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物語の始まり

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「俺はこの世界のどこにいてもこういう運命なのか」

心が絶望に染まりかけたその時だった。

「なにしてんだ!」

一人の男の声がした。

「げ、ヒカルだ、逃げろ」

「わー」

俺を攻撃しようとしていた男の子二人とも逃げ出した。

「大丈夫か?」

目をそっと開くとそこには俺に手を差し伸べている一人の男の子がいた。

「あ、ありがとう…」

ありがたくその手を取って立ち上がる。

「あいつら、自分より年下のやつを見るとすぐああいうことするんだよ。まったく」

男の子は男たちが去っていったほうを睨んでいた。

「そ、そうなんだ…」

「でも君、初めて見た気がする…名前は?俺はヒカル」

前世の親友と同じ名前だ。
少し感動を覚えながら俺も答える。

「レイ…」

「レイか…よし覚えた。僕は5歳なんだけどレイは?」

「お、俺も5歳!」

「一緒だな」

ヒカルはにっかりと笑った。
最近、兄の意地悪な笑みしか見てなかったせいかとてもヒカルの笑顔が眩しく見えた。

「あ、あぁ」

「今日は一人で街に来たのかよ」

「あー、うん、一人」

「へー。俺も一人!」

「そうなんだ…俺、実は町に来るの初めてで…」

なんだか言葉が尻つぼみになってしまう。

「じゃあ僕が案内してやるよ!」

「あ、ありがとう」

二人は並んで歩きだした。



「野菜を買うならここが安いからおすすめ。あとこっちの帽子屋のおじさんは隣の花屋のお姉さんのことが好きなんだって。でもおじさんには奥さんがいて…」

ヒカルは店の前を通るたびにその店の内情まで詳しく教えてくれる。

「く、詳しいんだな」

「まぁな、僕のスキル、情報収集にむいてるんだ」

「スキル?」

この世界はやはりそういったものがあるようだ。

「そう。僕のお父さん、冒険者でね、索敵とか探索とかを担当してるんだ」

「だからヒカルも?」

「うん、スキルは絶対に親と同じものになるからね」

「どんなひとでも親と同じスキルになるの?」

「百年に一人くらいはオリジナルのスキルを持つ人がいるって本に書いてあったけど…僕は実際に親と違うスキルを持った人は聞いたことないなぁ」

俺は帰ったら家族のスキルを探ってみようと思った。



「で、ここが街の中心で冒険者ギルドの本部!」

入口のアーチにはこの国の文字で「ステイン 冒険者ギルド」と書いてある。
俺はここにきて初めてこの町の名前がステインということを知った。

「おや、ヒカルくんじゃないか?そっちはお友達かな?」

「カイルさん!」

アーチの向こうから来た背中に長剣を刺し、茶色いマントをたなびかせたいかにも剣士っぽい男性にヒカルは走り寄った。

「こ、こんにちは」

俺が挨拶をすると男性はオリーブ色の目を細めて微笑んだ。

「こんにちは。珍しいね、友達と一緒だなんて」

カイルと呼ばれた男がそっとヒカルの頭を撫でるとヒカルの茶髪がぐるぐるとかき混ぜられる。
そしてカイルの指には高そうな金色のエンブレムのついた指輪がはまっていた。

「僕だって友達くらいいるよ」

ヒカルが頬を膨らませて拗ねている。







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