シャボン玉、はじけた

浅上秀

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だがりかが中学生になると二人はすれ違うことが増えてしまうのだ。
りかは女子バスケットボール部に入部し、放課後や休日は練習に励んでいた。
一方さえも、塾に通い始めたり習い事を増やしたりと多忙になっていた。



予定が中々会いにくくなってしまった二人は、以前のように一緒に遊ぶことも勉強をすることもなくなってしまった。
ただ時々、通学時間が被り、りかの通う中学校の通学路にある小学校にさえを送ってくれる時、りかは嬉々として話してくれる。

「中学校ってね、五教科に分かれてて、先生も全部違うの」

「へー」

「定期テストがあってね、順位とかも発表になるからお勉強が大変なの」

「そうなんだ」

「あと部活もあるでしょ…」

まだ小学生のさえにはそこは未知の世界だった。
話を聞くたびにさえの目は輝いていた。



実際、中学に入学するとりかは朝練や高校受験の勉強に忙しく、さえとはなかなか会えなくなってしまった。

「最近、りかちゃん忙しそうね」

さえの母もりかとすれ違い始めていることに気が付いていた。

「そう、だね…」

さえはあれほど楽しみにしていた中学生活が楽しめなくなっていた。

「中学ってつまんない」

さえにとって魅力的な部活もなければ、さえを理解してくれる友人もいない。
ひたすら毎日、さえは勉強していた。

「せめて、高校は楽しいといいな」



さえが中学に入学して二年が経った。
りかは受験に失敗してしまい、少し遠くの私立高校に通うことになったそうだ。

というのも、この頃にはさえとりかは全く会話をしなくなっていた。
そればかりかSNSや年賀状のやり取りも全く行わなくなっており、お互いの姿を見ることさえなくなってしまった。

そしてさえは毎日、寂しさを紛らわせるためにいそしんでいた勉強が功を奏し、りかが不合格になった高校に進学することになった。

「もう、戻れないのかな」






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