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秘密の二人の関係に気づくまで
7話
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「おはようございます」
「おはよう」
先輩がコーヒー片手に休憩室で資料を読み込んでいた。
「新作出るんですか?」
「みたいだな」
大型タイアップが決まったと先日、津うだつが出ていた記憶を引っ張り出す。
先輩から資料を借りて読んでいたら店長が慌ただしく休憩室に駆け込んできた。
「みんな悪い、遅くなった」
「え?今日店長出勤遅番でしたよね?」
現在は八時、遅番の場合は十一時半に出勤することになっている。
「あ、あれ?そうだっけ?」
店長はシフト表をつかんで睨むように見ている。
「店長らしくないですね」
寝癖がところどころ跳ねているだけでなく、シャツの襟がよれいてる。
「くっそ、あいつ…」
小さい声で店長が悪態をついた。
「あいつ…?」
たぶん聞き取れたのはせいぜい近くにいた俺くらいだったのだろう。
「あ、いやなんでもない」
店長は首を振ると寝癖を手でさっと直す。
「まぁ来ちまったものはしょうがないから今日は早番で出るわ」
「大丈夫じゃないですか、今日は遅番に鍵持って帰られる人多いですし」
店のカギは二本ある。
それを店長や副店長、店長の代理になれるくらい昇格した社員などで当番のようにかけているのだ。
「助かる」
店長はシャツの襟を正すとそのまま店長室に入っていった。
しかし俺はシャツの隙間から見てはいけないものを見てしまった。
「…あれ、絶対そうだよな」
ちらりとシャツの隙間から見えた店長の肌に色濃く残った唇のあと。
それは業務中に俺の脳裏から離れなかった。
「勘弁してくれよ…」
先日、ドラックストアで見た二人はやはりそういう関係なのだろうか。
聞くなんて野暮なことはできないし、他の人に伝えるなんてこともできない。
俺は一人で抱えてしまった重大な秘密にこれからしばらく頭を悩まされることになるのだった。
「おはよう」
先輩がコーヒー片手に休憩室で資料を読み込んでいた。
「新作出るんですか?」
「みたいだな」
大型タイアップが決まったと先日、津うだつが出ていた記憶を引っ張り出す。
先輩から資料を借りて読んでいたら店長が慌ただしく休憩室に駆け込んできた。
「みんな悪い、遅くなった」
「え?今日店長出勤遅番でしたよね?」
現在は八時、遅番の場合は十一時半に出勤することになっている。
「あ、あれ?そうだっけ?」
店長はシフト表をつかんで睨むように見ている。
「店長らしくないですね」
寝癖がところどころ跳ねているだけでなく、シャツの襟がよれいてる。
「くっそ、あいつ…」
小さい声で店長が悪態をついた。
「あいつ…?」
たぶん聞き取れたのはせいぜい近くにいた俺くらいだったのだろう。
「あ、いやなんでもない」
店長は首を振ると寝癖を手でさっと直す。
「まぁ来ちまったものはしょうがないから今日は早番で出るわ」
「大丈夫じゃないですか、今日は遅番に鍵持って帰られる人多いですし」
店のカギは二本ある。
それを店長や副店長、店長の代理になれるくらい昇格した社員などで当番のようにかけているのだ。
「助かる」
店長はシャツの襟を正すとそのまま店長室に入っていった。
しかし俺はシャツの隙間から見てはいけないものを見てしまった。
「…あれ、絶対そうだよな」
ちらりとシャツの隙間から見えた店長の肌に色濃く残った唇のあと。
それは業務中に俺の脳裏から離れなかった。
「勘弁してくれよ…」
先日、ドラックストアで見た二人はやはりそういう関係なのだろうか。
聞くなんて野暮なことはできないし、他の人に伝えるなんてこともできない。
俺は一人で抱えてしまった重大な秘密にこれからしばらく頭を悩まされることになるのだった。
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