令和の時代に忍者やってます

無月兄

文字の大きさ
上 下
3 / 28

第3話 授業中のハプニング

しおりを挟む
「セーフ!」

 ダッシュで教室に入って時計を見ると、授業開始ギリギリ。
 だけど全力で走ってきたおかげで、見事セーフ。
 毎日修行しているおかげで、足には自信があるんだ。

「おはよう、真昼ちゃん」
「ユキちゃん!」

 声をかけてきたのは、同じクラスの要小雪ちゃん。わたしはユキちゃんって呼んでるよ。
 スズちゃんは、腰まで伸ばした髪にクリッとした目がとってもキレイで、お嬢様って感じの子。
 って言うか、お父さんがとっても大きな会社をいくつも経営してる、正真正銘のお嬢様なの。

 けどユキちゃんは、それを鼻にかけたりはしないの。性格は、わたしとは全然違って大人しいけど、ずっと前からのなかよしなんだ。

「遅刻ギリギリなんて珍しいね。何かあったの?」
「目覚ましに気づかなくて寝ちゃってたの。それに、お父さんとちょっと言い合っちゃった」
「言い合うって?」
「それはまあ、色々かな」

 まさか、将来忍者になるかどうかで揉めてたなんて言えないよ。

「真昼ちゃん。もしかして、お父さんとケンカしたの?」
「う~ん、ケンカって言うほどじゃないと思うよ」

 色々言い合ったりはしたけど、それでお父さんを嫌いになったりはしないもんね。

「そっか、よかった。そうだよね。真昼ちゃんのお父さん優しいし、ケンカなんてしないか」
「えぇ~っ。そんなに優しいかな?」
「そうだよ。だって真昼ちゃんのお父さん、前にわたしが遊びに行ったら、友達が来てくれたってすっごく喜んでたんだもん。それに、たくさんおうちにいてくれるし……」 
「あっ……」

 ユキちゃんは、ちょっとだけ寂しそうな顔をする。

 ユキちゃんのお父さん、忙しくて、いつも外国を飛び回ってるの。 それにユキちゃんのお母さんは、ユキちゃんが小学校に入ったばかりのころに亡くなってて、普段は、お手伝いさんに面倒見てもらってる。

 ユキちゃんにとって、家族が近くにいてくれるってのは、それだけで嬉しいことなのかも。 

 なんて考えてたら、授業開始のチャイムが鳴って、担任の先生が教室に入ってきた。
 坂田先生っていう、若い男の先生だ。

「さあ、皆さん席について」

 というわけで、ユキちゃんとの話もここで中断。
 ユキちゃんに、また休み時間にって言ってから自分の席に座って、それから出席確認。そして一時間目の授業が始まった。

 一時間目の授業は国語。
 朝の修行で疲れたけど、寝ちゃわないようにがんばらなきゃ。

 なんて思ってたら、急に授業を進めている坂田先生の声の調子が変わった。

「中井さん。今、机の中に何か隠しましたか?」
「えっと……」

 声をかけられたのは、中井涼子ちゃん。おとなしい子なんだけど、今はいつもよりずっと無口でだんまりしてる。

「さっきから何度も机の中に何かを出し入れしてたみたいですが、それは何ですか?」

 もう一度、坂田先生が聞く。
 坂田先生は普段は優しいけど、叱るときはしっかり叱る。
 涼子ちゃんはしばらくなにも言わずに黙ってたけど、机の中から、一冊の本を取り出した。

「ごめんなさい。続きが気になって、読んでいました」

 小さな声で呟くと、坂田先生は困った顔をする。

「中井さん。この本は、お家から持ってきたものですか? 授業中に読むのがいけないことだというのは、わかってますね」
「……はい」

 涼子ちゃんは、ちゃんと自分が悪いと思ってるみたいで、言い訳せずに静かに頷く。

「こう言う時は、没収して先生が三日間預かる。それも、わかりますね」
「えっ!…………はい」

 授業中、本やマンガを読んでいたら、先生が三日間預かる。それがこのクラスのルールで、今までにも何人か没収されてる。

 それを聞いて、涼子ちゃんは慌てたけど、嫌だとも言えなくて、結局そのまま本を渡しちゃった。
 その時の涼子ちゃんの手は、少し震えていたように見えた。

 坂田先生も、そんな涼子ちゃんを見て少し心配そうな顔をするけど、だからって特別に見逃したりはしない。

「大事な本がしばらく読めなくなるのは嫌かもしれません。けど、それがみんなで決めたルールです。三日経ったら、ちゃんと返しますからね」
「…………はい」

 最後に涼子ちゃんが小さく返事をして、授業は再開。

 坂田先生の話を聞きながらチラッと涼子ちゃんの方を向くと、落ち込んでいるのか、小さく肩を落としていた。
 授業中に関係ない本を読むのはダメ。それは分かってるけど、なんだかかわいそう。

 それに涼子ちゃん、普段から本を読むのが好きだけど、今みたいに授業中にこっそり読んだなんてことは一度もないんだよね。
 なのに、どうしてこんなことしたんだろう。

 それがわかったのは、授業が終わった後の休み時間。
 ユキちゃんが、涼子ちゃんと話してた。

「ユキちゃん。どうしたの」
「あっ、真昼ちゃん。実はね……」

 ユキちゃんは、一度涼子ちゃんを見て、話していいかって確認をとる。
 涼子ちゃんが頷くと、教えてくれたの。

 どうして涼子ちゃんが、授業中本を見てたのか。それに、どうしてあんなに慌ててたのか。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

化け猫ミッケと黒い天使

ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。 そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。 彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。 次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。 そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。

守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。 死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。 そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。 助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。 ・守護霊代行の仕事を手伝うか。 ・死亡手続きを進められるか。 究極の選択を迫られた未蘭。 守護霊代行の仕事を引き受けることに。 人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。 「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」 話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎ ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

【完結】またたく星空の下

mazecco
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 君とのきずな児童書賞 受賞作】 ※こちらはweb版(改稿前)です※ ※書籍版は『初恋×星空シンバル』と改題し、web版を大幅に改稿したものです※ ◇◇◇冴えない中学一年生の女の子の、部活×恋愛の青春物語◇◇◇ 主人公、海茅は、フルート志望で吹奏楽部に入部したのに、オーディションに落ちてパーカッションになってしまった。しかもコンクールでは地味なシンバルを担当することに。 クラスには馴染めないし、中学生活が全然楽しくない。 そんな中、海茅は一人の女性と一人の男の子と出会う。 シンバルと、絵が好きな男の子に恋に落ちる、小さなキュンとキュッが詰まった物語。

こちら第二編集部!

月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、 いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。 生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。 そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。 第一編集部が発行している「パンダ通信」 第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」 片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、 主に女生徒たちから絶大な支持をえている。 片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには 熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。 編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。 この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。 それは―― 廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。 これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、 取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。

夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。 友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。 ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。 だが、彼らはまだ知らなかった。 ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。 敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。 果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか? 8月中、ほぼ毎日更新予定です。 (※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)

オオカミ少女と呼ばないで

柳律斗
児童書・童話
「大神くんの頭、オオカミみたいな耳、生えてる……?」 その一言が、私をオオカミ少女にした。 空気を読むことが少し苦手なさくら。人気者の男子、大神くんと接点を持つようになって以降、クラスの女子に目をつけられてしまう。そんな中、あるできごとをきっかけに「空気の色」が見えるように―― 表紙画像はノーコピーライトガール様よりお借りしました。ありがとうございます。

処理中です...