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気づかれてると思っていない二人

1話

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一年とはあっという間に回るものである。
気が付いたら年末になり、歳末セールと年始の準備に追われていた。

「夜間の棚卸入れるかな?」

「あ、はい!」

軽々しく返事をしまったのが間違いだった。
俺は眠い目をこすりながら倉庫の商品を一つ一つスキャンして在庫と照らし合わせていた。

「いつ終わりますかねぇ」

俺以外に二人、残っているものの一人はパソコンとにらめっこ、もう一人は俺と二手に分かれて倉庫の在庫を洗っているが果てしない量に絶望しかけていた。

「終わらない気しかしない」

俺が言い切ると乾いた笑いが積み重なった段ボールの奥の方から聞こえてくる。

「売り場のもあるんですよね」

「うわ、せっかく忘れてたのに…」

二人で呪詛のように文句を唱えながらスキャンを続ける。
時計は午前二時を示している。

「お~い、そろそろ休憩にするか」

パソコン作業が一段落したのか呼びに来てくれた。

「は~い」

俺ともう一人は今の作業に目印をつけてから倉庫を出た。
休憩室で三人それぞれがもちよったコンビニのお菓子やパンを貪る。

「疲れた。明日、特別休じゃなかったら絶対サボってましたよ」

「ほんときついよな」

「てか店長もずるくないか?」

「え、どうしたんですか」

店長というワードになぜか俺は反応してしまった。

「いつもなら店長も残ってくれてたんだけど、コーチと予定があるとかで今日は来なかったんだよ。あれはコーチと予定があるという名のサボリだな」

「店長に限ってそりゃないでしょ。最近、コーチとめっちゃ仲良いから本当に本部で予定があるとかかもですよ」

「そうですよ!」

そこで俺はふと気づいてしまった。
もしかして店長もコーチも俺が二人の関係性に気づいていること、身近に二人の関係を知っている人がいることを全く知らないのではないか、と。
休憩を終えてから作業に戻った俺は作業しながら必死で考えた。
どうやって二人に俺はさりげなく二人の関係を知っているが、もっとウォッチング物件として安心して見守れるようにしてくれるように忠告できるかを。

「おーい、寝るなよ」

「あ、やっべ。落ちかけてた」

もう一人が船を漕ぎかけたのでたたき起こしながらも作業も進み、日が昇るころには三人とも作業を終えていた。



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