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今度は兄貴肌?
顔合わせ
しおりを挟むNG大賞の収録の後も、大晦日までは何かと忙しくしていて、お陰で余計なことを考えずにすんだ。
年が明けてからは、叔父の家に形ばかりの年始の挨拶に行き、その帰りに近所の神社で初詣を済ませ、あとはずっと、家にこもって台詞を覚えていた。
そうして、楽しみ半分、不安半分な気持ちで、1月5日を迎えた。今年の仕事始めである今日は、都内の映画製作会社のスタジオで、夏に公開予定の戦争映画『空を見上げて』の顔合わせと台本読みが予定されている。
一度目の人生と違って、今回はそれほど世間に顔が売れていないので、マネージャーが毎回仕事場まで送り迎えしてくれるわけではない。担当の白木さんは専属ではなく、他にも何人か担当しているため、初めての現場とかでなければ、寝坊せずに仕事場に向かっているか確認の電話が入るくらいだ。
今日は初日なので、白木さんも顔を出してくれた。彼が事前にマネージャー同士話を通してくれていたお陰で、ミーティングが始まる前に、主演である中島佑美に挨拶することができた。
佑美さんは、声をかけ辛いほど美しい見た目に反して、さばさばした性格の気さくな人だった。初対面のときの、イタチの最後っ屁のような失礼すぎる僕の挨拶も特に気にしている様子はなく、「私のことは下の名前で呼んでね」とまで言ってくれた。
その後、監督やらプロデューサーやら、廊下で誰かを見かけるたびに挨拶していたせいで、三間に挨拶する時間はなくなってしまった。頼りの白木さんも、他にも仕事が入っているようで、「三間さんにもこの前のことを謝罪するんだよ」と言い残し帰って行った。
開始予定の5分前に、顔合わせが行われる会議室へと向かう。広々としたスペースに、長方形を形作るように長机が並べられていた。
参加予定の主だったスタッフや役者、全員が席についたところで、自己紹介を兼ねた挨拶が始まった。一人ずつ立って挨拶していく流れは、ドラマのときと変わらない。
全員が挨拶を終えたところで、台本読みに移った。
佑美さんとその相手役である三間は、プロデューサーや監督と、長方形の角を挟んで隣り合う長机に座っていた。三人用の長机だから、三間と佑美さんとの間には一人分スペースがある。
僕は彼らと向かい合う並びの末席に座っていた。見ようと思えば見える位置なので、台本に集中しようと思っても、目が勝手に二人の方をチラチラ窺ってしまう。
それはおそらく僕だけでなく、この場にいる二人以外の全員が、台本よりも二人に意識を向けているようだった。
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