12 / 13
11
しおりを挟む
苦労して実家のありがたみを感じながらもなんとか二人暮らしをしながらいよいよ大学を卒業する年になった。
卒論に追われてちょっとおかしくなったりもしながら、二人は何とか卒業要件を満たして、就活もこなして春から無事に社会人になる目途が立つ。
…
ユウタは兼ねてから大手の商社を狙っていた。
人当たりの良さとモテ具合が上手いくらいに作用して、採用通知があふれていた。
それに対してカイトはこのまま大学に残って研究を続けることも考えたが、院の学費や受験料を考えると母親への負担も自身の負担も厳しいことを悟り、泣く泣く就職の道を選んだのである。
「就活、どう?」
カイトとユウタは珍しく二人で夕食を共にする時間が取れたので、近くのファミレスに来ている。
ユウタが思いつめた様子のカイトに尋ねる。
「う~ん、中々内定もらえなくてしんどいし、やりたいことも別に思いつかないから面接も話しにくいし、ぶっちゃけもう辞めたい…」
ユウタは机の上に臥せったカイトの頭を撫でる。
「本当にしんどいなら僕が養うからやめてもいいんだよ?」
「なっ、ユウタにそんなことさせられねぇよ!」
「そう?いい案だと思ったんだけどな」
そんなこんなでようやく内定をもぎ取ったカイトも無事に就職先が決まったのだった。
…
「もう卒業だけどどうする?」
「なにが?」
二人でスーツを選んできた帰り道のことだった。
「同棲、このまま続ける?」
「俺は別にいいけど…」
カイトとしては家賃がお手頃なので助かっていた。
「最初は反対してたくせに」
「う、うるせぇ!!」
「僕も色々と助かるからしばらくお金がたまるまでは一緒に住もうか」
ユウタの何かを含んだ笑顔にカイトは違和感を覚えながらも頷くのだった。
…
やがて春が来て二人は新入社員として会社に勤め始めた。
お互いにそこそこ激務で毎日家に帰っては寝て、朝食を食べて出勤して、また帰宅しては眠っての繰り返しだった。
休日は昼間で惰眠をむざぼってだらだらと平日に後回しにしていた家事をする。
そんな日々が半年ほど続いてからようやく落ち着きを見せ始めたものの、顔を合わせたり会話をする時間が学生の頃より減ったのはお互いに感じていた。
カイトは営業職に就いていることもあり、飲み会に行く機会が格段に増えた。
飲み会の席では必ず、恋人の話になりがちだ。
話を開く限り、周りは皆恋人がいるようだ。
「俺、もしかしてこのままだと魔法使いになっちゃう…!?」
カイトの中で危機感がひっそりと募っていくのだった。
卒論に追われてちょっとおかしくなったりもしながら、二人は何とか卒業要件を満たして、就活もこなして春から無事に社会人になる目途が立つ。
…
ユウタは兼ねてから大手の商社を狙っていた。
人当たりの良さとモテ具合が上手いくらいに作用して、採用通知があふれていた。
それに対してカイトはこのまま大学に残って研究を続けることも考えたが、院の学費や受験料を考えると母親への負担も自身の負担も厳しいことを悟り、泣く泣く就職の道を選んだのである。
「就活、どう?」
カイトとユウタは珍しく二人で夕食を共にする時間が取れたので、近くのファミレスに来ている。
ユウタが思いつめた様子のカイトに尋ねる。
「う~ん、中々内定もらえなくてしんどいし、やりたいことも別に思いつかないから面接も話しにくいし、ぶっちゃけもう辞めたい…」
ユウタは机の上に臥せったカイトの頭を撫でる。
「本当にしんどいなら僕が養うからやめてもいいんだよ?」
「なっ、ユウタにそんなことさせられねぇよ!」
「そう?いい案だと思ったんだけどな」
そんなこんなでようやく内定をもぎ取ったカイトも無事に就職先が決まったのだった。
…
「もう卒業だけどどうする?」
「なにが?」
二人でスーツを選んできた帰り道のことだった。
「同棲、このまま続ける?」
「俺は別にいいけど…」
カイトとしては家賃がお手頃なので助かっていた。
「最初は反対してたくせに」
「う、うるせぇ!!」
「僕も色々と助かるからしばらくお金がたまるまでは一緒に住もうか」
ユウタの何かを含んだ笑顔にカイトは違和感を覚えながらも頷くのだった。
…
やがて春が来て二人は新入社員として会社に勤め始めた。
お互いにそこそこ激務で毎日家に帰っては寝て、朝食を食べて出勤して、また帰宅しては眠っての繰り返しだった。
休日は昼間で惰眠をむざぼってだらだらと平日に後回しにしていた家事をする。
そんな日々が半年ほど続いてからようやく落ち着きを見せ始めたものの、顔を合わせたり会話をする時間が学生の頃より減ったのはお互いに感じていた。
カイトは営業職に就いていることもあり、飲み会に行く機会が格段に増えた。
飲み会の席では必ず、恋人の話になりがちだ。
話を開く限り、周りは皆恋人がいるようだ。
「俺、もしかしてこのままだと魔法使いになっちゃう…!?」
カイトの中で危機感がひっそりと募っていくのだった。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
【完結】遍く、歪んだ花たちに。
古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。
和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。
「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」
No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。
目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件
水野七緒
BL
一見チャラそうだけど、根はマジメな男子高校生・星井夏樹。
そんな彼が、ある日、現代とよく似た「別の世界(パラレルワールド)」の夏樹と入れ替わることに。
この世界の夏樹は、浮気性な上に「妹の彼氏」とお付き合いしているようで…?
※終わり方が2種類あります。9話目から分岐します。※続編「目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件」連載中です(2022.8.14)
理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
俺にはラブラブな超絶イケメンのスパダリ彼氏がいるので、王道学園とやらに無理やり巻き込まないでくださいっ!!
しおりんごん
BL
俺の名前は 笹島 小太郎
高校2年生のちょっと激しめの甘党
顔は可もなく不可もなく、、、と思いたい
身長は170、、、行ってる、、、し
ウルセェ!本人が言ってるんだからほんとなんだよ!
そんな比較的どこにでもいそうな人柄の俺だが少し周りと違うことがあって、、、
それは、、、
俺には超絶ラブラブなイケメン彼氏がいるのだ!!!
容姿端麗、文武両道
金髪碧眼(ロシアの血が多く入ってるかららしい)
一つ下の学年で、通ってる高校は違うけど、一週間に一度は放課後デートを欠かさないそんなスパダリ完璧彼氏!
名前を堂坂レオンくん!
俺はレオンが大好きだし、レオンも俺が大好きで
(自己肯定感が高すぎるって?
実は付き合いたての時に、なんで俺なんか、、、って1人で考えて喧嘩して
結局レオンからわからせという名のおしお、(re
、、、ま、まぁレオンからわかりやすすぎる愛情を一思いに受けてたらそりゃ自身も出るわなっていうこと!)
ちょうどこの春レオンが高校に上がって、それでも変わりないラブラブな生活を送っていたんだけど
なんとある日空から人が降って来て!
※ファンタジーでもなんでもなく、物理的に降って来たんだ
信じられるか?いや、信じろ
腐ってる姉さんたちが言うには、そいつはみんな大好き王道転校生!
、、、ってなんだ?
兎にも角にも、そいつが現れてから俺の高校がおかしくなってる?
いやなんだよ平凡巻き込まれ役って!
あーもう!そんな睨むな!牽制するな!
俺には超絶ラブラブな彼氏がいるからそっちのいざこざに巻き込まないでくださいっ!!!
※主人公は固定カプ、、、というか、初っ端から2人でイチャイチャしてるし、ずっと変わりません
※同姓同士の婚姻が認められている世界線での話です
※王道学園とはなんぞや?という人のために一応説明を載せていますが、私には文才が圧倒的に足りないのでわからないままでしたら、他の方の作品を参照していただきたいです🙇♀️
※シリアスは皆無です
終始ドタバタイチャイチャラブコメディでおとどけします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる