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最悪の事件

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しばらく俺はヒカルの両親と泣きに泣いた。

「さぁ、お別れの準備をしようか…」

ヒカルの父は立ち上がった。
ヒカルの母もよろよろとその後に続く。

「ヒカル…」

俺はヒカルの頬に触れた。
ひんやりとした悲しい冷たさが伝わってくる。
俺はヒカルの顔を眺めながらぼーっとしていた。



しばらくすると部屋にヒカルの父が何人かを連れて入ってきた。

「レイくんも一緒に来てくれるかい?」

「…はい」

俺が立ち上がるとヒカルの父の後ろにいた人たちがヒカルの身体を部屋から運び出した。
彼らはたぶん葬儀屋みたいな人たちなのだろう。

この世界では死んだその日にすぐに土葬してしまう風習がある。
ヒカルの身体が葬儀屋の手であっという間に棺の中におさめられる。

「ヒカル…」

ヒカルの両親と俺が最後の別れを告げると、そっと蓋が閉められた。
墓地に運ばれてあっという間にヒカルの家族のお墓に収められてしまった。

「なんで、なんでだろうなぁ」

あんなにきれいな姿のまま、あの世へ行ってしまうと思えなかった。
もっと冒険者としてボロボロになってから入るものだと思っていた。



いろんな考えが俺の中を巡り、ヒカルの両親が帰った後も俺は日が暮れるまで墓の前から動けなかった。

「どうして、どうしてだよ…」

ようやく墓地から離れた俺は邸に帰る前に泣き腫らした顔で冒険者ギルドに向かった。

「レイくん…誕生日おめでとう」

ヒカルと一緒にいつもお世話になっていた受付の男性が俺に声をかけてくれる。

「ありがとう、ございます」

「登録、するかい?」

もうヒカルがいないんじゃ、俺は冒険に出る意味なんてないんじゃないだろうか。

「…考え、ます。本当は、昨日までは今すぐにでもなりたかったのに」

「すまないね…こんな時に」

この人もきっとヒカルがいなくなってしまったことを知っているのだろう。

「でもヒカルくんもきっとレイくんが冒険者になることを望んでいると思うよ」

そう言って俺の頭をポンポンと撫でた。

「俺も、俺もそう思います…」

俺はそう言って冒険者ギルドを去った。



トボトボと邸に向かう中、これからの自分の行く末を考えていた。

「そもそもどうしてヒカルがあんなめに合わなきゃいけなかったんだ…」

朝聞いた男たちの話を頭の中でパズルのように組み立てていく。

「…殿下がヒカルを殺したってことなのか?ヒカルが何かを嫌がったから」

まだ、まだ情報が足りない。

「あの人たちまだいるかな…」

家に向かう足取りが急に軽くなる。
どんなことをしてでもあいつらがヒカルに何をしたのか突き止めなきゃ。

俺はこの時使命感に燃えていた。








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