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浅上秀

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さびれた商店街に出資してみた

6話

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俺たちが乗り込むとバスはすぐに出発する。

「時間厳守、誠にありがとうございます。これより目的地へと進んでまいります。今左手に見えますのは…」

木田さんは先ほどの鬼畜様子は鳴りを潜めて、ただの清楚なバスガイドの皮を厚くかぶっている。

「木田さん、すごい人ですね」

三番さんがつぶやいた一言に俺も五番も無言で頷く。

「見た目完全に受けっすよね」

たしかにあの光景を目にするまで、木田さんがあんな人だと誰も思わなかっただろう。
先ほど十七番を取り囲んでいた乗客たちは俺を含めて全員微妙な表情に違いない。
時折、後ろの席から十七番の声が聞こえたが、原因を知っている人たちは意味ありげに視線を交わしニヤリとそれを眺めるにとどめていた。



楽しいバスの旅はあっという間に終わりを迎えた。

「目的地に到着いたしました。まず皆さんにはこちらの旅館に荷物を置いていただきます。その後、貴重品だけお持ちいただいて本日のメインイベント会場へと移動していただきます」

バスが旅館の前に停車する。
商店街にほどちかいこの旅館は俺が生まれる前から立っている。
しかしこの地域は特に観光できるような場所もないため、たまにサラリーマンが研修できているのを見かけるか、帰省した実家に部屋が足りない人が止まりに来ているイメージだ。

「お降りになりましたら玄関からお入りになって中でお待ちください」

荷物を持ってバスから降りる。
通学路の途中にあったので外観は見慣れたものだったが、中に入るのは初めてだ。

「ようこそ、いらっしゃいました」

女将が総勢二十人ほどの乗客を出迎えてくれる。

「今夜お泊りいただくお部屋につきましては番号ごとに決まっております。事前にご了承をいただい方は相部屋にさせていただいております。今から三十分後にこちらに集合していただいてご出発となります。それまではお部屋でおくつろぎください。それでは二番の方からどうぞ」

俺はいそいそと女将から鍵を受け取る。

「二番様はお一人部屋となっております。こちらの仲居が案内いたしますので」

いつの間にか女将の隣にいた仲居が一礼すると部屋を案内してくる。

「ごゆっくりどうぞ」

館内設備の説明を軽くすると仲居は去っていった。
俺は部屋の中に入って荷物を下ろす。
ベットはダブルだ。
ソファに腰かけておいてあった饅頭を食べながら窓の外を見る。

「あれ、もしかして…」

窓から見える林のような場所でよく小学生の頃、親友と遊んだことを思い出していた。

「確か商店街のどっかの店の息子じゃなかったかなぁ」

今日会えたりして、と淡い期待を抱きながら集合時間まで部屋でまったりしながら時間をつぶしたのだった。



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