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浅上秀

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老舗旅館に出資してみた

3話

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部屋の露天風呂は夜にでもゆっくり入ろうと思う。

「こっちか…」

案内板に従って大浴場を目指す。



別館の一階の奥にある浴場に辿り着く。
広くて鍵の付いた脱衣所のロッカーに来ていたものと貴重品、部屋の鍵を入れる。
ガラガラと音を立てて開いた引き戸の奥にはとてつもなく広い浴場が広がっていた。
洗い場は三つしかないが、湯船は四種類ほどあり、さらにはサウナ、垢すり、露天風呂と充実している。

「これ貸し切り状態ってマジかよ…」

洗い場で身体や髪を洗ってさっぱりする。
それからスタンダードそうな湯船に身体を沈めた。

「ふあぁああ」

思わず声が漏れてしまう。
隣は黒い色のお湯の湯船、その隣はジャグジー、そのさらに奥のサウナの手前には水風呂があるようだ。

「ああ、ああああ」

ジャグジ―に移動すると振動で声が揺れる。

「サウナも行ってみるか」

普段は全く入らないが、折角なので入ってみることにした。
部屋の前においてあるサウナマットを手に取り木製のノブに手を掛けてサウナルームに入る。
独特の熱気とアロマだろうか、程よいいい香りが立ち込めている。

「あっちぃ」

下段に座って目を閉じる。

「失礼いたします」

「へっ、藤原、さん?」

目を開けると先ほどスーツ姿で俺を案内してくれた男性が白い半そでに短パン姿で現れた。

「こちらのサウナをさらにお楽しみいただくシステムが付いているんです」

「へ、へぇ」

藤原さんはそういうとサウナストーンにいつの間に持ってきたのか桶とその中に入った液体を大きなスプーンのようなもので掬ってかけた。

「こちらアロマ水になっております。匂いによって様々な効能があると言われております」

俺に背を向けながら何回かサウナストーンに水をかけていた藤原さんが言う。

「そうなんだ…ちなみにこれは?」

藤原さんは俺の方を振り向いてお茶目にウインクした。

「秘密です」

「あ、あぁ、そう…」

藤原さんは用が終わるとさっさと出て行った。
俺はそのあと水風呂にザブリと浸かった。

「つめたっ」

歯がガタガタいったのはご愛敬。
露天風呂を覗くついでに外気浴をする。
ゆったりすわれそうな一人がけの椅子に腰かける。

「しかしすげぇ露天風呂だな」

五右衛門風呂と大きな湯船と二種類あった。

「あとで入ろ…」

もう一回、サウナと水風呂と外気浴のセットをこなしてから露天風呂に浸かる。
五右衛門風呂の方は入った瞬間、水があふれたのがなんとも爽快だった。
普通の大きな湯船の露天風呂にはいってのんびりすると眠たくなってきたので上がることにした。

その時に俺は書かれていた効能を見逃していたことを後で知るのだった。


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