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危機は突然に…
1話
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その日も俺は当たり前のように普通に出社して普通に仕事をしていた。
「明日は金曜だからなぁ、どうすっかな」
帰ったら裏クラウドファンディングのサイトを見ながらいっぱい引っかけようと考えながらだが。
そして昼休憩が終わり午後の仕事も終わりが見えはじめた16時ごろのことだった。
珍しく部長が俺に声をかけてきたのだ。
「ちょっと今いいかな」
「あ、はい」
呼び出した部長の後についていくと会議室に入った。
六人ほどが向かい合って座れるほどの小さな会議室だ。
「そちら側に座ってくれ」
「はい」
向かい合って座ると部長は深刻な表情をしていた。
「実は今月で君、クビになるらしいんだよ」
「は?」
リストラを突然告げられたらしいが思考が追いついてこない。
「俺も上に言われただけだから良くわかんないんだけど、クビなんだってさ。とりあえず伝えておけって。荷物片付けたり引き継ぎしたり大変だろうけどよろしくね」
部長は席を立ち俺の肩を叩くとを会議室を出ていってしまった。
俺は一人きりになった。
冗談じゃない。
いきなり理由もなしにクビだなんてどういう了見だ。
労働基準監督署やら弁護士事務所に乗り込んでやる。
俺は息巻いて自分のデスクに戻って鞄を掴んだ。
「あれ、先輩、早退ですか?珍しいですね」
そんな後輩の声に反応する余裕もなく俺は会社を飛び出した。
…
自宅に帰ると身に覚えのないところから手紙が届いている。
中を開くと借用書が入っている。
「なんだよ、これ」
誰かの連帯保証人になった覚えもない。
新手の詐欺かと思い差出人を見ると裏クラウドファンディングからだった。
「自分の財産の範囲内でしか出資してないんだから借金なんかするわけないだろ」
もしやカードを切るときにキャッシングと間違えたとかだろうか。
慌ててクレジットカードの履歴や通帳を確認するがそんなことはない。
「何が起きているんだ」
とりあえず運営に借金について問い合わせてみることにする。
しかしお問合せに関しましては担当者から後日ご連絡いたしますとだけ返ってきた。
…
解雇予告を受けて1週間が経ったが裏クラウドファンディングの運営からも相談に行った弁護士や労働基準監督署を含めてどこからも連絡がこない。
「くそっ、どいつもこいつもなんなんだ」
荒ぶる俺を知ってか知らずか携帯に一件の連絡が入っていた。
それは大学の同窓会で久しぶりに再開した山城からだった。
「随分と大変な目に遭っているようだね。愚痴でも聞いてあげるから久しぶりにサシでどうだい?」
「…行く」
なぜ俺の現状を彼が知っているかはおいておくにしても飲まねばやっていられない。
指定された店に向かうとそこは社運をかけたプロジェクト等で使われるレベルの高級料亭だった。
「あのヤロウ、もうすぐクビになる上に借用書まで渡された俺の懐事情わかってんのか」
ブツブツと文句を言いながら立派な門をくぐる。
出てきた着物姿の女性に山城の名前を告げるとそのまま座敷に案内された。
「やぁ、よく来たね」
「なんだってこんな店に呼び出してくれてんだよ。払えねーぞ俺の給料じゃ」
「安心してくれ。今日は奢るから」
「そうか、それはよかった」
「ただし奢るのは私じゃないよ」
「は?」
山城がそう言ったとき、閉まったはずの座敷の戸が開いた。
「明日は金曜だからなぁ、どうすっかな」
帰ったら裏クラウドファンディングのサイトを見ながらいっぱい引っかけようと考えながらだが。
そして昼休憩が終わり午後の仕事も終わりが見えはじめた16時ごろのことだった。
珍しく部長が俺に声をかけてきたのだ。
「ちょっと今いいかな」
「あ、はい」
呼び出した部長の後についていくと会議室に入った。
六人ほどが向かい合って座れるほどの小さな会議室だ。
「そちら側に座ってくれ」
「はい」
向かい合って座ると部長は深刻な表情をしていた。
「実は今月で君、クビになるらしいんだよ」
「は?」
リストラを突然告げられたらしいが思考が追いついてこない。
「俺も上に言われただけだから良くわかんないんだけど、クビなんだってさ。とりあえず伝えておけって。荷物片付けたり引き継ぎしたり大変だろうけどよろしくね」
部長は席を立ち俺の肩を叩くとを会議室を出ていってしまった。
俺は一人きりになった。
冗談じゃない。
いきなり理由もなしにクビだなんてどういう了見だ。
労働基準監督署やら弁護士事務所に乗り込んでやる。
俺は息巻いて自分のデスクに戻って鞄を掴んだ。
「あれ、先輩、早退ですか?珍しいですね」
そんな後輩の声に反応する余裕もなく俺は会社を飛び出した。
…
自宅に帰ると身に覚えのないところから手紙が届いている。
中を開くと借用書が入っている。
「なんだよ、これ」
誰かの連帯保証人になった覚えもない。
新手の詐欺かと思い差出人を見ると裏クラウドファンディングからだった。
「自分の財産の範囲内でしか出資してないんだから借金なんかするわけないだろ」
もしやカードを切るときにキャッシングと間違えたとかだろうか。
慌ててクレジットカードの履歴や通帳を確認するがそんなことはない。
「何が起きているんだ」
とりあえず運営に借金について問い合わせてみることにする。
しかしお問合せに関しましては担当者から後日ご連絡いたしますとだけ返ってきた。
…
解雇予告を受けて1週間が経ったが裏クラウドファンディングの運営からも相談に行った弁護士や労働基準監督署を含めてどこからも連絡がこない。
「くそっ、どいつもこいつもなんなんだ」
荒ぶる俺を知ってか知らずか携帯に一件の連絡が入っていた。
それは大学の同窓会で久しぶりに再開した山城からだった。
「随分と大変な目に遭っているようだね。愚痴でも聞いてあげるから久しぶりにサシでどうだい?」
「…行く」
なぜ俺の現状を彼が知っているかはおいておくにしても飲まねばやっていられない。
指定された店に向かうとそこは社運をかけたプロジェクト等で使われるレベルの高級料亭だった。
「あのヤロウ、もうすぐクビになる上に借用書まで渡された俺の懐事情わかってんのか」
ブツブツと文句を言いながら立派な門をくぐる。
出てきた着物姿の女性に山城の名前を告げるとそのまま座敷に案内された。
「やぁ、よく来たね」
「なんだってこんな店に呼び出してくれてんだよ。払えねーぞ俺の給料じゃ」
「安心してくれ。今日は奢るから」
「そうか、それはよかった」
「ただし奢るのは私じゃないよ」
「は?」
山城がそう言ったとき、閉まったはずの座敷の戸が開いた。
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