おじさんとボク

浅上秀

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憧れの遊園地デート

お化け屋敷なんて怖くない

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腹ごしらえが済んだ二人はお化け屋敷に向かった。

「これがお化け屋敷ですか?」

和風でおどろおどろしい雰囲気の建物を前にしてもミノルくんはわくわくした様子だ。
それに対して「おじさん」はもはやあきらめの表情を浮かべている。
とりあえず楽しそうにはしゃいでいるミノルくんの姿を何枚かカメラにおさめた。

「お化け屋敷って書いてあるね」

血濡れの文字でデカデカとお化け屋敷と書かれた看板を見て「おじさん」はため息をついた。

「入りましょう!!」

ミノルくんはグイグイと「おじさん」の腕を引っ張る。

「あ、あぁ…」



二人がお化け屋敷の中に入って数分後。

「ぎぃやああああ!」

お化け屋敷の出口から悲鳴を上げながら「おじさん」が飛び出してくる。
そのままベンチに倒れこんだ「おじさん」は先ほどまでの恐怖を思い出さないように目をつぶっている。

「あははは、面白かったです!!!」

その後ろからケタケタと悪魔のような笑い声をあげながらミノルくんが出てきた。
「おじさん」はミノルくんのことを非常におびえた目をしてみている。

「み、ミノルくんには怖いものないのかい?」

「怖いものですか?うーん…思い浮かばないです」

ミノルくんはちんまりと「おじさん」の横に腰かける。

「お化け屋敷、怖くなかったの?」

「はい、だいたいここら辺にいそうだなぁって予想できちゃったので全然」

「おじさん」はミノルくんを畏敬の念を込めた目でみた。

「かぁ…すごいなぁ、近頃の若者は…」

「お子さんたちとは来られなかったんですか?」

ミノルくんの何気ない質問に「おじさん」は目を見張った。

「う、うん…子供たちはまだ小さかったからね、メリーゴーランドとかは乗ったかな。あとコーヒーカップも。」

「そうだんたんですか」

ミノルくんは今日乗ったアトラクションを思い浮かべる。

「ただ嫁はそういうアトラクションが苦手でね。子供たちにせがまれて乗る度に降りてからトイレに駆け込んで吐いてたな」

「おじさん」は懐かしそうに目を細めている。

「いい家族さんなんですね」

ミノルくんもニコニコして「おじさん」の思い出話に耳を傾けている。



そうしてベンチでくつろいでいた二人に着ぐるみがテコテコと近づいてきた。

「わぁ!着ぐるみさんだ!」

ミノルくんがベンチから立ち上がって駆け寄る。
「おじさん」はベンチに座りながら着ぐるみと戯れるミノルくんの写真を撮っていた。

「これ、くれるんですか?ありがとう!」

ミノルくんと着ぐるみがハグをする。
「おじさん」はシャッターチャンスとばかりに何枚も写真を撮った。

「風船、いただいてしまいました!」

ベンチに戻ってきたミノルくんの手には赤い風船が握られていた。
その表情に懐かしさを覚えた「おじさん」はシャッターを切る手が止まらなかったそうだ。


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