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2章 ヒーロー活劇を望む復讐者
糸 9
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他にも探ろうとライトを上げる。
機械室には初めて入った。普段は立入禁止にして鍵も閉めているのよね。
まぁ、今は細かい事は気にしない。例え仮面をつけた男が猫になって同じ声で話かけたとしても気にしない。そうよ、この間まで地獄にいたじゃない。仮面の下にも穴が空いていたじゃない。猫が何よ。驚くことじゃない。
「この部屋の用途はなんだ」
猫が何か言ってきた。
言葉の意味はわかる。凝視してしまうのは4本足の哺乳類が人語を喋ることに脳が処理しきれていなかったから。驚いてなんかいないわ。
「機械室よ。校舎の空調を整えたり、色んなブレーカーがあったり」
動揺を隠しながら答える。回答が曖昧なのはあたし自身が入ったことがないから。だって、多くの生徒は機械室に関心を持たないもの。
レバーやいくつものボタンがあったとしても詳しい名称も役割もわからない。ただ四角い箱に管がつながっていてレバーとボタンで制御しているものだと何となく想像できる。
別世界の機械室にあるのは四角い箱だけではなかった。
ドクン、ドクン、と脈打つ黒い果実。2mぐらいの大きさで楕円形をしている。
これもパッションフルーツ?いや、違うわね。どんなに大きくなったとしても脈は打たないし血管らしきものも浮き出ない。よくよく観察してみれば丸まっている人の形がある。中に誰かが入っている。
「キヨネ!」
ケイが一言と叫ぶと室内の片隅へと駆ける。
謎の果実は置いといてケイについていこう。叫んだ名前も気になる。
蛙の卵に似たものが足首に使って嫌な感触が伝わってくる。その中を歩いて片隅をライトで照らす。
そこにいたのは岡本 清音。彼女が機械室の片隅に凭れて眠っている。そして彼女の体に巻かれていたのは赤い糸。
この糸、ハクにもある。ケイは紫の糸ね。一体これは何かしら?
ケイは小さな頭で清音を小突いては彼女を起こそうとする。
「死んでいるんじゃない?」
冗談でもなく思った事実を言う。固く閉ざした瞳。小突いても起きないのはそういうことでしょ。
「暖かい」
ずっと淡白で感情のない口調だったくせに、その台詞には少なからずの怒りがあるわね。ロボットみたいなやつだと思っていたけれど違うみたい。
「キヨネ、起きろ」
ケイはキヨネを起こしたいようで名前を呼んでは小突くを繰り返す。
彼女と猫の関係は心底どうでもいいけれどそんなに起こしたいのなら手伝ってあげましょうか。
「これ持って」
あたしはスマホを差し出すとケイは口に咥える。
清音の襟を掴み、手のひらを勢いつけて振り下げた。響いた破裂音。清音の左頬が僅かに赤くなる。
そうした衝撃に眉を顰めては小さく呻く。でも、目蓋は上がらなかった。
「生きているならさっさと起きなさいよ」
襟を上下左右に大きく揺らす。そうしてやっと清音は目覚めて目を細めながらあたしを見る。
自分がどこにいるのか把握できていないみたいで辺りを見渡す。そして、自分に起きたことが思い出されていき、女性らしい甲高い声が大きく開いた口から飛び出る。
「いやああああ!やめて!来ないで!」
あたしが人だと認識もできないみたいね。清音はあたしの腕を引っ掻き耳障りな声で叫ぶ。
機械室には初めて入った。普段は立入禁止にして鍵も閉めているのよね。
まぁ、今は細かい事は気にしない。例え仮面をつけた男が猫になって同じ声で話かけたとしても気にしない。そうよ、この間まで地獄にいたじゃない。仮面の下にも穴が空いていたじゃない。猫が何よ。驚くことじゃない。
「この部屋の用途はなんだ」
猫が何か言ってきた。
言葉の意味はわかる。凝視してしまうのは4本足の哺乳類が人語を喋ることに脳が処理しきれていなかったから。驚いてなんかいないわ。
「機械室よ。校舎の空調を整えたり、色んなブレーカーがあったり」
動揺を隠しながら答える。回答が曖昧なのはあたし自身が入ったことがないから。だって、多くの生徒は機械室に関心を持たないもの。
レバーやいくつものボタンがあったとしても詳しい名称も役割もわからない。ただ四角い箱に管がつながっていてレバーとボタンで制御しているものだと何となく想像できる。
別世界の機械室にあるのは四角い箱だけではなかった。
ドクン、ドクン、と脈打つ黒い果実。2mぐらいの大きさで楕円形をしている。
これもパッションフルーツ?いや、違うわね。どんなに大きくなったとしても脈は打たないし血管らしきものも浮き出ない。よくよく観察してみれば丸まっている人の形がある。中に誰かが入っている。
「キヨネ!」
ケイが一言と叫ぶと室内の片隅へと駆ける。
謎の果実は置いといてケイについていこう。叫んだ名前も気になる。
蛙の卵に似たものが足首に使って嫌な感触が伝わってくる。その中を歩いて片隅をライトで照らす。
そこにいたのは岡本 清音。彼女が機械室の片隅に凭れて眠っている。そして彼女の体に巻かれていたのは赤い糸。
この糸、ハクにもある。ケイは紫の糸ね。一体これは何かしら?
ケイは小さな頭で清音を小突いては彼女を起こそうとする。
「死んでいるんじゃない?」
冗談でもなく思った事実を言う。固く閉ざした瞳。小突いても起きないのはそういうことでしょ。
「暖かい」
ずっと淡白で感情のない口調だったくせに、その台詞には少なからずの怒りがあるわね。ロボットみたいなやつだと思っていたけれど違うみたい。
「キヨネ、起きろ」
ケイはキヨネを起こしたいようで名前を呼んでは小突くを繰り返す。
彼女と猫の関係は心底どうでもいいけれどそんなに起こしたいのなら手伝ってあげましょうか。
「これ持って」
あたしはスマホを差し出すとケイは口に咥える。
清音の襟を掴み、手のひらを勢いつけて振り下げた。響いた破裂音。清音の左頬が僅かに赤くなる。
そうした衝撃に眉を顰めては小さく呻く。でも、目蓋は上がらなかった。
「生きているならさっさと起きなさいよ」
襟を上下左右に大きく揺らす。そうしてやっと清音は目覚めて目を細めながらあたしを見る。
自分がどこにいるのか把握できていないみたいで辺りを見渡す。そして、自分に起きたことが思い出されていき、女性らしい甲高い声が大きく開いた口から飛び出る。
「いやああああ!やめて!来ないで!」
あたしが人だと認識もできないみたいね。清音はあたしの腕を引っ掻き耳障りな声で叫ぶ。
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