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ここに一人の男がいる。
彼は居酒屋で何杯目かカウントするのも忘れたほど飲んだビールのジョッキを片手に管を巻いている。
「だぁああああー!なんで!俺には!恋人ができねぇんだ!!!」
ダンっと鈍い音を立てて空になったビールのジョッキが机に叩きつけられる。
「おいおい、飲みすぎだって」
さめざめと泣き始めた彼の向かい側に座っている男はとても冷静に彼の手からジョッキを取り上げる。
そしてジョッキの代わりに水の入ったグラスを握らせた。
「だってよぉ…」
すると男は水をガブガブ飲みながら再び嘆き始めた。
空のジョッキを隅によけた男はあきれ顔で眺めている。
「別にいいと思うぞ、年齢イコール恋人いない歴だとしても」
「よくねぇよ!」
彼は再び机に勢いよくグラスを叩きつけた。
今度は水がたっぷり入っていたので、びちゃりと机の上にこぼれてしまった。
「落ち着けって」
向かい側に座る男はこぼれた水を机に備え付けられた紙ナプキンで丁寧に拭っていく。
「おまえはいいよな!昔っから同性にも異性にもモテモテでよぉ!恋人途切れたとこ見たことねぇぞ…それに対して俺は…」
今度は机の上に突っ伏して号泣し始めてしまった。
「はぁ…」
紙ナプキンを端によけた男はため息をつくのだった。
…
酔うと泣き上戸になり、己の現状を嘆いているのは男の名はカイト。
今年で年は24歳になる。
彼曰く今まで生きていて一度も恋人ができたことはない、らしい。
そんな彼の向かい側に座っていてすべてを冷静に事を処理し続ける男、ユウタ。
カイトとは幼少のころからの幼馴染である。
彼は同性からも異性からもモテ続けて24年。
恋人が途切れたことはないともっぱらの噂だがその真相やいかに…。
この世界では異性だけの恋愛だけでなく、同性との恋愛、結婚も広く認められている。
それだけでなく、愛には年齢なんて関係ないと言わんばかりに年の差恋愛も推奨されている。
そのため幼いころから様々な恋愛沙汰に巻き込まれて生きている人間がほとんどだ。
幼稚園児が三角関係の修羅場、小学生が三股、中学生が…子供に限ってバイオレンスになりがちなこの世の中に生まれて荒波に飲まれる人が多い中で、これらのこととほぼほぼ無縁に生きてきたカイト。
彼自身、どうして自分に恋人ができないのかわからない。
外見もさして悪いわけでもなく、内面も優しく穏やかだ。
そう、いい意味でも悪い意味でも特徴のない男。
そしてユウタはというと修羅場に初めて巻き込まれたのは三歳のころだった。
当時の保育園の先生と園児に取り合いになった時である。
ちなみに当事者のユウタには全く修羅場の自覚はなかった。
カイトは長年、ユウタが爆裂にモテる様子を隣で観察しながら、自分の活かそうとして失敗したことしかなかった。
「なぁ、おまえ、覚えてるか?」
泣き顔を机からようやくあげたカイトがユウタに尋ねる。
「なにを?」
ユウタは机の向かい側から手を伸ばして新しい温かいおしぼりでカイトの涙をぬぐう。
「その…俺と…会った日のこと…」
カイトは顔を拭かれながらつぶやく。
「もちろん」
ユウタは笑顔で答える。
カイトはユウタの顔を眺めながらお酒も相まってぼんやりし始めた意識の中で、カイトは今までの人生を思い返していた。
彼は居酒屋で何杯目かカウントするのも忘れたほど飲んだビールのジョッキを片手に管を巻いている。
「だぁああああー!なんで!俺には!恋人ができねぇんだ!!!」
ダンっと鈍い音を立てて空になったビールのジョッキが机に叩きつけられる。
「おいおい、飲みすぎだって」
さめざめと泣き始めた彼の向かい側に座っている男はとても冷静に彼の手からジョッキを取り上げる。
そしてジョッキの代わりに水の入ったグラスを握らせた。
「だってよぉ…」
すると男は水をガブガブ飲みながら再び嘆き始めた。
空のジョッキを隅によけた男はあきれ顔で眺めている。
「別にいいと思うぞ、年齢イコール恋人いない歴だとしても」
「よくねぇよ!」
彼は再び机に勢いよくグラスを叩きつけた。
今度は水がたっぷり入っていたので、びちゃりと机の上にこぼれてしまった。
「落ち着けって」
向かい側に座る男はこぼれた水を机に備え付けられた紙ナプキンで丁寧に拭っていく。
「おまえはいいよな!昔っから同性にも異性にもモテモテでよぉ!恋人途切れたとこ見たことねぇぞ…それに対して俺は…」
今度は机の上に突っ伏して号泣し始めてしまった。
「はぁ…」
紙ナプキンを端によけた男はため息をつくのだった。
…
酔うと泣き上戸になり、己の現状を嘆いているのは男の名はカイト。
今年で年は24歳になる。
彼曰く今まで生きていて一度も恋人ができたことはない、らしい。
そんな彼の向かい側に座っていてすべてを冷静に事を処理し続ける男、ユウタ。
カイトとは幼少のころからの幼馴染である。
彼は同性からも異性からもモテ続けて24年。
恋人が途切れたことはないともっぱらの噂だがその真相やいかに…。
この世界では異性だけの恋愛だけでなく、同性との恋愛、結婚も広く認められている。
それだけでなく、愛には年齢なんて関係ないと言わんばかりに年の差恋愛も推奨されている。
そのため幼いころから様々な恋愛沙汰に巻き込まれて生きている人間がほとんどだ。
幼稚園児が三角関係の修羅場、小学生が三股、中学生が…子供に限ってバイオレンスになりがちなこの世の中に生まれて荒波に飲まれる人が多い中で、これらのこととほぼほぼ無縁に生きてきたカイト。
彼自身、どうして自分に恋人ができないのかわからない。
外見もさして悪いわけでもなく、内面も優しく穏やかだ。
そう、いい意味でも悪い意味でも特徴のない男。
そしてユウタはというと修羅場に初めて巻き込まれたのは三歳のころだった。
当時の保育園の先生と園児に取り合いになった時である。
ちなみに当事者のユウタには全く修羅場の自覚はなかった。
カイトは長年、ユウタが爆裂にモテる様子を隣で観察しながら、自分の活かそうとして失敗したことしかなかった。
「なぁ、おまえ、覚えてるか?」
泣き顔を机からようやくあげたカイトがユウタに尋ねる。
「なにを?」
ユウタは机の向かい側から手を伸ばして新しい温かいおしぼりでカイトの涙をぬぐう。
「その…俺と…会った日のこと…」
カイトは顔を拭かれながらつぶやく。
「もちろん」
ユウタは笑顔で答える。
カイトはユウタの顔を眺めながらお酒も相まってぼんやりし始めた意識の中で、カイトは今までの人生を思い返していた。
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