糸と蜘蛛

犬若丸

文字の大きさ
上 下
86 / 618
2章 ヒーロー活劇を望む復讐者

黒猫の探し物 15

しおりを挟む
   「明日は俺も学校に行く」
   私の違和感はその一言で消し飛ぶ。喋る猫を学校に連れて行くなんて前代未聞だ。
   「駄目よ。連れて行けない。猫は持ち込み禁止なのよ。しかも喋る猫は」
   「連れて行けとは言っていない。俺が行く」
   つまり、勝手にいくということだ。
   「困るわ。だって」
   「50年だ」
   何とか説得しようとそれもケイがある年数を言った。
   「ずっと探した。唯一の手掛かりだ」
   「50年、生きてきたの?」
    その年月探し続けていた事実よりも50年生きてきた猫に驚いていた。ケイは喋る猫でもあり、人に化けれて、しかも長生きだった。
   「俺は塊人だ。生死は存在しない」
   ケイの言葉はロボットみたいで感情が見つからない。なのに淡々とした口調の奥には50年分の積み重なった執念が覗かせていた。
   たったの15年しか生きていない私では50年に敵わない。いくら止めても勝手についてくるだろうな。
   私は諦めた溜め息を一つ吐いた。
   昨夜の出来事でも充分に驚き、恐ろしい体験をしたわけだけど、お父さんからの話もまた私の背筋を凍らせた。
   「安斉先生が遺体で見つかったらしいな。実力のある人だが、問題もあった先生だったな。いじめを放任していたとかで」
    昨夜の遺体を思い出さないように私はテーブルに座って用意されたヨーグルトを食べ始める。
   「その、いじめっていつからあったの?」
   なんとか話題を変えたくてなるべく、関係ない質問をする。
   「昔からだ。指導だとか言っていたが度が過ぎたな。ついには死人が出てしまった」
   そういえばあの先輩も部活のいじめが原因でカウンセリングを受けていた。3年生になってから休部したみたいだから2年生の3月までいじめを受け続けたのかな。
   学校へ行こうとする私を心配性のお母さんが引き止める。昨日に続いて流れた不穏なニュースとシャワーで吐いてしまったことがお母さんを余計に心配された。
   私はなんとかお母さんを説得して玄関のドアを開ける。
   因みにケイは自室に置いたままにしている。窓は開けてきたのでキャットフードを食べ終えたら学校に向かうのだろう。私には迷惑をかけないと言っていたけど不安は拭えない。
   昨夜のうちに多くを質問したから大体のことは掴めた。
   死んで魂だけになった者は液状になってハザマへと流れるらしい。そして、塊人が地獄か輪廻か分けているらしい。
   現世では魂や塊人といったあちら側のものは見えない。私の場合は何かしらのきっかけで見えるようになってしまった。
   昨夜の出来事があったからと言ってその全てを信じているわけじゃない。
   その事実を知ったとしても黒い化け物、鬼がなんで現世にいて人を襲うのか。それの答えにはならない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

死にたくない、若返りたい、人生やり直したい、還暦親父の異世界チート無双冒険譚

克全
ファンタジー
田中実は60歳を前にして少し心を病んでいた。父親と祖母を60歳で亡くした田中実は、自分も60歳で死ぬのだと思ってしまった。死にたくない、死ぬのが怖い、永遠に生きたいと思った田中実は、異世界行く方法を真剣に探した。過去に神隠しが起ったと言われている場所を巡り続け、ついに異世界に行ける場所を探し当てた。異世界に行って不老不死になる方法があるかと聞いたら、あると言われたが、莫大なお金が必要だとも言われた。田中実は異世界と現世を行き来して金儲けをしようとした。ところが、金儲け以前に現世の神の力が異世界で使える事が分かり、異世界でとんでもない力を発揮するのだった。

ハーフ&ハーフ

黒蝶
恋愛
ある雨の日、野崎七海が助けたのは中津木葉という男。 そんな木葉から告げられたのは、哀しい事実。 「僕には関わらない方がいいよ。...半分とはいえ、人間じゃないから」 ...それから2ヶ月、ふたりは恋人として生きていく選択をしていた。 これは、極々普通?な少女と人間とヴァンパイアのハーフである少年の物語。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

処理中です...