267 / 618
3章 死神が誘う遊園地
夏と夢と信仰と補習 16
しおりを挟む
私の意識に飛び込んできたのはラッパの音楽とウェルカムボードを持った女性。
彼女は私に笑顔を向けていていた。動きやすそうなブーツと短い丈の創作着物は黄緑とピンクの明るい配色になっている。
私、ベッドで寝ていた、よね?
戸惑いながらも周囲を見渡す。ラスクサークルのタイルが地面に敷き詰められていて巨大な円の描き、その中心には目を奪われる見事な城があった。
シミひとつも許さない白い外装に青い屋根が鮮やかだった。ファンタジーの映画やアニメの世界だと信じてしまいそうになる。
「初めてのご来園ですか?」
お城に見張られていると女性が話しかけてきて、私の意識は再び彼女に戻る。
「こちらがキャストとから放浪者様へのプレゼントです!」
ポーチやポケットらしきものは見当たらないのに気が付けば女性の手にスマホによく似た端末とポップコーンがあった。そして、掲げていたはずのウェルカムボードがなくなっている。
「キャスト?」
「我々のことです!放浪者様にサービスを提供しております!」
キャストの笑顔が崩れず、ますます混乱する。
私はベッドで寝てしまったの?これは夢?
キャストは説明を続ける。
「園内は5つのエリアに分かれております。現在地はキャッスルタウンのお城前になります。キャッスルタウンは園内の中心になりまして、南西にポートエリア、北西にフォレストエリア、北東にリメインズエリア、南東にナイトエリアがあります。各エリアごとにイベントが催されていますのでぜひご参加ください!またお休みになりたい場合はナイトエリアにありますホテルをご利用ください!」
「えっと」
混乱した頭に園内の説明をされても理解できない。
「端末に園内の地図が表示されます!」
キャストが渡した端末の画面が光る。私は恐るおそる画面を見る。
液晶の画面には「yumezono」とエメラルドグリーンを基調した鮮やかなロゴが表示されていた。次に現れたのは長い鼻を持ったピンクのテディベアでこちらに手を振って話しかる。
「ハァイ☆リメインズエリアでダンサーたちのshowが開演するよ☆みんなで踊って楽しもう☆」
「そちらはパク君です!」
キャストの説明が入る。
「パクくんは園内の案内役となっております!端末でのサービスは他にもありまして、アトラクションの待ち時間、園内のニュース、SNSもご利用できます!」
「SNSも?」
「もちろんです!」
端末のホーム画面に移るとSNSらしきアイコンを探す。黄、紺、赤のアイコンを選択する。
楽しげなツーショットに見映えの良い食事。共感されたハートの数と盛り上がるコメント欄。眺めていたら胸が高鳴ってきた。
「質問はございますか?」
SNSは少しだけ楽しそうに思えた。画面から目の前の風景に目線を戻す。
楽しげな会話をしながら店の商品を眺める友人たち、お城を背景の写真を撮るカップル。ありふれた遊園地の風景。けど、夢にしてはリアルだ。
「質問って言っても」
不満のほうが大きかった。
夢の中なら何でもありと納得できる。ベッドで寝ていたら夢の世界にいたなんて日常的だ。私が抱く不満は独りの私に楽しんでと言っているようなキャストにあった。
突然置かれた状況に混乱しているのに。
「夢の中なら恋人でも出てくればいいのに」
ぽつりと呟いた願望をキャストは聞き逃さなかった。
「お連れ様をお探しでしょうか?」
「え、連れ、というか」
キャストが変な誤解をしてしまった。弁解しようとしても呟きを聞かれたことへの恥ずかしさで顔を俯かせる。
「それでしたらSNSで検索してみてください!中には素敵な出会いもありますよ!」
素敵な、出会い?
キャストが話す単語に仄かな期待が灯った。
「それではお楽しみください!」
意識がはっきりとしている夢の中、期待は少なくともあるけど、戸惑いが強い。
園内のエリアや端末の機能、なかなかの設定が凝っている夢、よね?
情報源と言えばサービスとして貰ったこの端末だけ。
ここは夢ですか?そんなことを質問するのは馬鹿げているとわかっていても漠然とした疑問を解消したかった。
それを問おうと顔を上げると私の前に立っていたキャストはいなくなっていた。賑わう人々の声と楽しいラッパの音楽が不安ばかりの私を孤立させる。
彼女は私に笑顔を向けていていた。動きやすそうなブーツと短い丈の創作着物は黄緑とピンクの明るい配色になっている。
私、ベッドで寝ていた、よね?
戸惑いながらも周囲を見渡す。ラスクサークルのタイルが地面に敷き詰められていて巨大な円の描き、その中心には目を奪われる見事な城があった。
シミひとつも許さない白い外装に青い屋根が鮮やかだった。ファンタジーの映画やアニメの世界だと信じてしまいそうになる。
「初めてのご来園ですか?」
お城に見張られていると女性が話しかけてきて、私の意識は再び彼女に戻る。
「こちらがキャストとから放浪者様へのプレゼントです!」
ポーチやポケットらしきものは見当たらないのに気が付けば女性の手にスマホによく似た端末とポップコーンがあった。そして、掲げていたはずのウェルカムボードがなくなっている。
「キャスト?」
「我々のことです!放浪者様にサービスを提供しております!」
キャストの笑顔が崩れず、ますます混乱する。
私はベッドで寝てしまったの?これは夢?
キャストは説明を続ける。
「園内は5つのエリアに分かれております。現在地はキャッスルタウンのお城前になります。キャッスルタウンは園内の中心になりまして、南西にポートエリア、北西にフォレストエリア、北東にリメインズエリア、南東にナイトエリアがあります。各エリアごとにイベントが催されていますのでぜひご参加ください!またお休みになりたい場合はナイトエリアにありますホテルをご利用ください!」
「えっと」
混乱した頭に園内の説明をされても理解できない。
「端末に園内の地図が表示されます!」
キャストが渡した端末の画面が光る。私は恐るおそる画面を見る。
液晶の画面には「yumezono」とエメラルドグリーンを基調した鮮やかなロゴが表示されていた。次に現れたのは長い鼻を持ったピンクのテディベアでこちらに手を振って話しかる。
「ハァイ☆リメインズエリアでダンサーたちのshowが開演するよ☆みんなで踊って楽しもう☆」
「そちらはパク君です!」
キャストの説明が入る。
「パクくんは園内の案内役となっております!端末でのサービスは他にもありまして、アトラクションの待ち時間、園内のニュース、SNSもご利用できます!」
「SNSも?」
「もちろんです!」
端末のホーム画面に移るとSNSらしきアイコンを探す。黄、紺、赤のアイコンを選択する。
楽しげなツーショットに見映えの良い食事。共感されたハートの数と盛り上がるコメント欄。眺めていたら胸が高鳴ってきた。
「質問はございますか?」
SNSは少しだけ楽しそうに思えた。画面から目の前の風景に目線を戻す。
楽しげな会話をしながら店の商品を眺める友人たち、お城を背景の写真を撮るカップル。ありふれた遊園地の風景。けど、夢にしてはリアルだ。
「質問って言っても」
不満のほうが大きかった。
夢の中なら何でもありと納得できる。ベッドで寝ていたら夢の世界にいたなんて日常的だ。私が抱く不満は独りの私に楽しんでと言っているようなキャストにあった。
突然置かれた状況に混乱しているのに。
「夢の中なら恋人でも出てくればいいのに」
ぽつりと呟いた願望をキャストは聞き逃さなかった。
「お連れ様をお探しでしょうか?」
「え、連れ、というか」
キャストが変な誤解をしてしまった。弁解しようとしても呟きを聞かれたことへの恥ずかしさで顔を俯かせる。
「それでしたらSNSで検索してみてください!中には素敵な出会いもありますよ!」
素敵な、出会い?
キャストが話す単語に仄かな期待が灯った。
「それではお楽しみください!」
意識がはっきりとしている夢の中、期待は少なくともあるけど、戸惑いが強い。
園内のエリアや端末の機能、なかなかの設定が凝っている夢、よね?
情報源と言えばサービスとして貰ったこの端末だけ。
ここは夢ですか?そんなことを質問するのは馬鹿げているとわかっていても漠然とした疑問を解消したかった。
それを問おうと顔を上げると私の前に立っていたキャストはいなくなっていた。賑わう人々の声と楽しいラッパの音楽が不安ばかりの私を孤立させる。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
律と欲望の夜
冷泉 伽夜
大衆娯楽
アフターなし。枕なし。顔出しなしのナンバーワンホスト、律。
有名だが謎の多いホストの正体は、デリヘル会社の社長だった。
それは女性を喜ばせる天使か、女性をこき使う悪魔か――。
確かなことは
二足のわらじで、どんな人間も受け入れている、ということだ。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ハーフ&ハーフ
黒蝶
恋愛
ある雨の日、野崎七海が助けたのは中津木葉という男。
そんな木葉から告げられたのは、哀しい事実。
「僕には関わらない方がいいよ。...半分とはいえ、人間じゃないから」
...それから2ヶ月、ふたりは恋人として生きていく選択をしていた。
これは、極々普通?な少女と人間とヴァンパイアのハーフである少年の物語。
死にたくない、若返りたい、人生やり直したい、還暦親父の異世界チート無双冒険譚
克全
ファンタジー
田中実は60歳を前にして少し心を病んでいた。父親と祖母を60歳で亡くした田中実は、自分も60歳で死ぬのだと思ってしまった。死にたくない、死ぬのが怖い、永遠に生きたいと思った田中実は、異世界行く方法を真剣に探した。過去に神隠しが起ったと言われている場所を巡り続け、ついに異世界に行ける場所を探し当てた。異世界に行って不老不死になる方法があるかと聞いたら、あると言われたが、莫大なお金が必要だとも言われた。田中実は異世界と現世を行き来して金儲けをしようとした。ところが、金儲け以前に現世の神の力が異世界で使える事が分かり、異世界でとんでもない力を発揮するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる