モブな俺は秘密の恋人たちを見守ってます

秘密の二人の関係に気づくまで

2話

「お疲れ様です」

今日、早番だった俺は18時には店を出た。

「久しぶりに飲みに行こうかなぁ」

明日は休日だ。
飲んでから帰ろうと思い、飲み屋街に脚を運んだ。

「いらっしゃい。何名様で？」

「あ、1人です」

「こちらのカウンターへどうぞ」

「はい」

カウンターに腰掛けるととりあえずビールを注文した。
ツマミとビールをちょこちょこ摘んでいると後ろのテーブル席から聞き慣れた声が聞こえてきた。

「ん？」

そっと振り向くとそこには電話中の店長の姿が。

「て、店長！？」

「お」

電話中の店長と目があった。
慌てて会釈する。

「お、お疲れ様です」

「おう、今日は休みか？」

電話を切った店長が話しかけてくる。

「い、いえ、早番だったので」

「おお、そうか」

「店長はお休みでしたよね？」

「あぁ。でもこれから接待なんだ」

「へ、へぇ」

見たところ店長1人しかいないようだった。

「お前も一緒に来るか？」

「い、いや、遠慮しておきます」

「ははは、だよな」

店長は笑いながら電子タバコを吸い始めた。

「おつかれ」

不意に後ろから声をかけられた。

「あ、お疲れ様でーす」

店長が立ち上がり、声の主に礼をした。

「お、お疲れ様です」

俺も一応、立ち上がって礼をした。

「いやぁココにくるまで迷っちゃったよ。で、彼は？」

声の主は店長と親しげに話をし始めた。

「あぁうちの社員ですよ。山田くん、こちら今度からエリアマネージャーになられる今野さん」

「今野です。よろしく」

「あ、山田です。よろしくお願いいたします…じゃあ、私はこれで…」

「あぁ、うん」

「また店舗で」

「はい」

接待の邪魔をしてはいけないと思い、俺は慌てて居酒屋を飛び出るのだった。