おじさんとボク

浅上秀

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初デートは映画館

待ち合わせ

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土曜日の午前10時。
駅前の待ち合わせの目印にされがちな石のモニュメントの周りには多くの人が己の待ち人を待っている。

「えっと、目印に水玉のシャツを着てきました、っと。石の近くは人が多いので、少し離れた時計の下にいます、これでわかるかなぁ」

今日はミノルくんが男性専門のマッチングアプリで先日、初めてマッチした人とご対面する日だ。
いわゆる初デート。
せっせと待ち人にメッセージを送りながらその訪れを待っている。

「あー、もしかして、君がミノルくん?」

「はい!」

ミノルくんがその声に振り向くとアロハシャツに白いパンツ、日焼けしていて黒い肌にワイルドなおひげが特徴の男性がたっていた。
夏が似合いそうな「おじさん」だ。

「今日はよろしくお願いします!」

「よろしくね」

ニカっと笑った「おじさん」の白い歯がまぶしかった。

隣に立って歩き始めると、170cmのミノルくんとあまり背丈が変わらないことに気づいた。

「あの、今日はどちらに?」

行き先などは全く決めていたなかった。

「そうだなぁ…とりあえず映画でも見て美味しいものでも食べようか」

「おじさん」はそういうと近くのスマホで映画館を探し始めた。

「は、はい!」

「ミノルくんは普段映画とか見る?」

「あんまり見ないです…」

「へぇそうなんだ。最後に見たのいつ?」

「えぇ…小学生のころにド●●もんを見に行った時かな…」

「え、そんなに!?」

「おじさん」は大きな声と共にこぼれそうなくらい目を見開いて驚いている。
ミノルくんは「おじさん」あるある大きめなリアクションを間近で体感できたからか謎の感動を覚えていた。

「は、はい。金曜ロー●ショーとかテレビで見たりはするんですけど、映画館にはなかなか来ないです…」

「そうなんだ…やっぱり若い子ってあんまり映画館に来ないのかなぁ。俺はさ、暇さえあればいつでも来ちゃうわけ、だから予告とか見飽きちゃってるよ」

「そんなに来られてるんですか!?すごいです!!」

「いやいやそこまででもないよ~」

ミノルくんがキラキラと尊敬のまなざしを送っている間に「おじさん」は見る映画を選んだようだ。

「ミノルくん、今流行ってるらしいからこの映画にしない?」

「ゴ●ラですか?たくさん映画ご覧になってるみたいだからもっとマイナーな作品にされるのかと思いましたぁ!」

嫌味なしにミノルくんがそういうと「おじさん」は後ろ頭をかきながら答えた。

「若い子と話題を共有するためにも見ておきたくてさ」

「なるほど!」

「おじさん」は話題を切り上げるとサクサクっとネットで二人分のチケットを取ってくれた。

「それじゃあ行こうか」

「はい!」





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