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最悪の事件
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鑑定スキルを持つ子供なんて、きっと、ヒカル以外にもいるはずだ。
そうだ。
「ヒカルの話のわけがない…」
俺は邸を飛び出して走って街に向かった。
…
走って走って、街の入り口にたどり着いた。
真っ先に冒険者ギルドに向かうが、ヒカルはいない。
「どこだ…」
食堂にも、二人で行った空き地にもどこにもいない。
俺は意を決してヒカルの家にむかった。
「頼む、いてくれ…」
家にたどり着き、ドアを叩く。
重く鈍い音が手のひらから伝わってくる。
「や、やぁ、レイくん、どうしたんだい」
ヒカルの父親が出迎えてくれた。
心なし彼は赤い目をしているように見える。
「あの、ヒカル!ヒカルはどこにいますか?俺、今日10歳になって、それで、あの…」
言葉が途切れる。
その瞬間、ヒカルの父の目から一筋、光が流れる。
「…あの子に会ってくれるかい?」
俺はただならぬ雰囲気を察して、ゆっくり、頷いた。
…
久しぶりに来たヒカルの部屋。
部屋の中に入るとベッドにヒカルが眠っていた。
「ヒカル…?」
ベッドの脇ではヒカルの母親が泣き崩れている。
どういうことだ。
「ヒカル、おい、ヒカル、起きろよ!なぁ!起きろって!!」
俺は一歩、一歩ベッドに近づく。
ベッドの上には青い顔をしたヒカルがいる。
「なんで、なんで起きないんだよ。俺さ、今日やっと10歳になったんだよ。ようやく、ヒカルと二人で一緒に冒険いけるんだよ?なぁ!そのために俺たち、スキル磨いてきたんだろ?」
俺もヒカルの母親の横に泣き崩れる。
「ああああああ」
泣き崩れる俺にヒカルの母親が縋り付いてくる。
暖かくも冷たい手のひら。
なんとかしなきゃと思った。
俺ならできるはずだ、と。
俺はヒカルの母親の背中をさすりながら顔を上げる。
「我が命じる、この者の命を戻せ、リコンストラクション」
ヒカルの身体が輝くが、何も変わらない。
「我が命じる、この者の命を戻せ、リコンストラクション」
俺はなんども、なんども再構築のスキルをつかった。
何度使ってもヒカルが目を覚ますことはないが、何度も呪文を唱える。
「レイくん、もう、いいよ。もう、やめても、いいよ」
ヒカルの父が俺の肩を抱く。
「でも、でも、だって…」
俺はそれでも呪文を唱え続けた。
声が出なくなるまで何度も何度も。
「レイくん、もういいよ、ありがとう、ありがとう」
やがて声が枯れた俺はヒカルの両親と二人で黙ってヒカルの身体を眺めていた。
それと同時に俺は何もできない自分に絶望していた。
今まで磨いてきたスキルは何だったのだろうか。
そうだ。
「ヒカルの話のわけがない…」
俺は邸を飛び出して走って街に向かった。
…
走って走って、街の入り口にたどり着いた。
真っ先に冒険者ギルドに向かうが、ヒカルはいない。
「どこだ…」
食堂にも、二人で行った空き地にもどこにもいない。
俺は意を決してヒカルの家にむかった。
「頼む、いてくれ…」
家にたどり着き、ドアを叩く。
重く鈍い音が手のひらから伝わってくる。
「や、やぁ、レイくん、どうしたんだい」
ヒカルの父親が出迎えてくれた。
心なし彼は赤い目をしているように見える。
「あの、ヒカル!ヒカルはどこにいますか?俺、今日10歳になって、それで、あの…」
言葉が途切れる。
その瞬間、ヒカルの父の目から一筋、光が流れる。
「…あの子に会ってくれるかい?」
俺はただならぬ雰囲気を察して、ゆっくり、頷いた。
…
久しぶりに来たヒカルの部屋。
部屋の中に入るとベッドにヒカルが眠っていた。
「ヒカル…?」
ベッドの脇ではヒカルの母親が泣き崩れている。
どういうことだ。
「ヒカル、おい、ヒカル、起きろよ!なぁ!起きろって!!」
俺は一歩、一歩ベッドに近づく。
ベッドの上には青い顔をしたヒカルがいる。
「なんで、なんで起きないんだよ。俺さ、今日やっと10歳になったんだよ。ようやく、ヒカルと二人で一緒に冒険いけるんだよ?なぁ!そのために俺たち、スキル磨いてきたんだろ?」
俺もヒカルの母親の横に泣き崩れる。
「ああああああ」
泣き崩れる俺にヒカルの母親が縋り付いてくる。
暖かくも冷たい手のひら。
なんとかしなきゃと思った。
俺ならできるはずだ、と。
俺はヒカルの母親の背中をさすりながら顔を上げる。
「我が命じる、この者の命を戻せ、リコンストラクション」
ヒカルの身体が輝くが、何も変わらない。
「我が命じる、この者の命を戻せ、リコンストラクション」
俺はなんども、なんども再構築のスキルをつかった。
何度使ってもヒカルが目を覚ますことはないが、何度も呪文を唱える。
「レイくん、もう、いいよ。もう、やめても、いいよ」
ヒカルの父が俺の肩を抱く。
「でも、でも、だって…」
俺はそれでも呪文を唱え続けた。
声が出なくなるまで何度も何度も。
「レイくん、もういいよ、ありがとう、ありがとう」
やがて声が枯れた俺はヒカルの両親と二人で黙ってヒカルの身体を眺めていた。
それと同時に俺は何もできない自分に絶望していた。
今まで磨いてきたスキルは何だったのだろうか。
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