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憧れの遊園地デート
駆け足の帰り道
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「今日は本当にありがとうございました」
閉園のアナウンスが流れる中、二人でメインストリートを歩く。
ミノルくんも手にも「おじさん」の手にも、園内のお土産店の紙袋が握られている。
「いやいや、こちらこそ。ありがとう」
「おじさん」はじんわりと心の中が温まった気がしていた。
遠い昔に無くしてしまった家族との思い出のかけらを取り戻した気がしたのだ。
「ふふ、また来たいです」
大きな門を潜り抜け、振り向いた遊園地に向かってミノルくんがそうつぶやく。
「次は恋人と行ってみるといいよ」
「恋人ですか?」
ミノルくんのきょとんとした眼差しに「おじさん」は昔、妻と二人きりで来たことをミノルくんに話して聞かせる。
「妻との初めてのデートで来たときにね、色々と素敵な思い出をもらったんだ。だから子供が大きくなったらまた来ようって子供を連れてったんだけど…」
「おじさん」は話しながら遊園地から足が動かなくなってしまっていた。
「大丈夫ですか?電車、そろそろ来ちゃいますよ?」
遊園地駅が始発駅になっている電車は終電時間が早い。
腕時計を確認するとあと数分で終電が来てしまう。
「たたた、大変だ!急ごうか!」
二人は紙袋をガサガサ言わせながら改札へと走った。
…
「ふぅ」
「間に合ってよかったですね」
なんとか二人掛けの空いている席に滑り込んだ。
車窓からは落ちていく日の中に遊園地の後ろ姿が見える。
「楽しかったかな?」
窓の外を眺めるミノルくんに「おじさん」は尋ねる。
「はい!もちろんです!」
振り返ったミノルくんの笑顔は今日一番輝いていた。
目的の駅に着くまでの間、「おじさん」が今日撮ったミノルくんの写真を一緒に眺めながら二人で一日を振り返る。
「どのアトラクションが一番好き?」
「う~ん、決められないです…」
「おじさん」のカメラをのぞき込みながらミノルくんは答える。
「そうかいそうかい」
「おじさん」がカメラのボタンを押すたびに、ミノルくんの知らないミノルくんの表情がどんどん映し出される。
「僕、こんな顔してるんですね…」
笑顔だったり、困り顔だったり、ミノルくんの自然の表情がそこにはたくさん映し出されていた。
「はは、気に入ったのかな?後で送っておくね」
「はい!ありがとうございます!お写真撮るのお上手なんですね」
ピントがぶれたり、被写体がそれている写真がひとつもない。
「あぁ、昔からよく家族でどこか行くたびにカメラマンをしていたからかな」
「そうなんですか!じゃあ僕もカメラマンさんやってみてもいいですか?」
そういうとミノルくんは「おじさん」のカメラを拝借する。
「えへへ、ハイチーズ」
何枚かたて続けに写真を撮ったようで、シャッター音が連続して聞こえる。
「あ、あれぇ?ぶれちゃってる…」
確認するとやっぱりて慣れていないせいか、電車の揺れに負けてぶれている写真が多かった。
「でも撮ってくれて嬉しいよ。被写体なんてやったの何年ぶりかなぁ」
「おじさん」はミノルくんの撮ったぶれた写真も喜んでくれた。
…
あっという間にお別れの時間になってしまった。
「また、どこか行こうね」
「はい、ぜひ!」
ブンブンと手を振って離れていくミノルくんの後ろ姿を最後に一枚、カメラに収める。
自宅に向かって歩き始めた「おじさん」の携帯にメッセージが送られてきた。
「今日のお礼ですって、ミノルくんメール打つの早いなぁ」
開いてみると画像が添付されていた。
「…ははは、俺ってこんな顔で笑ってるのか」
それは「おじさん」が家族の話をしていた時にミノルくんが携帯でこっそり撮った写真だった。
「久しぶりに家族旅行でも提案してみるか」
いつもは憂鬱な自宅への帰り道が少し軽やかになった「おじさん」なのであった。
閉園のアナウンスが流れる中、二人でメインストリートを歩く。
ミノルくんも手にも「おじさん」の手にも、園内のお土産店の紙袋が握られている。
「いやいや、こちらこそ。ありがとう」
「おじさん」はじんわりと心の中が温まった気がしていた。
遠い昔に無くしてしまった家族との思い出のかけらを取り戻した気がしたのだ。
「ふふ、また来たいです」
大きな門を潜り抜け、振り向いた遊園地に向かってミノルくんがそうつぶやく。
「次は恋人と行ってみるといいよ」
「恋人ですか?」
ミノルくんのきょとんとした眼差しに「おじさん」は昔、妻と二人きりで来たことをミノルくんに話して聞かせる。
「妻との初めてのデートで来たときにね、色々と素敵な思い出をもらったんだ。だから子供が大きくなったらまた来ようって子供を連れてったんだけど…」
「おじさん」は話しながら遊園地から足が動かなくなってしまっていた。
「大丈夫ですか?電車、そろそろ来ちゃいますよ?」
遊園地駅が始発駅になっている電車は終電時間が早い。
腕時計を確認するとあと数分で終電が来てしまう。
「たたた、大変だ!急ごうか!」
二人は紙袋をガサガサ言わせながら改札へと走った。
…
「ふぅ」
「間に合ってよかったですね」
なんとか二人掛けの空いている席に滑り込んだ。
車窓からは落ちていく日の中に遊園地の後ろ姿が見える。
「楽しかったかな?」
窓の外を眺めるミノルくんに「おじさん」は尋ねる。
「はい!もちろんです!」
振り返ったミノルくんの笑顔は今日一番輝いていた。
目的の駅に着くまでの間、「おじさん」が今日撮ったミノルくんの写真を一緒に眺めながら二人で一日を振り返る。
「どのアトラクションが一番好き?」
「う~ん、決められないです…」
「おじさん」のカメラをのぞき込みながらミノルくんは答える。
「そうかいそうかい」
「おじさん」がカメラのボタンを押すたびに、ミノルくんの知らないミノルくんの表情がどんどん映し出される。
「僕、こんな顔してるんですね…」
笑顔だったり、困り顔だったり、ミノルくんの自然の表情がそこにはたくさん映し出されていた。
「はは、気に入ったのかな?後で送っておくね」
「はい!ありがとうございます!お写真撮るのお上手なんですね」
ピントがぶれたり、被写体がそれている写真がひとつもない。
「あぁ、昔からよく家族でどこか行くたびにカメラマンをしていたからかな」
「そうなんですか!じゃあ僕もカメラマンさんやってみてもいいですか?」
そういうとミノルくんは「おじさん」のカメラを拝借する。
「えへへ、ハイチーズ」
何枚かたて続けに写真を撮ったようで、シャッター音が連続して聞こえる。
「あ、あれぇ?ぶれちゃってる…」
確認するとやっぱりて慣れていないせいか、電車の揺れに負けてぶれている写真が多かった。
「でも撮ってくれて嬉しいよ。被写体なんてやったの何年ぶりかなぁ」
「おじさん」はミノルくんの撮ったぶれた写真も喜んでくれた。
…
あっという間にお別れの時間になってしまった。
「また、どこか行こうね」
「はい、ぜひ!」
ブンブンと手を振って離れていくミノルくんの後ろ姿を最後に一枚、カメラに収める。
自宅に向かって歩き始めた「おじさん」の携帯にメッセージが送られてきた。
「今日のお礼ですって、ミノルくんメール打つの早いなぁ」
開いてみると画像が添付されていた。
「…ははは、俺ってこんな顔で笑ってるのか」
それは「おじさん」が家族の話をしていた時にミノルくんが携帯でこっそり撮った写真だった。
「久しぶりに家族旅行でも提案してみるか」
いつもは憂鬱な自宅への帰り道が少し軽やかになった「おじさん」なのであった。
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