幼馴染からの好意に気づくまでだいぶ時間がかかったある男の話

浅上秀

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カイトとユウタの関係はつかず離れずのまま、二人は同じ高校に進学した。
さすがにこの頃になると、カイトは段々と恋愛がわかってきていた。

例えば自分だけに優しくしてくれたり笑顔を見せてくれる、自分の前に来た時だけ挙動不審、メッセージアプリでのやりとりが頻繁、などなど脈あり行動と検索したらヒットしそうな行動を自分に対してしてくれるひとが現れた、とカイトが感じる機会があったのだ。

「カイトくん、週末、なんか予定ある?」

「いや、別にないけど」

「それなら一緒に映画とか見に行かない?」

「えっ?」

顔を赤くして誘ってくれる一人の生徒がいた。
クラスは今年から一緒になったのであまりカイトと面識はない。
何度かデートにも行ったし、その度にカイトはこう思った。

「あれ?もしかしてこの人、俺のこと好きなのかな?」

しかし相手は告白してくれることはなく、自分もなぜか告白するには至らなかった。
なぜか恋人になれないのだ。

ある日、部屋で一緒に定期試験の勉強をしていたユウタに尋ねてみた。

「ねぇねぇユウタ、なんで僕って恋人出来ないのかな?」

古文に出てくる儚い恋の歌を眺めながらつぶやくカイト。

「なんでだろうねぇ、こんなに良い人なのにね。他の奴らは見る目ないね。」

「そ、そこまでは言ってねぇけどよ!」

「でもまだいいんじゃないかな、焦らなくて」

ようやく恋を理解し始めたカイトを見て、こいつ気づかれないうちに囲い込んでしまおうかなと思っているユウタがいるのだった。

ユウタがカイトに恋をしていると自覚したのは幼稚園の時。
ほぼほぼ一目ぼれのようなものだった。
周囲の視線がユウタに集まるため、カイトに嫉妬するようなことは少ないが、最近はカイトを狙う虫が多くて困っている、らしい。

ユウタも実は恋人がいない。
いや彼の場合は作ろうと思えば作れるが、カイトがいるので作っていないのだ。

ではなぜユウタはカイトを恋人にしないのか。
答えは非常に簡単だ。
カイトが全く恋愛を理解しておらず、ユウタを友人としてしか認識していないからである。

幼きある日のこと、ユウタはカイトに伝えたことがある。

「カイト、好きだよ」

意を決した告白だった。

「おう、サンキュー、俺も好きだよ」

そう返してくれたカイトにユウタは飛びつきそうになった。
次の言葉を聞くまでは。

「冷ややっこと同じくらい」

冷ややっこと同じとはなんだ。
この日からユウタは恋というものをちゃんと理解したカイトと付き合いたいと思うようになったとか、ならなかったとか。



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