しさがなくなり、森に広がるのは背筋を凍らす暗闇の静寂。腐った臭いに混じっていたのは錆びた鉄の臭い。
私はこの臭いを知っている。
「ルールは簡単!逃げるエッグを狙って撃つだけ!」
キャストの口調は変わらず、周りも何事もないように説明を聞いている。
私は鼻が曲がってしまう程の悪臭に耐えているのに、周囲の人々はどうして平気なの?
「狙うエッグはこちらになります!」
森の奥から、暗闇の奥から、車輪を回して運ばれてきたのはカラフルな鉄格子。閉じ込められていたのは人間だった。
私たちと同じ足を持ち、同じ手を持ち、同じように怯えている。
エッグなんかじゃない。私は後退る。
「弾を詰めて、エッグに狙いを定めて」
祭りの射的なら詰めるのはスポンジだろう。
この鉄と腐った臭いはそんな優しさはないと伝えている。
「引き金を引きます!」
銃声が響く。硝煙が舞う。参加者たちから歓声が上がり、狂気が走っていくのを肌で感じた。鉄格子の中の人は左胸に赤い丸が描かれ、崩れ落ちた。
私は悲鳴を飲み込んだ。歓声の中で1人だけ色が違う声は目立ってしまう。
私はなるべく静かに存在を悟られないよう、人の密集から離れようと後ろ足で退がる 。
逃げないと、ここから早く。
震えで退がる両肩を突然後ろから現れたキャストが止める。
「どうかなさいましたか?」
「ひっ」
悲鳴が短く漏れる。キャストの握力が強く、私の肩を固定させる。頭だけ振り向くと明るい笑顔を浮かべるキャスト。
「ちょっと、あの、き、気分が悪くなって」
何事もないと装おうとしたのに声と身体は勝手に震える。
「大変!ホテルへご案内しますね!」
この場合は医務室や救護室じゃないの?なんでホテルなんだろう。
「いえ、すぐに良くなるので、外の空気を」
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掴む握力が更に強くなって、長い爪が肌に食い込む。顔が歪み、喉が震える。痛みと恐怖から涙が溜まる。
「万が一ということもあります」
声のトーンも明るい笑顔も変わらない。なのに、人の皮で隠されたどす黒い狂気が私を捉える。
「ご安心下さい。我々はあなたを楽しませるのが役目ですから」
楽しい夢なんかじゃない。
私は悪夢に迷い込んでしまっていた。
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