学校にいる人たちの卑猥な日常

浅上秀

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かなづち克服プログラム

前編

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FILE 10 三船 (外部指導コーチ)× 江川 (生徒)



「今日から夏休みだ。みんな、ハメを外しすぎないように」

終業式が終わり教室に戻っった生徒は教師のその一言を最後に一斉に座席から立ち上がった。
みんな各々の夏休みへと駆けていく。

「なぁなぁ、江川はなにすんだ?」

「俺は部活三昧だよ」

江川はため息をつくと荷物一式を持って立ち上がる。

「た、大変だな、水泳部は」

「ほんとだよ」

江川は憂鬱だった。
水泳部に加入したものの、友達付き合いの延長で入っただけのためほとんど幽霊部員のようだ。
それが6月から新しく来た外部コーチが幽霊部員を認めず、全員必ず部活動に参加することを強制し始めた。

「だるいな」

屋外にあるプールサイドも屋内にある更衣室もどちらもサウナ状態だ。
唯一の救いであるプールの中は江川にとって地獄である。
幼いころ海でおぼれた経験がありどうしても水の中には抵抗しかない。
そのため小学生のころからプール授業では仮病でさぼり続けていたのだ。
今更泳ごうとも思えないが、内申点に響くと脅されたらどうしようもない。

「それにあのコーチ…」

どうにも好きなれない。
口には出せないが、第一印象からあまりいい印象は得られなかった。

「お疲れ様です」

「江川、まじごめんな」

「いいよ」

江川を水泳部に引きずり込んだ友人がすまなそうにしている。
この学校では生徒全員が強制的に部活動に加入しなければいけないが、裏を返せば加入さえしていればいいのだ。
今ならもっと室内の文科系の部活にしておけばよかったとさえ思う。

「おーい、ウォーミングアップ始めるぞ」

「はーい」

部長の集合に部員たちがプールサイドに集まる。
軽くストレッチをしてから水の中に入る。
各々決められた本数を決められた形で泳いでいく。
江川はほぼ初心者なので端の方で顔を水につける練習からしている。

「小学生かよ、俺」

顔をあげてなら数メートル泳げるのだが。
コーチには合宿後には選手権に出られるようなレベルまで鍛え上げると言われているのだ。
勘弁してほしい。

「はぁ」

部活の時間がこんなにも憂鬱だとは思わなかった。
プールサイドに腰かけて泳いでいる部員たちを眺めながら一人時間を過ごした。



「いよいよ夏休みに入った。合宿は来週だ、各自準備は怠らないように」

「はい」

「それじゃあ、解散」

「お疲れさまでした」

ペタペタと音を立てながらシャワールームに向かう。
軽く身体を流して更衣室に向かう。
濡れた水着を何とか脱ぎ捨てタオルで身体を拭う。

「帰りにコンビニ行こうぜ」

「おう」

制服に着替えて汗臭い更衣室を出る。
蒸し暑い空気の中、友達と二人でコンビニに入ってアイスを買う。
夕食前に買い食いするなと親に言われているが、アイスは別腹だろう。

「部活やめてぇな」

友達には終ぞその言葉は言えなかった。



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