開発されに通院中

浅上秀

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初めて旅行に行きます編

9話

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「え?」

近藤が振り向くと、同じ館内着を着た後輩がいた。

「お、おお!なんでここに…?」

近藤は驚いた。

「慰安旅行ですよ!近藤さんはどうしてここに…?

彼女が上目遣いで訪ねてくる。

「あ、あぁ、まぁその…」

近藤は困り顔で真壁に囁いた。

「会社の後輩なんだけど…」

真壁は直ぐに状況を察すると営業スマイルで後輩の方を向いた。

「こんにちは。僕たちプライベートで来てるので失礼します」

「じゃぁな」

「あ、近藤さーん!宴会やってるんでよかったら来てくださいねー!」

去っていく二人の背中を後輩の声が追いかけてきた。

「誰が行くかよ…」

近藤は肩を落とした。

「はは。偶然とはいえ、旅館が被っちゃうなんてね」

真壁はポンと近藤の肩を叩いた。



部屋に戻ってくると、近藤は疲れたように床に寝そべった。

「畳って独特の良さがあるよな…」

「そうかな?」

真壁は部屋に置いてあった茶器を弄ってお茶を入れ始めた。
近藤は貴重品ロッカーからスマホを取り出して弄り始めた。

「うわ、通知やべぇ…」

「溜まってた?」

「旅行のグループ抜けときゃよかったけど、部長もいるから抜けづらいんだよ…」

「大変だな、会社って」

「まぁな…」

お茶を入れ終わった真壁はテーブルに置くと近藤の隣に腰掛けた。

「はい」

「お、ありがと」

二人でアツアツのお茶を啜る。
湯呑みをテーブルに置いた真壁が近藤に寄りかかった。

「ん?どうした?」

いつもとは違う真壁の行動に近藤は驚いた。

「いや…ちょっと嫉妬した…」

「へ?」

真壁はそのまま体育座りをすると膝に顔を埋めてしまった。

「さっきの子さぁ…」

「あぁあいつか?」

「うん、絶対、猛のこと好きだよね…」

「は!?なんでだよ!ただの後輩だぞ!?」

真壁はちょっとだけ膝から顔を上げた。

「話してる時の表情かなぁ」

「いやいや、それはないって!」

近藤は否定しながら、あの飲み会の日のことを思い出してしまっていた。

「あんな可愛い子が職場にいたらそっち行っちゃわないかな~って」

「それはねぇーよ!」

近藤は必死に否定する。

「ほんと…?」

「あぁ、ほんとだ。第一、俺は男しか好きになれねぇし…それに俺だって嫉妬するよ」

「へ?」

真壁は膝から顔を上げた。
近藤は手元の湯飲みに視線を落としながら続けた。

「俺だって看護師さんとか…いいなって、いつも一緒にいられて羨ましいと思うよ…この前の出張の時とかさ」

近藤は湯呑みの中のお茶をグイッと飲み干した。

「…そんなこと思ってたんだ。嬉しい!」

真壁は俄然、機嫌が良くなり、近藤に抱きついたのだった。








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