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第15話 閃いたアイディア
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沖くんもだいぶ学校になじんできて、休み時間は他の男子と一緒にサッカーしたり外で遊んだりすることも多い。
だけどこの日はひとりで教室にいて、時々難しいそうな顔をしていた。
「やっぱり、盗まれた忍者道具のこと、気になる」
近くに行って、聞いてみる。
「そりゃな。それに、師匠のこともな。簡単にやられるなんてことはないだろうけど、危険な任務かもしれないし、俺も手伝えたらなって思うよ」
「やっぱりそうだよね」
二人してうーんと唸るけど、その時、急に後ろから声をかけられた。
「二人とも、なに話してるの?」
「えっ? ああ、ユキちゃん」
声をかけてきたのは、ユキちゃん。話に夢中になってて、ちっとも気づかなかったよ。
「えっと、今、うちのお父さんの話をしてたの」
「真昼ちゃんの、お父さん?」
「そう。お父さんが……お、お父さんが……」
ど、どうしよう。お父さんが忍者ってことはもちろん秘密だし、とっさに言い訳が出てこない。
けどそこで、わたしの代わりに沖くんが答える。
「色々お世話になってるから、いつかお礼がしたいって言ってたんだよ」
「ああ。そういえば沖くん、元々真昼ちゃんのお父さんと知り合いだったんだっけ」
「まあな」
忍者のことや弟子入りしてることは話せないけど、沖くんがちょくちょくうちに来てお父さんに会ってるのは、ユキちゃんも知っている。
特におかしいとは思わなかったみたい。
「真昼ちゃんのお父さんなら、わたしも好きだな。優しいし、時々遊びに連れて行ってくれるし、ステキじゃない」
「えぇっ。そう?」
沖君といいユキちゃんといい、うちのお父さん、なぜか人気あるんだよね。
そういえば。
お父さんの話になって、ひとつ思い出す。
「ねえ。ユキちゃんのお父さんが外国から帰ってくるのって、もうすぐだっけ?」
「うん。今日だよ」
やっぱり。
前からお父さんが帰ってくるのを楽しみにしてたユキちゃん。お父さんに聞かせるためにピアノも頑張ってたし、すっごく嬉しそう。
その日の放課後、わたしと沖くんは、そんなユキちゃんと一緒に、揃って校門を出る。
そしたらすぐそばにユキちゃんのうちの車が止まってて、中からお手伝いの坪内さんが出てきた。
今日はピアノ教室はないけど、お父さんが帰ってくるから、迎えに来たのかな?
けど、坪内さんはなんだか浮かない顔をしていた。
ユキちゃんもそれに気づいたみたいで、どうしたのと、不安そうに聞く。
「申し訳ありません。実はお父様が、急な用事で、帰って来れなくなってしまいました」
「えっ────?」
とたんに、ユキちゃんの表情が固くなる。
驚いたのはわたしも同じ。だってユキちゃん、ずっと楽しみにしてたんだよ。
なのに、なんで?
「それじゃ、明日は帰ってきますか?」
「それが、いつ用事が終わるかわからなくて、当分は戻ってこれないかもしれないとのことでした」
そんな。
ユキちゃんのお父さんが帰ってくるのは、お母さんの命日にお墓参りに行くため。どんなに忙しくても、毎年それだけは欠かしたことがないって言ってた。
けど当分帰ってこれないなら、それもできなくなっちゃうの?
坪内さんも、本当はこんなこと言いたくないんだと思う。ユキちゃんに話しながら、すっごく申し訳なさそうな顔をしてる。
ユキちゃん、泣いちゃったらどうしよう。
心配しながら見つめるけど、ユキちゃんは少しだけうつむいた後、ゆっくり顔を上げて笑ってみせた。
「そっか。お父さん忙しいし、お仕事なら仕方ないよね」
「ユキちゃん……」
笑ってるけど、本当は全然平気じゃないよね。
けど、そんなこと言えない。言ったら、せっかく悲しいのを我慢してるのが、全部ムダになっちゃうから。
それでも、笑顔なのに寂しそうなユキちゃんを見ると、胸が苦しくなる。隣を見ると、沖くんもどうしていいかわからず、気まずそうな顔をしてた。
沖くんだってお父さんやお母さんと離れて暮らしてるし、うちのお父さんだって、今日からしばらく帰ってこれないって言ってた。
けど、会えると思ってたのに会えないのは、やっぱり悲しいよね。
せめて、なにか元気づけられるようなこと、してあげられないかな。
(そうだ!)
そこまで考えた時、わたしの中に、あるアイディアが閃いた。
「ユキちゃん。わたしのうちも、今日からお父さんが仕事でいないの。明日はお休みだし、よかったら泊まりにこない?」
だけどこの日はひとりで教室にいて、時々難しいそうな顔をしていた。
「やっぱり、盗まれた忍者道具のこと、気になる」
近くに行って、聞いてみる。
「そりゃな。それに、師匠のこともな。簡単にやられるなんてことはないだろうけど、危険な任務かもしれないし、俺も手伝えたらなって思うよ」
「やっぱりそうだよね」
二人してうーんと唸るけど、その時、急に後ろから声をかけられた。
「二人とも、なに話してるの?」
「えっ? ああ、ユキちゃん」
声をかけてきたのは、ユキちゃん。話に夢中になってて、ちっとも気づかなかったよ。
「えっと、今、うちのお父さんの話をしてたの」
「真昼ちゃんの、お父さん?」
「そう。お父さんが……お、お父さんが……」
ど、どうしよう。お父さんが忍者ってことはもちろん秘密だし、とっさに言い訳が出てこない。
けどそこで、わたしの代わりに沖くんが答える。
「色々お世話になってるから、いつかお礼がしたいって言ってたんだよ」
「ああ。そういえば沖くん、元々真昼ちゃんのお父さんと知り合いだったんだっけ」
「まあな」
忍者のことや弟子入りしてることは話せないけど、沖くんがちょくちょくうちに来てお父さんに会ってるのは、ユキちゃんも知っている。
特におかしいとは思わなかったみたい。
「真昼ちゃんのお父さんなら、わたしも好きだな。優しいし、時々遊びに連れて行ってくれるし、ステキじゃない」
「えぇっ。そう?」
沖君といいユキちゃんといい、うちのお父さん、なぜか人気あるんだよね。
そういえば。
お父さんの話になって、ひとつ思い出す。
「ねえ。ユキちゃんのお父さんが外国から帰ってくるのって、もうすぐだっけ?」
「うん。今日だよ」
やっぱり。
前からお父さんが帰ってくるのを楽しみにしてたユキちゃん。お父さんに聞かせるためにピアノも頑張ってたし、すっごく嬉しそう。
その日の放課後、わたしと沖くんは、そんなユキちゃんと一緒に、揃って校門を出る。
そしたらすぐそばにユキちゃんのうちの車が止まってて、中からお手伝いの坪内さんが出てきた。
今日はピアノ教室はないけど、お父さんが帰ってくるから、迎えに来たのかな?
けど、坪内さんはなんだか浮かない顔をしていた。
ユキちゃんもそれに気づいたみたいで、どうしたのと、不安そうに聞く。
「申し訳ありません。実はお父様が、急な用事で、帰って来れなくなってしまいました」
「えっ────?」
とたんに、ユキちゃんの表情が固くなる。
驚いたのはわたしも同じ。だってユキちゃん、ずっと楽しみにしてたんだよ。
なのに、なんで?
「それじゃ、明日は帰ってきますか?」
「それが、いつ用事が終わるかわからなくて、当分は戻ってこれないかもしれないとのことでした」
そんな。
ユキちゃんのお父さんが帰ってくるのは、お母さんの命日にお墓参りに行くため。どんなに忙しくても、毎年それだけは欠かしたことがないって言ってた。
けど当分帰ってこれないなら、それもできなくなっちゃうの?
坪内さんも、本当はこんなこと言いたくないんだと思う。ユキちゃんに話しながら、すっごく申し訳なさそうな顔をしてる。
ユキちゃん、泣いちゃったらどうしよう。
心配しながら見つめるけど、ユキちゃんは少しだけうつむいた後、ゆっくり顔を上げて笑ってみせた。
「そっか。お父さん忙しいし、お仕事なら仕方ないよね」
「ユキちゃん……」
笑ってるけど、本当は全然平気じゃないよね。
けど、そんなこと言えない。言ったら、せっかく悲しいのを我慢してるのが、全部ムダになっちゃうから。
それでも、笑顔なのに寂しそうなユキちゃんを見ると、胸が苦しくなる。隣を見ると、沖くんもどうしていいかわからず、気まずそうな顔をしてた。
沖くんだってお父さんやお母さんと離れて暮らしてるし、うちのお父さんだって、今日からしばらく帰ってこれないって言ってた。
けど、会えると思ってたのに会えないのは、やっぱり悲しいよね。
せめて、なにか元気づけられるようなこと、してあげられないかな。
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