1 / 40
物語の始まり
1
しおりを挟む
俺の前世は至って平凡だった。
小学校、中学校、高校と地元の学校に進み、ある程度友達もいて。
大学は適当に実家から近いところに行き、就職活動も可もなく不可もい無難な地元企業の営業。
毎日残業して成績を稼いで、家に帰って寝て。
そんな繰り返し。
「レイくんは、将来何になりたいの?」
思い返しても将来の夢、といえるものは特に思いつかなかった。
周りの友達は、警察官になりたいだの医者になりたいだの。
友人たちの姿にあこがれを抱かなかったといえばウソになる。
ただ無理して夢を作り気にもなれなかった。
そんなある日、これまたありきたりにも俺は通勤途中に背中を誰かに押されて電車にはねられた。
賠償金やばいだろうな。
父さん、母さん、親不孝でごめんな。
…
そして気づいたらこの世界に転生していた。
現在5歳。
いつも二つ上の兄に虐められていた。
俺の家は子爵、兄は嫡男だからと優遇されていた。
俺はスペア扱いだ。
それを兄は程よく勘違いして俺をおもちゃ扱い。
さっきも兄に突き飛ばされて池に落ちて高熱が出た。
そのショックからなのだろうか、ふと前世のことを思い出したのだ。
苦痛しかない毎日に今世俺は飽きていた。
熱が下がり、体が動くようになると兄の目をかいくぐって屋敷の外に出た。
…
5歳児にとっては広大な庭をこえ、門の横の使用人用の扉からこっそり外に出る。
家の前の道は閑散としている。
道を挟んだ向かえは草が鬱蒼と茂っている。
「こっちはなし」
道を右から左へと眺めるとどこまでも長く繋がっているようだ。
「…右」
俺は適当に右を向いて道をまっすぐと進み始めた。
…
しばらく歩いても自分の家の塀が続くばかり。
飽きてきたころ、ようやくそれが途切れた。
そしてその先は下り坂になっている。
坂の下には馬車道が続いていて、その先には建物がたくさん建っている様子がみえる。
「よし」
ひとまず俺はそこを目指すことにした。
…
たどり着いたそこは街だった。
様々な人々が生活し、商いを営んでいる。
「見たことない果物…」
紫色のリンゴのようなものや、黄色いイチゴのようなもの、家の食卓では見たことないものばかりで新鮮だった。
肉屋や魚屋に並べられている生き物も、前世から考えると異形だった。
「おいこら、お前、今ぶつかっただろ」
「あぶねぇな、どこみて歩いてんだよ」
「へ?」
俺が振り向くと、兄と同じ年くらいの男の子二人が俺にガンを飛ばしている。
「謝れよ」
「謝れ謝れ」
二人は俺の肩を押して地面に体をたたきつける。
「ぶつかってねぇから謝らねぇよ」
俺は睨み返した。
「生意気だぞ!」
一人が殴り掛かってくる。
俺は非力だから、何もできない。
そう目を閉じて来る衝撃に備えた。
小学校、中学校、高校と地元の学校に進み、ある程度友達もいて。
大学は適当に実家から近いところに行き、就職活動も可もなく不可もい無難な地元企業の営業。
毎日残業して成績を稼いで、家に帰って寝て。
そんな繰り返し。
「レイくんは、将来何になりたいの?」
思い返しても将来の夢、といえるものは特に思いつかなかった。
周りの友達は、警察官になりたいだの医者になりたいだの。
友人たちの姿にあこがれを抱かなかったといえばウソになる。
ただ無理して夢を作り気にもなれなかった。
そんなある日、これまたありきたりにも俺は通勤途中に背中を誰かに押されて電車にはねられた。
賠償金やばいだろうな。
父さん、母さん、親不孝でごめんな。
…
そして気づいたらこの世界に転生していた。
現在5歳。
いつも二つ上の兄に虐められていた。
俺の家は子爵、兄は嫡男だからと優遇されていた。
俺はスペア扱いだ。
それを兄は程よく勘違いして俺をおもちゃ扱い。
さっきも兄に突き飛ばされて池に落ちて高熱が出た。
そのショックからなのだろうか、ふと前世のことを思い出したのだ。
苦痛しかない毎日に今世俺は飽きていた。
熱が下がり、体が動くようになると兄の目をかいくぐって屋敷の外に出た。
…
5歳児にとっては広大な庭をこえ、門の横の使用人用の扉からこっそり外に出る。
家の前の道は閑散としている。
道を挟んだ向かえは草が鬱蒼と茂っている。
「こっちはなし」
道を右から左へと眺めるとどこまでも長く繋がっているようだ。
「…右」
俺は適当に右を向いて道をまっすぐと進み始めた。
…
しばらく歩いても自分の家の塀が続くばかり。
飽きてきたころ、ようやくそれが途切れた。
そしてその先は下り坂になっている。
坂の下には馬車道が続いていて、その先には建物がたくさん建っている様子がみえる。
「よし」
ひとまず俺はそこを目指すことにした。
…
たどり着いたそこは街だった。
様々な人々が生活し、商いを営んでいる。
「見たことない果物…」
紫色のリンゴのようなものや、黄色いイチゴのようなもの、家の食卓では見たことないものばかりで新鮮だった。
肉屋や魚屋に並べられている生き物も、前世から考えると異形だった。
「おいこら、お前、今ぶつかっただろ」
「あぶねぇな、どこみて歩いてんだよ」
「へ?」
俺が振り向くと、兄と同じ年くらいの男の子二人が俺にガンを飛ばしている。
「謝れよ」
「謝れ謝れ」
二人は俺の肩を押して地面に体をたたきつける。
「ぶつかってねぇから謝らねぇよ」
俺は睨み返した。
「生意気だぞ!」
一人が殴り掛かってくる。
俺は非力だから、何もできない。
そう目を閉じて来る衝撃に備えた。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件
桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。
神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。
しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。
ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。
ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる