モブな俺は秘密の恋人たちを見守ってます

浅上秀

文字の大きさ
上 下
7 / 14
秘密の二人の関係に気づくまで

7話

しおりを挟む
「おはようございます」

「おはよう」

先輩がコーヒー片手に休憩室で資料を読み込んでいた。

「新作出るんですか?」

「みたいだな」

大型タイアップが決まったと先日、津うだつが出ていた記憶を引っ張り出す。
先輩から資料を借りて読んでいたら店長が慌ただしく休憩室に駆け込んできた。

「みんな悪い、遅くなった」

「え?今日店長出勤遅番でしたよね?」

現在は八時、遅番の場合は十一時半に出勤することになっている。

「あ、あれ?そうだっけ?」

店長はシフト表をつかんで睨むように見ている。

「店長らしくないですね」

寝癖がところどころ跳ねているだけでなく、シャツの襟がよれいてる。

「くっそ、あいつ…」

小さい声で店長が悪態をついた。

「あいつ…?」

たぶん聞き取れたのはせいぜい近くにいた俺くらいだったのだろう。

「あ、いやなんでもない」

店長は首を振ると寝癖を手でさっと直す。

「まぁ来ちまったものはしょうがないから今日は早番で出るわ」

「大丈夫じゃないですか、今日は遅番に鍵持って帰られる人多いですし」

店のカギは二本ある。
それを店長や副店長、店長の代理になれるくらい昇格した社員などで当番のようにかけているのだ。

「助かる」

店長はシャツの襟を正すとそのまま店長室に入っていった。
しかし俺はシャツの隙間から見てはいけないものを見てしまった。

「…あれ、絶対そうだよな」

ちらりとシャツの隙間から見えた店長の肌に色濃く残った唇のあと。
それは業務中に俺の脳裏から離れなかった。

「勘弁してくれよ…」

先日、ドラックストアで見た二人はやはりそういう関係なのだろうか。
聞くなんて野暮なことはできないし、他の人に伝えるなんてこともできない。

俺は一人で抱えてしまった重大な秘密にこれからしばらく頭を悩まされることになるのだった。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

水泳部合宿

RIKUTO
BL
とある田舎の高校にかよう目立たない男子高校生は、快活な水泳部員に半ば強引に合宿に参加する。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

処理中です...