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気づいてしまってから
3話
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さすが敏腕と名高いコーチである。
コーチが店に来てから売り場になんだか一体感が生まれる。
なんとなくだが業務がやりやすくなり、レジ列や売り場もそのおかげか先ほどよりは落ち着きを見せ始めている。
「閉店のお時間です。またのご来店、心よりお待ち申し上げております」
閉店のアナウンスと共にお客さんの波が引いていく。
スタッフは急いで明日の開店の為に品出しや片付けに走り回り始める。
「ありがとうございました!」
最後の客を見送り、一連の作業が終わるとスタッフは全員スタッフルームで椅子に座り込んだ。
「やばい、めっちゃ疲れた…」
俺も慣れない店舗での勤務だっただけでなく、いつもの倍以上の客の人数を相手にしたため疲労感が半端じゃなかった。
「いやぁ、今日は本当にお疲れ様でした。明日、大丈夫な人はこれから飲みにでも行こうか」
この店の店長さんが呼びかけてくれる。
俺は別の店舗の人間だからとお断りした。
「コーチもいかがですか?」
店長は帰り支度を始めているコーチに声をかけた。
「いえ、私も今日はお暇させていただきます」
「そ、そうですか、残念だなぁ」
そういう店長さんの顔は全く持って残念そうではなかった。
…
「お疲れ様です」
荷物をもって一人でスタッフルームを出る。
社員専用の通用口から外に出ると冷たい夜空が俺を迎えてくれた。
とぼとぼと駅に向かって歩き始める。
すると一台の車とすれ違った。
「ん?」
その車は社員通用口の前で止まった。
すると通用口から出てきたコーチがその車に乗り込む。
「ま、まさか…」
目を凝らすと運転席にはうちの店の店長がいた。
「おいおい、まじかよ!」
他のスタッフさんたちだって帰りかけているので、絶対にこの車とすれ違う。
その時に仲睦まじくしている二人を観たら…。
俺の中に謎の緊張が走る。
「勘弁してくれよ…」
俺が頭を抱えているうちにさっそうと車は駅とは逆方向へと走り去っていった。
俺以外のスタッフはまだ店から出てきていないようで、店長とコーチの相乗りを見たのは幸いにも俺だけだったようだ。
「二人とももっとなんかこう、危機感を持ってくれよ…」
更に疲れた俺は駅から電車に乗るのをあきらめてタクシーを拾うのだった。
コーチが店に来てから売り場になんだか一体感が生まれる。
なんとなくだが業務がやりやすくなり、レジ列や売り場もそのおかげか先ほどよりは落ち着きを見せ始めている。
「閉店のお時間です。またのご来店、心よりお待ち申し上げております」
閉店のアナウンスと共にお客さんの波が引いていく。
スタッフは急いで明日の開店の為に品出しや片付けに走り回り始める。
「ありがとうございました!」
最後の客を見送り、一連の作業が終わるとスタッフは全員スタッフルームで椅子に座り込んだ。
「やばい、めっちゃ疲れた…」
俺も慣れない店舗での勤務だっただけでなく、いつもの倍以上の客の人数を相手にしたため疲労感が半端じゃなかった。
「いやぁ、今日は本当にお疲れ様でした。明日、大丈夫な人はこれから飲みにでも行こうか」
この店の店長さんが呼びかけてくれる。
俺は別の店舗の人間だからとお断りした。
「コーチもいかがですか?」
店長は帰り支度を始めているコーチに声をかけた。
「いえ、私も今日はお暇させていただきます」
「そ、そうですか、残念だなぁ」
そういう店長さんの顔は全く持って残念そうではなかった。
…
「お疲れ様です」
荷物をもって一人でスタッフルームを出る。
社員専用の通用口から外に出ると冷たい夜空が俺を迎えてくれた。
とぼとぼと駅に向かって歩き始める。
すると一台の車とすれ違った。
「ん?」
その車は社員通用口の前で止まった。
すると通用口から出てきたコーチがその車に乗り込む。
「ま、まさか…」
目を凝らすと運転席にはうちの店の店長がいた。
「おいおい、まじかよ!」
他のスタッフさんたちだって帰りかけているので、絶対にこの車とすれ違う。
その時に仲睦まじくしている二人を観たら…。
俺の中に謎の緊張が走る。
「勘弁してくれよ…」
俺が頭を抱えているうちにさっそうと車は駅とは逆方向へと走り去っていった。
俺以外のスタッフはまだ店から出てきていないようで、店長とコーチの相乗りを見たのは幸いにも俺だけだったようだ。
「二人とももっとなんかこう、危機感を持ってくれよ…」
更に疲れた俺は駅から電車に乗るのをあきらめてタクシーを拾うのだった。
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