モブな俺は秘密の恋人たちを見守ってます

浅上秀

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秘密の二人の関係に気づくまで

6話

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その日の営業が終わり閉店作業も落ち着いたころだった。

「お疲れさまでした」

バイトを筆頭にちらほらと人が退勤していく。

「お疲れ様です」

俺は今日教えてもらった在庫の発注に四苦八苦していた。

「お先に失礼します」

「おつかれ」

店長は自分のパソコンに何かを打ち込んでおり、まだ仕事は終わらない様子だ。
その傍らではコーチが難しい顔をしてタブレットをのぞき込んでいた。

「ちょっといいかな」

「あ、はい」

店長とコーチの二人が休憩室から出て行った。
俺は興味本位にそっと二人のあとをつけてみる。



店長が先に倉庫にはいると後ろ手にコーチが扉を閉めた。

「うわ、やっぱりあの二人…」

だめだ。
疲れているから頭がそういう方向にしか働かない。

「とりあえず今日は帰ろう」

俺はこれ以上の詮索をやめて帰宅することにした。



久しぶりの休日。
接客業は土日こそ休めないが、平日はわりとフリーに休みが取れる。
それに平日のほうがどこも空いている気がする。

「今日は外出するつもりじゃなかったんだけどなぁ」

俺は実家から三駅ほど離れた場所に一人暮らししているが、実家にいる妹が拗らせた風邪が母にもうつったため諸々の買い出しを頼まれたのだ。

「えーと、風邪薬はこれで、冷えピタとスポーツドリンクと…」

ぶつぶついいながら大きめのドラックストアで商品を選んでいた。

「ん?あれ?」

棚を通り過ぎた後ろ姿に見覚えがあった。

「コーチ…?」

そそくさと棚の間を進んでいく後ろ姿を俺は何気なく追いかけてしまった。

「おまたせ」

レジで誰かを待たせていたようだ。
コーチの背中越しに見えた人は店長だった。

「…よし、俺は何も見ていない」

というか今日、店長も休みだったか。
頭の中でシフト表を思い浮かべるが、さすがに店長の休日は把握していなかったのでわからなかった。

「いやいや業務中に二人でいることもないだろ…というかドラッグストアに何の用だ?」

コーチの手元の商品を遠目にみるが何かわからなかった。

「次の方、こちらのレジへどうぞ」

二人はもう会計を済ませたらしく、足早に店を出て行った。
俺は追いかけたい気持ちにかられたが、自分の会計がまだなことを思い出し、慌ててレジに並んだのだった。






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