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物語の始まり

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父に促されるまま、兄も天に向かって手を挙げた。

「我が命じる、この木を焼き尽くせ、ファイヤーアロー」

兄の手には一瞬、火がともった。

「ほう、初めてにしては上出来だ」

「やはりまだまだですね…」

「精進して魔力量さえあがればお前も私のようになれる。あの出来損ないと違ってな」

父はそういって俺の部屋のほうを睨んでいる。

「げ、覗いてんのばれたかな…」

俺はそっと窓から離れた。



父と兄の様子から察するに俺のスキルもきっと炎に関連したものだろう。
みんなが寝静まってから試してみることにする。

夜遅く、部屋の外に向かって俺は右手をつき出した。
左手には燃えてもいいような紙を持つ。

「この紙を燃やせ、ファイヤーボール」

案の定、何も起きない。
何度も何度も繰り返し、呪文を唱える。
だんだんと声が嗄れてきたことを感じた俺は諦めた。

「やっぱり俺にはスキルなんてないんだ…」

紙を床に投げ捨ててベットにうずくまった。



次の日俺は憂鬱な気持ちのままベットを出る。
約束した手前、行かないわけにもいかず、のろのろと屋敷の外に向かって歩き出す。

街の入り口のアーチの下でヒカルが待っていてくれた。

「レイ!遅かったな!」

「…待たせて悪かったな」

「さ、行こうぜ」

ヒカルは今日も笑顔だ。

「今日はどこ行くんだ?」

先を歩くヒカルに尋ねる。

「もうちょっとで着くぞ」



「ここだ」

ヒカルは教会のような建物の前を指さす。

「ここって…?」

「とりあえず入ってみようぜ」

とりあえず俺はヒカルの後についていく。

中に入ると受付があり、キレイな女の人が座っていた。

「あら、ヒカルくんこんにちは。今日はどうしたのかしら」

「僕の友達の鑑定をしてあげたくてさ」

「友達思いなのね」

お姉さんが微笑むとヒカルは耳を赤くしていた。
そんなヒカルを俺は軽く小突く。

「おい、ヒカル、鑑定ってなんだよ」

「レイ、スキルわからないんだろ?僕のスキルだと調べてあげられることが限られるからここで詳しく調べてみたらどうかなと思って」

「だからここって何するところなんだよ」

「スキル研究所だよ。自分のスキルを詳しく調べて教えてくれたり、スキルの使い方を研究したり、あとはスキルジュエルを買ったり売ったりできるんだ」

「へー…」

受付から中に進むといくつもの部屋がある。
この部屋全部が研究室なのだろうか。

「まずはここ」

体育館のように広い部屋に入った。
部屋の中心には大きなスキルジュエルが空中に浮かんでいる。

「あれは?」

「スキルクリスタル、鑑定スキルをもった人何人かで作ったらしいよ。あれに触れるだけで自分のスキルだとか詳しいことが色々わかるんだ」

「ヒカルは触ったことあるのか?」

「うん、お父さんにこの前連れてきてもらったんだ。実は僕とお父さん、全然似てなくてさ…でもスキルが同じだったからちゃんと親子だってわかって安心したよ」

ヒカルは少し寂しそうに笑った。





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