上 下
10 / 13

9

しおりを挟む
カイトは高校生活の最後にユウタと離れる決心をした。
大学こそは違う学校に通い、青春を取り戻すために。

そこでカイトはまずユウタの受ける大学リサーチし始めた。

「ユウタ、お前、大学どうするんだ?」

「考え中かな。とりあえず文系学部にはしようと思ってる。化学とか嫌いだし」

確かにユウタは理数系の科目が少し苦手だ。

「へぇ~そうなんだ…」

カイトは逆に理数科目が得意だったので、理系に行くことは決めていた。
この時点で学部が被ることはないと心の中でカイトはガッツポーズをする。

「カイトは?もう大学決めた?」

ユウタがカイトの顔をのぞき込んでくる。

「あ、いや、俺も考え中だけど…でも親のこと考えたら国公立かなとは思ってる」

これは本心だった。
母親に苦労をあまりかけさせたくない、と常々カイトは思っていたのだ。

「そうなんだ…でももしできたらカイトと一緒の大学に行きたいな」

ユウタはまるで太陽が反射したようなまぶしい笑顔でカイトにそう言った。
カイトはその笑みを見て思わずフリーズするのだった。



それからあっという間に二人は受験勉強で忙しくなったが、基本的には今までと変わらず一緒に行動していた。
図書館やお互いの家で一緒に勉強していた。
カイトはユウタの志望大学を模試の結果を覗き見たりしてそれとなくリサーチした。
情報をふまえてカイトは何気なくユウタが書いている大学を避けながら模試を受けたり出願をすすめていったのだった。



そしていよいよ、カイトの第一志望の大学の合格発表日がやって来た。
カイトはあまり自信がなかった。
不安にかられながら合格発表の時間が刻一刻と迫っていることを感じている、

「ほら、早く行っといで」

「へいへい…」

母親に背中を押されて家を出る。
大学までの道のりはなんだかとても長く感じた。

大学の正門をくぐると既に大勢の受験生が掲示板の前で泣いたり、笑ったりしている。

「すいません、ちょっと通してください、すいません…」

人ごみをかき分けながら掲示板の前に進む。
ポケットから受験票を取り出して自分の番号を確かめて、意を決して掲示板を見た。

「…あった、あったぁあああ!!!」

満足したカイトは人ごみを抜け出して軽快に正門に向かう。

「あれ、カイト?」

後ろからかけられた声に振り向くとそこにはユウタがいた。

「え、ユウタ!?なんでここに!?」

「第一志望校、ここだもん」

「えええええええ」

あんなにリサーチしたのに、とカイトは肩を落とす。
それをユウタは勘違いしたのか慌て始めた。

「もしかしてダメだったのか!?」

ユウタが駆け寄ってくる。

「う、ううん、受かったよ」

微笑むカイトにユウタも笑顔になった。

「やったな、学部は違うけど四年間また一緒だな」

「う、うん」

「あらカイトくんも受かったの?」

ユウタの後ろからユウタの母親が現れた。

「あ、はい」

「それじゃあ一緒にお祝いしましょうか」

「え、いいんですか?」

「もちろんよ、カイトくんのお母さんにはもう連絡したの?」

「いえ、まだです」

「早く連絡してあげなさいよ、待ってるわよきっと」

「は、はい!」

母親にカイトは慌てて連絡をした。
カイトの母親はものすごく喜んでくれて、ユウタと合同でお祝いをすることも大賛成だった。



こうしてまたユウタと一緒にいることになるカイトであった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

女装趣味がバレてイケメン優等生のオモチャになりました

都茉莉
BL
仁科幸成15歳、趣味−−女装。 うっかり女装バレし、クラスメイト・宮下秀次に脅されて、オモチャと称され振り回される日々が始まった。

理香は俺のカノジョじゃねえ

中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川パナ
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

俺にはラブラブな超絶イケメンのスパダリ彼氏がいるので、王道学園とやらに無理やり巻き込まないでくださいっ!!

しおりんごん
BL
俺の名前は 笹島 小太郎 高校2年生のちょっと激しめの甘党 顔は可もなく不可もなく、、、と思いたい 身長は170、、、行ってる、、、し ウルセェ!本人が言ってるんだからほんとなんだよ! そんな比較的どこにでもいそうな人柄の俺だが少し周りと違うことがあって、、、 それは、、、 俺には超絶ラブラブなイケメン彼氏がいるのだ!!! 容姿端麗、文武両道 金髪碧眼(ロシアの血が多く入ってるかららしい) 一つ下の学年で、通ってる高校は違うけど、一週間に一度は放課後デートを欠かさないそんなスパダリ完璧彼氏! 名前を堂坂レオンくん! 俺はレオンが大好きだし、レオンも俺が大好きで (自己肯定感が高すぎるって? 実は付き合いたての時に、なんで俺なんか、、、って1人で考えて喧嘩して 結局レオンからわからせという名のおしお、(re 、、、ま、まぁレオンからわかりやすすぎる愛情を一思いに受けてたらそりゃ自身も出るわなっていうこと!) ちょうどこの春レオンが高校に上がって、それでも変わりないラブラブな生活を送っていたんだけど なんとある日空から人が降って来て! ※ファンタジーでもなんでもなく、物理的に降って来たんだ 信じられるか?いや、信じろ 腐ってる姉さんたちが言うには、そいつはみんな大好き王道転校生! 、、、ってなんだ? 兎にも角にも、そいつが現れてから俺の高校がおかしくなってる? いやなんだよ平凡巻き込まれ役って! あーもう!そんな睨むな!牽制するな! 俺には超絶ラブラブな彼氏がいるからそっちのいざこざに巻き込まないでくださいっ!!! ※主人公は固定カプ、、、というか、初っ端から2人でイチャイチャしてるし、ずっと変わりません ※同姓同士の婚姻が認められている世界線での話です ※王道学園とはなんぞや?という人のために一応説明を載せていますが、私には文才が圧倒的に足りないのでわからないままでしたら、他の方の作品を参照していただきたいです🙇‍♀️ ※シリアスは皆無です 終始ドタバタイチャイチャラブコメディでおとどけします

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

処理中です...