195 / 574
2章 ヒーロー活劇を望む復讐者
とある生徒の終幕 9
しおりを挟む
私は人に対して強い警戒心を持つようになってしまい、長野先生の良心的な話にも耳には入れなかった。
「佐矢 蛍さんの事は残念だと思うよ。でも、涼君が病む事は無い。彼女もそれを望んでいないだろうしね」
ほんちゃんの名前が上がり、私の意識は長野先生に向く。
「ニュースしか知らないくせに、よく言えますね」
こいつはわからない。わかるはずがない。赴任したばかりの奴が彼女の名前を出さないでほしい。
彼女が亡くなった原因。私は知っている。 叩かれて歪んだ心の形を、それをわかっていながら何もできなかった、しなかった周りの対応。それらを全て言ってやりたいがこの人に文句を言ってもどうしようもないのだ。
「彼女の事は知らない。けど、君の事は知っている。苦しいんだね。よく頑張ったと思うよ」
「頑張ってもいない。苦しんでない」
「そうかな。涼君は憎しみの拠り所が見つけられなくて、無力感にしか変えられていない」
だからなんだというのだ。同情も同調もいらない。私は何もいらない。
「憎しみは人を蝕む。多くの者はそれを捨てようとする。けれど、憎しみなくして人は生きていけない」
「あなたは何が言いたいんです?」
教師としてもカウンセラーとしても、らしからぬ発言だった。無心であった私が長野先生にわずかな関心が湧く。
「思うに、涼君に必要なのはテレビと向き合うことより憎悪を燃やす闘志だ」
「つまり、復讐を推奨するんですね。よくそれで教師になりましたね」
「余所行きを良くするだけで人は信じる。それだけで心を許し、受け入れて笑う。涼君のような子もいるが、それはどうとでもなる。魂は身体よりも単純にできているからね」
スピリチュアルな話をしているのだろうか?もしかして、この人は新宗教の一員だったりするのだろうか。
「狙いは何?勧誘?復讐を代行する代わりに信者になれって?言っとくけど、うちの家庭はキリストですよ」
私と対峙する長野先生はずっと笑みを浮かべていたが、ほんの少しだけ変化があった。どこが変わったかと言われれば困るのだが、一瞬だけ彼の目が光り、何かを目論む腹黒さが見えたような気がした。
「僕はね、信者でもなければ教師でもない。人ですらないんだよ」
何を言うかと思えば人じゃないとは。失笑する。堪えきれずに笑いながら言う。
「中二病ですか?そのネタは古いですよ、先生」
「信じてもらえないのはわかっていたよ。だから、体験してもらおうと思って言っているんだ」
「薬?それとも催眠?」
「どちらでもない。体験するのは透明人間さ」
「佐矢 蛍さんの事は残念だと思うよ。でも、涼君が病む事は無い。彼女もそれを望んでいないだろうしね」
ほんちゃんの名前が上がり、私の意識は長野先生に向く。
「ニュースしか知らないくせに、よく言えますね」
こいつはわからない。わかるはずがない。赴任したばかりの奴が彼女の名前を出さないでほしい。
彼女が亡くなった原因。私は知っている。 叩かれて歪んだ心の形を、それをわかっていながら何もできなかった、しなかった周りの対応。それらを全て言ってやりたいがこの人に文句を言ってもどうしようもないのだ。
「彼女の事は知らない。けど、君の事は知っている。苦しいんだね。よく頑張ったと思うよ」
「頑張ってもいない。苦しんでない」
「そうかな。涼君は憎しみの拠り所が見つけられなくて、無力感にしか変えられていない」
だからなんだというのだ。同情も同調もいらない。私は何もいらない。
「憎しみは人を蝕む。多くの者はそれを捨てようとする。けれど、憎しみなくして人は生きていけない」
「あなたは何が言いたいんです?」
教師としてもカウンセラーとしても、らしからぬ発言だった。無心であった私が長野先生にわずかな関心が湧く。
「思うに、涼君に必要なのはテレビと向き合うことより憎悪を燃やす闘志だ」
「つまり、復讐を推奨するんですね。よくそれで教師になりましたね」
「余所行きを良くするだけで人は信じる。それだけで心を許し、受け入れて笑う。涼君のような子もいるが、それはどうとでもなる。魂は身体よりも単純にできているからね」
スピリチュアルな話をしているのだろうか?もしかして、この人は新宗教の一員だったりするのだろうか。
「狙いは何?勧誘?復讐を代行する代わりに信者になれって?言っとくけど、うちの家庭はキリストですよ」
私と対峙する長野先生はずっと笑みを浮かべていたが、ほんの少しだけ変化があった。どこが変わったかと言われれば困るのだが、一瞬だけ彼の目が光り、何かを目論む腹黒さが見えたような気がした。
「僕はね、信者でもなければ教師でもない。人ですらないんだよ」
何を言うかと思えば人じゃないとは。失笑する。堪えきれずに笑いながら言う。
「中二病ですか?そのネタは古いですよ、先生」
「信じてもらえないのはわかっていたよ。だから、体験してもらおうと思って言っているんだ」
「薬?それとも催眠?」
「どちらでもない。体験するのは透明人間さ」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
転生して異世界の第7王子に生まれ変わったが、魔力が0で無能者と言われ、僻地に追放されたので自由に生きる。
黒ハット
ファンタジー
ヤクザだった大宅宗一35歳は死んで記憶を持ったまま異世界の第7王子に転生する。魔力が0で魔法を使えないので、無能者と言われて王族の籍を抜かれ僻地の領主に追放される。魔法を使える事が分かって2回目の人生は前世の知識と魔法を使って領地を発展させながら自由に生きるつもりだったが、波乱万丈の人生を送る事になる
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる