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2章 ヒーロー活劇を望む復讐者
黒猫の探し物 3
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スーパーの買い物、夕食と入浴。その間、黒猫は自室のクッションの上で眠らせた。
私がお風呂から上がって、ミルクを片手に戻ってみても、黒猫は深い眠りについたまま、その晩は目覚めなかった。
雨はいつのまにか止んでいつぶりかの静寂が夜を包む。でも、月は現れなかった。
勉強机から離れて、カーテンの隙間から夜空を眺める。
月も星もない。一面の黒が空を覆う。
雨が続く梅雨も憂鬱だけど、雨が止んだ夜も不気味だった。
とある路線では自殺案件が増加したという。新宗教が路肩で布教活動をしているのも見かけるようになった。
それらは暗黒への入り口みたいで、私は暗黒に吸い込まれそうな感覚に襲われる。
意味のない恐怖に私はカーテンを閉めて暗黒の空から目を背ける。
翌朝になって、確認したのは黒猫だった。
ベットから起き上がってピンクのクッションで眠る黒猫に寄る。
ゴミ捨て場で拾ってから黒猫は目を覚まさなった。もう一度動物クリニックに診せるべきかな。
黒猫の容態が心配になって、丸くなった背を撫でる。すると、触れた人の手に反応したのか黒猫は耳が上下する。固く閉ざされた瞼はゆっくりと上がり、丸く広がった瞳孔は現状を理解しようと私の部屋を見渡す。混乱しているとその様子からよくわかった。
「よかった!目が覚めたのね!あ、まだ起きたら駄目よ」
野良猫は人に懐かない。ましてや見知らぬ人間の部屋にいるのだから警戒されるのは当たり前。
そういった事実を頭で理解しても、この安堵から来る喜びに声をかけずにはいられなかった。
「今、ミルク持ってくるからね」
急いで部屋を出た私は階段を降りてお母さんが立つキッチンへと向かう。
「おはよう、清音。朝から慌ただしいわね」
落ち着いて歩くのを忘れていた。駆けて動いた私の足は2階の床と階段を強く踏んで朝からの騒音を非難した目で見つめてくる。
「猫が起きたの」
私は謝らずに簡略化された説明を早口で伝える。
食器棚から丁度いい皿を手に持ち、冷蔵庫から出したミルクを注ぐ。その仕草には興奮と焦りがあった。
「落ち着きなさい。零さないように」
「わかってる」
黒猫が目覚めたのはお母さんにしてみても嬉しい出来事だった。私が騒音たてたのも許していた。
私はお母さんの警告に従って、今度は慎重に歩いて自室に戻る。黒猫は言われた通りにクッションの上で私を待っていた。
持ってきたミルクを前に置いてその後の動向を見守る。
黒猫は大人しくしてはいたけど、警戒心が解けた訳ではなかった。空腹であるはずなのにミルクに口をつけなかった。
「怪我は平気?痛まない?」
そんな黒猫の心情を察してはいたけど、感情を抑えられず声をかけてしまう。
「獣医さんはもう大丈夫だって言っていたけど、ずっと寝ていたのよ。もう起きないんじゃないかと思ってた」
本気で心配していると私の声色から察したのか黒猫の警戒心は少し解けたようだった。
ミャオ、とひと声鳴くとクッションから起き上がり、私の様子伺いながらお皿のミルクをちびちびと舐める。
目を覚まして、用意したミルクも飲んだ。
満足した私は黒猫の食事をただ眺めていた。あ、私の準備は何一つしていない。
時間を確認してみる。
「急がないと」
私は黒猫から目を離して、寝間着から制服へと着替えて下へと降りる。
私がお風呂から上がって、ミルクを片手に戻ってみても、黒猫は深い眠りについたまま、その晩は目覚めなかった。
雨はいつのまにか止んでいつぶりかの静寂が夜を包む。でも、月は現れなかった。
勉強机から離れて、カーテンの隙間から夜空を眺める。
月も星もない。一面の黒が空を覆う。
雨が続く梅雨も憂鬱だけど、雨が止んだ夜も不気味だった。
とある路線では自殺案件が増加したという。新宗教が路肩で布教活動をしているのも見かけるようになった。
それらは暗黒への入り口みたいで、私は暗黒に吸い込まれそうな感覚に襲われる。
意味のない恐怖に私はカーテンを閉めて暗黒の空から目を背ける。
翌朝になって、確認したのは黒猫だった。
ベットから起き上がってピンクのクッションで眠る黒猫に寄る。
ゴミ捨て場で拾ってから黒猫は目を覚まさなった。もう一度動物クリニックに診せるべきかな。
黒猫の容態が心配になって、丸くなった背を撫でる。すると、触れた人の手に反応したのか黒猫は耳が上下する。固く閉ざされた瞼はゆっくりと上がり、丸く広がった瞳孔は現状を理解しようと私の部屋を見渡す。混乱しているとその様子からよくわかった。
「よかった!目が覚めたのね!あ、まだ起きたら駄目よ」
野良猫は人に懐かない。ましてや見知らぬ人間の部屋にいるのだから警戒されるのは当たり前。
そういった事実を頭で理解しても、この安堵から来る喜びに声をかけずにはいられなかった。
「今、ミルク持ってくるからね」
急いで部屋を出た私は階段を降りてお母さんが立つキッチンへと向かう。
「おはよう、清音。朝から慌ただしいわね」
落ち着いて歩くのを忘れていた。駆けて動いた私の足は2階の床と階段を強く踏んで朝からの騒音を非難した目で見つめてくる。
「猫が起きたの」
私は謝らずに簡略化された説明を早口で伝える。
食器棚から丁度いい皿を手に持ち、冷蔵庫から出したミルクを注ぐ。その仕草には興奮と焦りがあった。
「落ち着きなさい。零さないように」
「わかってる」
黒猫が目覚めたのはお母さんにしてみても嬉しい出来事だった。私が騒音たてたのも許していた。
私はお母さんの警告に従って、今度は慎重に歩いて自室に戻る。黒猫は言われた通りにクッションの上で私を待っていた。
持ってきたミルクを前に置いてその後の動向を見守る。
黒猫は大人しくしてはいたけど、警戒心が解けた訳ではなかった。空腹であるはずなのにミルクに口をつけなかった。
「怪我は平気?痛まない?」
そんな黒猫の心情を察してはいたけど、感情を抑えられず声をかけてしまう。
「獣医さんはもう大丈夫だって言っていたけど、ずっと寝ていたのよ。もう起きないんじゃないかと思ってた」
本気で心配していると私の声色から察したのか黒猫の警戒心は少し解けたようだった。
ミャオ、とひと声鳴くとクッションから起き上がり、私の様子伺いながらお皿のミルクをちびちびと舐める。
目を覚まして、用意したミルクも飲んだ。
満足した私は黒猫の食事をただ眺めていた。あ、私の準備は何一つしていない。
時間を確認してみる。
「急がないと」
私は黒猫から目を離して、寝間着から制服へと着替えて下へと降りる。
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