幼馴染からの好意に気づくまでだいぶ時間がかかったある男の話

浅上秀

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六年間の小学生時代はあっという間に過ぎていった。
小学校を卒業した二人は仲良く同じ中学校に進学したのだった。

「せーの、ユウタ先輩、がんばって~!!」

「きゃあああ!こっちみたよ!!」

「やっぱり、ユウタってかっこいいよな」

「ほんと惚れるわ」

同じバスケ部に入ったものの、練習中も試合中も注目を集めるのはユウタばかり。

「ケッ…」

カイトは少しづつユウタから距離を取るようになっていったのだ。

「あ、まだいた!カイト!一緒に帰ろう!」

着替えてロッカールームから出てきたカイトにユウタが声をかけてくる。

「やだ。お前、一緒に帰るやついっぱいいるだろ」

カイトは冷たくそう返すと昇降口に向かって歩き始める。

「いない、いないから待ってって!」

ユウタは慌ててロッカールームに駆け込んで荷物をつかむと先を行くカイトの背中を追いかけた。

「はぁ、そんなに俺と一緒に帰りたいのかよ」

「うん!カイトとじゃなきゃ一緒に帰りたくない!!」

ユウタは笑顔でそう宣言した。

「…勝手にしろ」

カイトは頬を赤らめながらそう答えた。
ぶっきらぼうだったが、ユウタにはなんだかうれしかった。



ただユウタのモテ具合は小学生の比ではなかったことはカイトに少しだけつらい経験をもたらす。

「なんでお前みたいな平凡な奴がユウタと一緒にいるんだよ」

ユウタがモテるせいで、カイトに対してやっかみが多かったのだ。
複数人に囲まれることもしばしば。

「へぇ、あんたがユウタくんに付きまとってるやつ?」

他の学校の生徒から呼び出されることもしばしば。

「そうだけど、何?」

冷たくカイトが反応しても相手は逆上して時には暴力に訴えてくることもあった。

「こいつ、生意気なんだけどっ」

「ねぇ、おまえボクのカイトに何してくれてんの?」

でもなぜか毎回、ユウタにはいっていないはずなのにその場に駆け付ける。

「ゆ、ユウタくん!?なんでここに!??」

「カイトのことは全部お見通しだから」

そういうとカイトを攻めていた相手を睨みつけて追い払う。

「なんで!なんでそんなやつと一緒にいるの?」

「そんなやつ?お前の価値観で人を判断するな、自己満足にもほどがある」

非常に冷淡かつ冷酷にユウタはカイトを囲んでいたやつの心をへし折っていく。
だがなぜかへし折ってもへし折っても次々にカイトを呼び出すやつは現れ、その度に連絡していないにもかかわらず駆けつけてくるユウタの姿にカイトが疑問を持つのも無理はなかった。

「なぁ、なんでいっつもわかんだよ」

「言っただろ?全部お見通しだって」

ユウタは毎回そうはぐらかすのだった。


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