転生した俺は破壊と再構築スキルで這い上がってやる!

浅上秀

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日が暮れて、街を出るアーチの近くまで来た。

「今日もありがとな」

「ううん、僕こそ」

オレンジの夕日の中、また明日会う約束をして別れた。



「おい、開けろ!!」

邸にこっそり帰ると誰もいない俺の家の部屋の扉をガンガン叩いている兄がいた。

「げ」

俺は見なかったことにして通り過ぎようとしたが、ちょうど使用人が近づいてきていたので逃げられない。
しょうがなく柱の陰に隠れてやり過ごすことにした。

「おや、カイお坊ちゃま。いかがなさいましたか?」

使用人が兄に声をかけた。

「ふん、俺様がスキルを使えるようになったかあの役立たずで実験してやろうかと思っただけだよ」

「さ、さようでございますか」

いや若干、使用人も引いてるよ。

「あいつ、最近俺様に黙ってどっか行ってる気がするんだよな」

「そんなはずはございません。旦那様から邸の外に出ぬように、言いつけられていらっしゃるのですから」

「だよな、あいつがお父様のいいつけ破るわけねぇよな。なんせ役立たずだもんな」

兄よ、俺は言いつけなど一度も守ったことはない。
まぁ満足したのか使用人を従えて自分の部屋に帰ってくれたので良しとしよう。



「あ、そういえば母さんのスキルってなんだろう」

俺は自分のスキルが本当に遺伝ではないのだろうか。
夕食後、父と兄が庭でスキルの練習を始めたのを見届けると俺は母のもとにむかった。

今世では母親とは両手で数えられるほどしか顔を合わせた覚えがない。
母は兄を溺愛しており、兄の面倒しか見ないのだ。

「ここか」

ヒカルに鑑定魔法なしにスキルを知る方法を尋ねた。
まずこの世界には強制的にスキルを発動させることで知る方法がある。
例えば生死にかかわる状況になると呪文なしに自己防衛的にスキルが発動する。

そして不確実ではあるが知ることができる方法がこれだ。

「ぎぃやあああ、虫いいいいい」

母の悲鳴とともにまばゆい光が現れる。
人は最も嫌悪するものが現れるとこれまた防衛本能でスキルが現れる、こともあるらしい。

「我が命じる、空間に散らばったスキルを集めてここに表せ、リコンストラクション」

空間に広がったスキルをスキルジュエルの鑑定の時のような形式で再構築する。

「なーんだ光か」

やっぱりスキルは遺伝ではなかった。
安心したような、どこか寂しいような、複雑な心境になってしまった。



スキルの遺伝がないことがきっかけかはわからないが、日に日に俺は家族から離れたいという気持ちが強くなってきた。
家を出るためには強くならなければいけない。

強くなれば10歳から冒険者としてギルドに登録が許されるので、家を出て生活できるようになる。

俺はこの話をヒカルにした。

「僕もね、冒険者になってこの世界を旅することが夢なんだ。それで世の中のすべてのものを鑑定して、まだ誰も鑑定したことのないものを鑑定できるようになりたいんだ!」

俺の動機とは違ってとても綺麗で無垢な動機だ。
その時はとてもまぶしかったが、あの日のヒカルの表情はいつに思い出しても輝いている。






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