116 / 574
2章 ヒーロー活劇を望む復讐者
望まぬ再会 8
しおりを挟む
「仕事はするよ。それより、今は1人?」
どこをどう見ても1人じゃない。あれ、そういえばハクがいない。6時限目にはいたからカンダタを探しに行ったのかもしれない。
「瑠璃に用があってさ、1人の時に渡したかったんだ」
中途半端に残ったポテチの袋を脇に抱えて肩下げショルダーのファスナーに触れようとする。
「その汚い手であたしに物を渡す気?」
「まずい?」
絶句ね。ありえない。土に埋めてやりたい。なんであたしは不潔な奴と対峙しているんだろう。
「これで手を拭いてからにして」
あたしはポケットからティッシュチを取り出して光弥に渡す。
面倒くさそうに顔を歪めて、手を拭くとあたしに押し返す。
「返さなくていい」
どういう性格してるのよ。ありえない。無理。
あたしの心理をいまいち理解できていないようで、光弥は怪訝そうだった。あたしは本題に入る。
「で、渡したいものって?」
一応、話は聞いておこう。
光弥は改めて、肩下げショルダーから布の包みを1つ取り出す。
薄ピンクに包まれていて中身がわからない。ただ、カチャカチャと高い音が鳴ってているから金属ね。
「不明な獣が蔓延っているようだからね。用心しておかないと」
「その獣に心当たりがあるみたいね」
光弥はわざとらしく「獣」と言った。鬼は塊人のペットだ。こいつらが関わっているのは確実。
「それがないから困ってるんだよ」
「ない?あれはあなたたちが管理しているものじゃないの?」
「冗談じゃない。できるわけないだろ。こっちが食われる。鬼を制御できたら護身用なんか渡さないって」
意外ね。嘘らしき仕草が見つからなかった。
護身用って言っていたわね。中は何かしら。
受け取った薄ピンクの布1枚捲る。そして、黒光りした外装が露わになって、捲った布をすぐさま閉じた。
「何考えてるの」
大声で叫びたくなる衝動を堪えて光弥を問い詰める。薄ピンクに包まれていたのは拳銃だった。ドラマや映画で見るようなハンドガン。
これが百均で売っているようなレプリカなら冗談で済ませられる。けれど、あたしの手に収まる重さは実物であるのだと語っている。
「護身用だって。あったほうがいいだろう」
「使えるわけないじゃない。あたしはただの高校生よ」
「簡単に使えるように改造してある。引き金を引くだけでいい」
「それこそ危険じゃない!」
「何してる!」
堪えきれなくなった声は廊下の静寂に響いて、それに呼応して別の人物があたしに向かって叫ぶ。振り返ってみると生物の田口がそこにいた。
「下校時間は過ぎてるんだぞ。ひとりでうろつくな」
1人? 1人って言った?光弥は?
光弥がいたところを見てみるとそこにいたはずの青年はいなくなっていた。田口からしてみたら1人で叫んでいるようにしか見えなかったはず。
湧き出た羞恥心を田口に悟られないように隠す。
「全く、演劇部といい、お前たちといい。それはなんだ?」
怒りに任せた田口の声はあたしの持つ薄ピンクの布に注意を向ける。
「昼食の残りです」
咄嗟についた嘘。これ以上触れられるとまずいと判断して、急いで包みを鞄に仕舞う。
すぐに後悔した。これをゴミですと言って捨てればよかった。そうすれば様々な厄介事が起きないかもしれなかった。
「ほら、行くぞ。生徒玄関まで送ってやる」
あたしは何も言わずに田口について行く。
田口は生徒を残したくないようね。それもそうよね。物騒になってきた街で下校が早くなったのに生徒がまだ残っていて、その生徒に何かあれば教師のせいになるもの。
どこをどう見ても1人じゃない。あれ、そういえばハクがいない。6時限目にはいたからカンダタを探しに行ったのかもしれない。
「瑠璃に用があってさ、1人の時に渡したかったんだ」
中途半端に残ったポテチの袋を脇に抱えて肩下げショルダーのファスナーに触れようとする。
「その汚い手であたしに物を渡す気?」
「まずい?」
絶句ね。ありえない。土に埋めてやりたい。なんであたしは不潔な奴と対峙しているんだろう。
「これで手を拭いてからにして」
あたしはポケットからティッシュチを取り出して光弥に渡す。
面倒くさそうに顔を歪めて、手を拭くとあたしに押し返す。
「返さなくていい」
どういう性格してるのよ。ありえない。無理。
あたしの心理をいまいち理解できていないようで、光弥は怪訝そうだった。あたしは本題に入る。
「で、渡したいものって?」
一応、話は聞いておこう。
光弥は改めて、肩下げショルダーから布の包みを1つ取り出す。
薄ピンクに包まれていて中身がわからない。ただ、カチャカチャと高い音が鳴ってているから金属ね。
「不明な獣が蔓延っているようだからね。用心しておかないと」
「その獣に心当たりがあるみたいね」
光弥はわざとらしく「獣」と言った。鬼は塊人のペットだ。こいつらが関わっているのは確実。
「それがないから困ってるんだよ」
「ない?あれはあなたたちが管理しているものじゃないの?」
「冗談じゃない。できるわけないだろ。こっちが食われる。鬼を制御できたら護身用なんか渡さないって」
意外ね。嘘らしき仕草が見つからなかった。
護身用って言っていたわね。中は何かしら。
受け取った薄ピンクの布1枚捲る。そして、黒光りした外装が露わになって、捲った布をすぐさま閉じた。
「何考えてるの」
大声で叫びたくなる衝動を堪えて光弥を問い詰める。薄ピンクに包まれていたのは拳銃だった。ドラマや映画で見るようなハンドガン。
これが百均で売っているようなレプリカなら冗談で済ませられる。けれど、あたしの手に収まる重さは実物であるのだと語っている。
「護身用だって。あったほうがいいだろう」
「使えるわけないじゃない。あたしはただの高校生よ」
「簡単に使えるように改造してある。引き金を引くだけでいい」
「それこそ危険じゃない!」
「何してる!」
堪えきれなくなった声は廊下の静寂に響いて、それに呼応して別の人物があたしに向かって叫ぶ。振り返ってみると生物の田口がそこにいた。
「下校時間は過ぎてるんだぞ。ひとりでうろつくな」
1人? 1人って言った?光弥は?
光弥がいたところを見てみるとそこにいたはずの青年はいなくなっていた。田口からしてみたら1人で叫んでいるようにしか見えなかったはず。
湧き出た羞恥心を田口に悟られないように隠す。
「全く、演劇部といい、お前たちといい。それはなんだ?」
怒りに任せた田口の声はあたしの持つ薄ピンクの布に注意を向ける。
「昼食の残りです」
咄嗟についた嘘。これ以上触れられるとまずいと判断して、急いで包みを鞄に仕舞う。
すぐに後悔した。これをゴミですと言って捨てればよかった。そうすれば様々な厄介事が起きないかもしれなかった。
「ほら、行くぞ。生徒玄関まで送ってやる」
あたしは何も言わずに田口について行く。
田口は生徒を残したくないようね。それもそうよね。物騒になってきた街で下校が早くなったのに生徒がまだ残っていて、その生徒に何かあれば教師のせいになるもの。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
異世界に飛ばされたら守護霊として八百万の神々も何故か付いてきた。
いけお
ファンタジー
仕事からの帰宅途中に突如足元に出来た穴に落ちて目が覚めるとそこは異世界でした。
元の世界に戻れないと言うので諦めて細々と身の丈に合った生活をして過ごそうと思っていたのに心配性な方々が守護霊として付いてきた所為で静かな暮らしになりそうもありません。
登場してくる神の性格などでツッコミや苦情等出るかと思いますが、こんな神様達が居たっていいじゃないかと大目に見てください。
追記 小説家になろう ツギクル でも投稿しております。
左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!
武蔵野純平
ファンタジー
大手企業に勤める平凡なアラフォー会社員の米櫃亮二は、セクハラ上司に諫言し左遷されてしまう。左遷先の仕事は、移動販売スーパーの運転手だった。ある日、事故が起きてしまい米櫃亮二は、移動販売車ごと異世界に転生してしまう。転生すると亮二と移動販売車に不思議な力が与えられていた。亮二は転生先で出会った孤児たちを救おうと、貧乏孤児院を宿屋に改装し旅館経営を始める。
異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
<初投稿4日目からは『お昼12:00頃』の毎日配信となります>
「異世界から元の世界に戻るとレベルはリセットされる」⋯⋯そう女神に告げられるも「それでも元の世界で自分の人生を取り戻したい」と言って一から出直すつもりで元の世界に戻った結城タケル。
死ぬ前の時間軸——5年前の高校2年生の、あの事故現場に戻ったタケル。そこはダンジョンのある現代。タケルはダンジョン探索者《シーカー》になるべくダンジョン養成講座を受け、初心者養成ダンジョンに入る。
レベル1ではスライム1匹にさえ苦戦するという貧弱さであるにも関わらず、最悪なことに2匹のゴブリンに遭遇するタケル。
絶望の中、タケルは「どうにかしなければ⋯⋯」と必死の中、ステータスをおもむろに開く。それはただの悪あがきのようなものだったが、
「え?、何だ⋯⋯これ?」
これは、異世界に転移し魔王を倒した勇者が、ダンジョンのある現代に戻っていろいろとやらかしていく物語である。
惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜
甲殻類パエリア
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。
秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。
——パンである。
異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。
というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。
そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。
前世は冷酷皇帝、今世は幼女
まさキチ
ファンタジー
【第16回ファンタジー小説大賞受賞】
前世で冷酷皇帝と呼ばれた男は、気がつくと8歳の伯爵令嬢ユーリに転生していた。
変態貴族との結婚を迫られたユーリは家を飛び出し、前世で腹心だったクロードと再会する。
ユーリが今生で望むもの。それは「普通の人生」だ。
前世では大陸を制覇し、すべてを手にしたと言われた。
だが、その皇帝が唯一手に入れられなかったもの――それが「普通の人生」。
血塗られた人生はもう、うんざりだ。
穏やかで小さな幸せこそ、ユーリが望むもの。
それを手に入れようと、ユーリは一介の冒険者になり「普通の人生」を歩み始める。
前世の記憶と戦闘技術を引き継いではいたが、その身体は貧弱で魔力も乏しい。
だが、ユーリはそれを喜んで受け入れる。
泥まみれになってドブさらいをこなし。
腰を曲げて、薬草を採取し。
弱いモンスター相手に奮闘する。
だが、皇帝としての峻烈さも忘れてはいない。
自分の要求は絶対に押し通す。
刃向かう敵には一切容赦せず。
盗賊には一辺の情けもかけない。
時には皇帝らしい毅然とした態度。
時には年相応のあどけなさ。
そのギャップはクロードを戸惑わせ、人々を笑顔にする。
姿かたちは変わっても、そのカリスマ性は失われていなかった。
ユーリの魅力に惹かれ、彼女の周りには自然と人が集まってくる。
それはユーリが望んだ、本当の幸せだった。
カクヨム・小説家になろうにも投稿してます。
借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件
羽黒 楓
ファンタジー
借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる