シャボン玉、はじけた

浅上秀

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さえとりかには本当に沢山の思い出が積もっている。
二人で遊んだ中で、さえが最もお気に入りだった遊びがある。

それはりか特製の液のしゃぼん玉を吹くことだった。
手製のためほのかに石鹸の香りがする液体を、シャボン玉を吹きやすくするために特徴的に加工したストローで吹くのだ。

「ぷっ、さえはシャボン玉吹くの下手だね」

市販のものより、シャボンが弱いのでさえが吹くとすぐに弾けてしまう。

「り、りかちゃんのイジワルっ」

さえの横でりかは涼しい顔をしてシャボン玉を作り上げていた。
りかはこのシャボン液の特徴をよくつかんでいた。
丁寧に息を吹きこみ、一度にたくさんのシャボンを空に放つ。

「もう!そんなことで泣かないでよ」

りかは袖でごしごしとさえの目元を拭った。

「さ、さえはないてないもん」

涙目になりながらさえは再びストローに息を吹きこんだ。
ゆきは決まって失敗して、謝ってシャボン液を飲み込んでしまったり、とても小さなシャボン玉しか作れないのだ。

「はいはい」

りかは呆れた顔でそんなさえの様子を見守るのであった。



ただ普通にしゃぼん玉を吹いていただけのことだったのに、市販のシャボン液から作り出されるシャボン玉とは何かが違った。
それが何か分からない幼心を胸に、二人はストローに精一杯息を吹き込んだ。







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