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どうやら実家を勘当されるらしい

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兄は父が邸に帰ってきて早速、俺が冒険者ギルドに出入りしていることを言いつけたらしい。
夕食前に俺は父に呼び出された。

そして先ほどの父のセリフに戻る、というわけだ。



父の陰で兄はニヤニヤと汚い笑みを浮かべている。

「…わかりました」

元々、10歳になったら出ようと思っていたので勘当されることに全く抵抗はない。

「わかったなら今日中に出ていくことだ」

父はそう吐き捨てると部屋を出て行った。

「じゃあな」

兄は俺を蹴り飛ばすと部屋から軽い足取りで出て行った。

「あれ、こんなにあいつ蹴るの下手だっけ?」

俺は久しぶりに受けた兄からの暴力が思ったよりも軽いことに驚いた。
いや多分、修行で筋トレや体術を叩き込まれたおかげで身体能力が向上したためだろう。

以前の俺だったら、一時間は起き上がれなかったが、秒で床から立ち上がれた。
悲しい感動を覚えてしまった。



俺は自分の使っていた部屋に戻ると荷物をまとめるとさっさと邸を飛び出した。
通りがかった食堂からは楽しそうな家族の話声が漏れ聞こえたが、何も感じなかった。

「あーぁ、どうしようかなぁ」

とりあえず街に向かって歩き始める。
日が差してない暗い夜道を一人で進む。

いつもとは違う道のせいか、なんだか街が遠く感じた。



冒険者ギルドは24時間、やっている。
夜間や早朝にクエストに行く人もいるためだ。

「あれ、レイ、こんな時間にどうしたんだ」

「カイルさん!カイルさんこそどうしてここに?」

偶然なのだろうか。
カイルさんと入り口で出くわした。

「ちょっと所用でな」

二日ほど前から仕事で忙しくなると言って、カイルは昼間ギルドに来ていなかった。

「仕事は落ち着かれたんですか?」

「あー…まぁな。それよりレイはどうしたんだよ」

「実家を追い出されまして…」

「は?」

「家族に無断で冒険者になってのはご存じだと思うんですけど、それがばれてしまいまして…」

カイルは苦しそうな表情で俺の頭に手をおいた。

「うちでよければ来るか?」

「え、いいんですか!?」

「狭いけど我慢しろよ」

「は、はい!」

カイルさんの後についていくと、街から少し北の山のふもと近くまで歩いてきた。

「ここだ」

カイルさんは小ぎれいな一軒家を指さした。

「え、カイルさん家持っていらっしゃったんですか?」

「まぁな。もらいものだけど」

中に入ると俺が実家で使っていた部屋よりも広い空間があった。

「広いじゃないですか…」

「人が来たら狭いって意味だよ」

カイルさんは普段使っていない二階の一部屋を俺にくれた。
前の部屋に比べたら狭いが、とても落ち着く部屋だった。

これから始まる新しい生活と実家との清々しい別れに俺は胸が躍っていた。









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