モブな俺は秘密の恋人たちを見守ってます

浅上秀

文字の大きさ
上 下
8 / 14
気づいてしまってから

1話

しおりを挟む
気づいてしまってから俺は、俺以外に二人の関係が知られて最悪の状況に陥った時のことを想像するようになってしまっていた。

「当事者でもないのになんで俺がこんなに気をもまなきゃいけないんだ…」

コーチは他のエリアや店舗も管理しているので毎日店に来るわけではない。
仮にコーチが来店したとしても二人がよく一緒にいたところで、業務上ありえないことではない。

「にしてもだよな…」

俺は二人で密室にこもる頻度が高いことにも気づいてしまった。
さすがに業務中にそんなこと…とは思った。

「最近よく店長室のカギ閉まってるよな」

何気なく聞こえた他のスタッフの声にドキリする。
するともう一人いた別のスタッフが答えた。

「あー、なんか本社で進めてる新規プロジェクトの実証実験をうちのお店でやるらしくて、その打ち合わせなんだって」

「おまえなんでそんなこと知ってるんだよ」

それは俺も思った。

「え、秘密」

そしてこの会話を聞いて少しほっとしてしまった自分にも驚いた。
なぜ俺はこんなにも安堵しているのだろうか。

「倉庫にもよく二人で籠ってるのもそのせい?」

そうだ、店長室はパソコンやら資料やらがあるから会議のために籠るのはわかる。
でもなんで倉庫に行く必要が…。

「あそこ防音ばっちりだから機密情報漏れないものね」

うん、防音ばっちりという情報はあまり聞きたくなかったかもしれなかった。



このように日々俺の頭を悩ませる二人だが、決定的に二人が付き合っているという場面に遭遇していないのではないか、という疑問にたどり着いてしまった。
見てやっぱり、と思いたい反面、見たくない気もしている。

これ以上踏み込みたくないが、気になる。

人間心理とはいかに矛盾したものであることよ…。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

PMに恋したら

秋葉なな
恋愛
高校生だった私を助けてくれた憧れの警察官に再会した。 「君みたいな子、一度会ったら忘れないのに思い出せないや」 そう言って強引に触れてくる彼は記憶の彼とは正反対。 「キスをしたら思い出すかもしれないよ」 こんなにも意地悪く囁くような人だとは思わなかった……。 人生迷子OL × PM(警察官) 「君の前ではヒーローでいたい。そうあり続けるよ」 本当のあなたはどんな男なのですか? ※実在の人物、事件、事故、公的機関とは一切関係ありません 表紙:Picrewの「JPメーカー」で作成しました。 https://picrew.me/share?cd=z4Dudtx6JJ

逃げるが勝ち

うりぼう
BL
美形強面×眼鏡地味 ひょんなことがきっかけで知り合った二人。 全力で追いかける強面春日と全力で逃げる地味眼鏡秋吉の攻防。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

俺の推し♂が路頭に迷っていたので

木野 章
BL
️アフターストーリーは中途半端ですが、本編は完結しております(何処かでまた書き直すつもりです) どこにでも居る冴えない男 左江内 巨輝(さえない おおき)は 地下アイドルグループ『wedge stone』のメンバーである琥珀の熱烈なファンであった。 しかしある日、グループのメンバー数人が大炎上してしまい、その流れで解散となってしまった… 推しを失ってしまった左江内は抜け殻のように日々を過ごしていたのだが…???

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした

たっこ
BL
【加筆修正済】  7話完結の短編です。  中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。  二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。 「優、迎えに来たぞ」  でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。  

僕の部下がかわいくて仕方ない

まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?

処理中です...