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気づかれてると思っていない二人
3話
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時間が過ぎるのはすぐだった。
テーブルの上の飲みかけのビールのジョッキを肘で倒して床にビールをまき散らした人がいたのでそろそろお開きにしようという流れになったのだ。
締めの挨拶に会計を終えて全員が店を出るころには何人かは足元がおぼつかないようでフラフラしている。
「二次会行く人こっちでーす」
俺は一瞬悩んだが、二次会に行く人のメンツをみて速やかに駅の方に足を向けた。
あれはダメだ、明日の昼間で潰されてしまう。
二次会に行かない人たちの中にはやはり店長とコーチもいた。
…
店長はかなり飲んだのか一人では立っていられないようだ。
その店長に肩を貸しながらコーチは歩き始めていた。
「コーチ、大丈夫ですか?俺、タクシー呼んできましょうか?」
「あぁ、頼めるかな」
声をかけた俺の様子にコーチは驚いていた。
店長は目をつぶったまま赤い顔をしている。
「向こうの道、けっこう広い通りなのでゆっくり来てください」
俺は先にその道に向かって早歩きで向かった。
すぐにタクシーを捕まえられた。
二人がかりで店長を抱えてタクシーに乗せる。
「ありがとう、助かったよ」
店長の隣に乗り込んだコーチが扉を閉める前に俺にお礼を言ってくれた。
「いえいえ…送り狼にならないでくださいね」
俺ができたのはそのセリフを伝えるくらいだった。
扉が閉まる瞬間、聞こえるか聞こえないかギリギリの声量で言ったがコーチには聞こえていたようである。
彼は一瞬、目を大きく見開いた。
「よし」
してやったり。
俺はタクシーを見送り、駅まで向かったのだった。
…
次の日、店長は頭だけでなく腰も痛そうだった。
コーチに隙がなくなったおかげか、あの日から安心して二人を見守れるようになった気がする。
容易に二人きりにならないとか、倉庫に籠らないとか、少しのことであるが見かける回数は格段に減ったと思う。
たまに俺と三人になった時だけ少し甘めのオーラでいちゃつき始めるのだけは遠慮してほしいが。
ただしまた一つ、困ったことができた。
俺が店長のことを好きだとコーチに思われているのか、なんだか店長に近づきにくくなった。
店長も微妙に俺のことを避けるし、コーチは店長と俺がいると割り込んでくる。
頼むから聞いてくれ。
俺は別に店長のことを尊敬してはいるが、そういった意味で好きなわけではない。
ただ危機感のない二人を見守る大変さを知ってほしいだけなのだ、と。
とりあえずどちらかが転勤になるか、俺が辞めるまではこの秘密の恋人たちを見守らせてほしい。
テーブルの上の飲みかけのビールのジョッキを肘で倒して床にビールをまき散らした人がいたのでそろそろお開きにしようという流れになったのだ。
締めの挨拶に会計を終えて全員が店を出るころには何人かは足元がおぼつかないようでフラフラしている。
「二次会行く人こっちでーす」
俺は一瞬悩んだが、二次会に行く人のメンツをみて速やかに駅の方に足を向けた。
あれはダメだ、明日の昼間で潰されてしまう。
二次会に行かない人たちの中にはやはり店長とコーチもいた。
…
店長はかなり飲んだのか一人では立っていられないようだ。
その店長に肩を貸しながらコーチは歩き始めていた。
「コーチ、大丈夫ですか?俺、タクシー呼んできましょうか?」
「あぁ、頼めるかな」
声をかけた俺の様子にコーチは驚いていた。
店長は目をつぶったまま赤い顔をしている。
「向こうの道、けっこう広い通りなのでゆっくり来てください」
俺は先にその道に向かって早歩きで向かった。
すぐにタクシーを捕まえられた。
二人がかりで店長を抱えてタクシーに乗せる。
「ありがとう、助かったよ」
店長の隣に乗り込んだコーチが扉を閉める前に俺にお礼を言ってくれた。
「いえいえ…送り狼にならないでくださいね」
俺ができたのはそのセリフを伝えるくらいだった。
扉が閉まる瞬間、聞こえるか聞こえないかギリギリの声量で言ったがコーチには聞こえていたようである。
彼は一瞬、目を大きく見開いた。
「よし」
してやったり。
俺はタクシーを見送り、駅まで向かったのだった。
…
次の日、店長は頭だけでなく腰も痛そうだった。
コーチに隙がなくなったおかげか、あの日から安心して二人を見守れるようになった気がする。
容易に二人きりにならないとか、倉庫に籠らないとか、少しのことであるが見かける回数は格段に減ったと思う。
たまに俺と三人になった時だけ少し甘めのオーラでいちゃつき始めるのだけは遠慮してほしいが。
ただしまた一つ、困ったことができた。
俺が店長のことを好きだとコーチに思われているのか、なんだか店長に近づきにくくなった。
店長も微妙に俺のことを避けるし、コーチは店長と俺がいると割り込んでくる。
頼むから聞いてくれ。
俺は別に店長のことを尊敬してはいるが、そういった意味で好きなわけではない。
ただ危機感のない二人を見守る大変さを知ってほしいだけなのだ、と。
とりあえずどちらかが転勤になるか、俺が辞めるまではこの秘密の恋人たちを見守らせてほしい。
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