おじさんとボク

浅上秀

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傷心中のデート

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ミノルくんは先生の一件から「おじさん」という存在が少し苦手になっていた。
どうしてあんなに酷い目に合わねばならなかったのか、自問自答の日々を過ごしていた。
実家から帰ってからあまり外に出ることもなくなっている。

「あ、スグルくんからだ」

そんな時、スグルくんからお誘いの連絡が来た。

「スグルくんもこっちに来てるんだ。明日のお昼会おう、か」

ミノルくんは悩んだがすぐに答えは出た。

「スグルくんなら僕にひどいことはしないよね」

ミノルくんは了解の返信をするのだった。



翌日の昼頃、ミノルくんの実家にスポーツカーで乗り付けたスグルくんをみてミノルくんの父親は腰を抜かしていた。
颯爽と降りてきたスグルくんは白いタートルネックのニットにダークグレーのスラックスを合わせていておしゃれだった。

「おまえ、いつの間に」

それに対して家から出てきたミノルくんの父はいかにも休日のお父さんともいえる草臥れたポロシャツに少し色の褪せたチノパンツを履いていた。

「やっぱりスグルくんってかっこいいんだなぁ」

失礼にも自分の父親とスグルくんを見比べてミノルくんは呟いた。

「海外でちょっと儲かってさ。それより久しぶりに甥っ子と遊べるんだから兄さんはあっち行って。あ、義姉さんこれお土産ね。さぁミノルくん行こうか」

「うん、いってきます」

笑顔で手を振るミノルくんの母と顎が外れそうなくらいスグルの車に驚いている父を横目にミノルくんはスグルくんの車の助手席に座る。

「シートベルトした?」

「うん、大丈夫」

「それじゃあ出発」
派手な排気音とともに車が動き出す。
あっという間にミノルくんの家は見えなくなった。

「スグルくん、今日はどこに行くの?」

「知り合いが新しくお店をオープンしたらしくて一度来てほしいって言われてたんだ。近くだしせっかくだったら若い人も一緒の方がいいかと思って」

「え、スグルくんだって十分若いよ」

「ありがとうミノルくん」

10分ほど車を走らせたところにそのお店あった。
駐車場にスマートにスグルくんが車を停める。

「ねぇスグルくん、ここものすごく高そうだよ」

清楚で厳かなお店の外装を見たミノルくんは車から降りれなかった。

「ははは、そんなことないよ。怖くないから降りておいで」

先にスグルくんは車から降りてしまった。
ドレスコードもありそうなお店にミノルくんは自分の服装を見直す。
母親が買ってくれた紺色で胸元にワンポイントあるポロシャツに白っぽい色のチノパンツ、腰には黒色のベルトをしている。

「ううっ、絶対高いお店だよぉ」

「ほら早く」

うじうじしているとスグルくんは助手席の扉を開けてしまった。

「降りるよぉ」

ミノルくんは握りしめていたシートベルトを外すとため息交じりに車から降りる。

「さてお手をどうぞ」

エスコートしてくれそうな勢いのスグルくんをしり目にミノルくんはお店のエントランスに向かって歩き始めた。
ミノルくんの後ろ姿を愛おしそうに眺めながらスグルくんもすぐにその後ろを歩いていく。


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