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物語の始まり

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「あ、レイのも来たんじゃないかな」

店員がお盆をもってこちらに近づいてくる。

「おまたせしましたー。リザードマンもどき揚げですー」

「は?」

俺のもとに来たお盆には、ナニカを揚げたもの、パン、ライマのジュース、ケーラのサラダがのっている。

「初めて来てリザードマン頼むとは思わなかったよ」

ヒカルはくすくすと笑っている。

「き、気づいてたんなら教えてくれよ!」

「えー、でもレイが選んだんじゃないか」

「そ、そうだけどさ…」

よりにもよって、トカゲとは…。

「それじゃあ、いただきます」

「…いただきます」

俺は肩を落としながら、恐る恐るリザードマンもどきの揚げ物にかじりついた。

「あれ、美味しい…?」

家で食べさせられる揚げ物よりもサクサクで、肉も少し弾力だあってとても美味しい。

「リザードマンって見た目ちょっと怖いから僕は苦手なんだけど…皮が堅い分、肉が引き締まっていて美味しいんだってお父さんが言ってた」

ヒカルはオークもどきを頬張りながら言う。

「おいしいな…!」

家でもきっと魔獣の肉を使った料理を食べていたんだろうけど、何の肉かわからないまま出されていたものを食べていた。
それに家族とは食べる時間や場所をずらされていたので、人と一緒に食べるのはこの世界に来て初めてだったんじゃないかと気づいた。

「気にってくれたならよかった」

口の端にソースをつけながらヒカルは笑っていた。
この時の食事はずっと忘れないだろう。



「ふぅ、おなかいっぱい」

久しぶりにこんなに食べた気がする。
俺がおなかをさすっていると、ヒカルが店員を呼び止めた。

「あ、すいません!スキルジュエルお願いします」

「はいよ」

小さな丸い石が二つ、ヒカルの手の中に現れる。
そしてそのうちの一つを俺に渡してくれた。

「レイ、これを両手でこうやって包んで」

「お、おう」

ヒカルの真似をして両手でそれを包むように握る。

「あとはこっちに移れーって念じるだけ」

「わかった」

ヒカルが目を閉じると一瞬、ヒカルの両手が輝いた。

「これで終わり。レイもやってみて」

「こうか?」

俺は目を閉じると移れと何度も念じた。
すると一瞬、光が灯ったことを感じた。
それと同時にパキっという音がなる。
恐る恐る手を開くと粉々になったスキルジュエルがある。

「え?」

ヒカルがそれを見て驚いている間に、俺はもう一度その欠片たちを包んで念じた。
そして再び光が現れた。
改めて目を開けて手を開くと、若干ゆがんだ形になったスキルジュエルが現れた。

「うわぁ!すごいね、レイ!それがレイのスキル?」

崩壊のスキルで壊れたスキルジュエルが再構築のスキルで治ったようだが、スキルが付与されたのかどうかはわからない。

「ま、まぁな。これでいいのかよ?」

「うん、大丈夫だよ」

それを近くにいた店員に渡すとその人が鑑定してくれた。

「お代はこれで頂戴しました。ありがとうございます」

あれでいいんだ。
なんとも腑に落ちないまま店を出たのだった。







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