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第六章 久しぶりにギルドに行く
1話
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結婚してからマルクは以前より休みが増えた。
そんなある日のことだった。
「あ、グレン、今日出かけるから」
「ん」
食事をしていたグレンにマルクが声をかける。
咀嚼していたものを飲み込んだグレンがマルクに尋ねる。
「マルク、今日休みなの?」
「そうなんだよ。団長が新婚のうちは休めるだけ休んでおけって」
「そうなんだ」
グレンは結婚を報告しに行った時の団長の様子を思い出していた。
「さて、食べ終わったら出かける用意しようか」
「うん」
…
二人で一緒に馬車に乗り込む。
「で、どこ行くの?」
「あ、行先言ってなかったっけ?」
「うん」
景色がどんどんと流れていく。
「ギルド」
「へ?」
グレンは目を見開いてマルクをみた。
「ギルド」
「いやいや、聞こえてたけどさ、あんなに俺が行くの嫌がってたよな?」
「まぁね」
マルクはなんだか歯切れが悪い。
「急にどうしたんだよ?」
「んー…結婚報告したら下手に手を出す輩も減るかなって」
「手を出すって俺に?そんなやつ元からいねぇよ…」
「いや、いる。絶対いる」
ギルドに到着するまで二人はグレンに手を出すやつがいるのかいないのかずっと押し問答を繰り返していたのだった。
…
「ほんと久しぶりに来たなぁ…」
ギルドに到着して馬車を降りたグレンは入り口のアーチを見上げた。
グレンに続いてマルクも馬車から降りてくる。
「さ、行こうか」
マルクの表情はさながら戦場に向かう戦士のようだった。
「いやいやそんなに意気込まなくても…」
グレンは呆れ顔でマルクのあとをついて行く。
…
建物の中に入ると受付があり、そこにはいつも同じ受付嬢が座っている。
「こんにちは。本日は何のご用事でしょうか?」
「結婚報告に」
「か、かしこまりました」
受付嬢は二人の顔を交互に見ると急いで手続きを始めた。
「それではこちらの扉から奥へどうぞ」
「どうも」
二人は言われた扉をくぐり、廊下の奥に進んでいく。
奥には何人か人がいた。
「おぉ、グレンじゃねーか!」
気さくに男が声をかけてくる。
瞬時にマルクの冷たい視線が男を射抜く。
「ひ、久しぶりだな」
「まったくだよ!でもここに何の用だよ?」
男は奥の部屋を指さした。
「あー、ちょっとな」
グレンの様子に男は何かを察した。
「訳ありってか、んじゃまた冒険でも行こうや」
「き、機会があったらな」
グレンはどんどんと冷たくなるマルクの視線を感じて早くこの場を去りたかった。
男がいなくなるとマルクは奥の部屋に向かって歩き出した。
「ほら見ろ」
「手は出されてないだろ」
「同じようなもんだよ」
馬車の中で完結したはずの押し問答が再び始まるのだった。
そんなある日のことだった。
「あ、グレン、今日出かけるから」
「ん」
食事をしていたグレンにマルクが声をかける。
咀嚼していたものを飲み込んだグレンがマルクに尋ねる。
「マルク、今日休みなの?」
「そうなんだよ。団長が新婚のうちは休めるだけ休んでおけって」
「そうなんだ」
グレンは結婚を報告しに行った時の団長の様子を思い出していた。
「さて、食べ終わったら出かける用意しようか」
「うん」
…
二人で一緒に馬車に乗り込む。
「で、どこ行くの?」
「あ、行先言ってなかったっけ?」
「うん」
景色がどんどんと流れていく。
「ギルド」
「へ?」
グレンは目を見開いてマルクをみた。
「ギルド」
「いやいや、聞こえてたけどさ、あんなに俺が行くの嫌がってたよな?」
「まぁね」
マルクはなんだか歯切れが悪い。
「急にどうしたんだよ?」
「んー…結婚報告したら下手に手を出す輩も減るかなって」
「手を出すって俺に?そんなやつ元からいねぇよ…」
「いや、いる。絶対いる」
ギルドに到着するまで二人はグレンに手を出すやつがいるのかいないのかずっと押し問答を繰り返していたのだった。
…
「ほんと久しぶりに来たなぁ…」
ギルドに到着して馬車を降りたグレンは入り口のアーチを見上げた。
グレンに続いてマルクも馬車から降りてくる。
「さ、行こうか」
マルクの表情はさながら戦場に向かう戦士のようだった。
「いやいやそんなに意気込まなくても…」
グレンは呆れ顔でマルクのあとをついて行く。
…
建物の中に入ると受付があり、そこにはいつも同じ受付嬢が座っている。
「こんにちは。本日は何のご用事でしょうか?」
「結婚報告に」
「か、かしこまりました」
受付嬢は二人の顔を交互に見ると急いで手続きを始めた。
「それではこちらの扉から奥へどうぞ」
「どうも」
二人は言われた扉をくぐり、廊下の奥に進んでいく。
奥には何人か人がいた。
「おぉ、グレンじゃねーか!」
気さくに男が声をかけてくる。
瞬時にマルクの冷たい視線が男を射抜く。
「ひ、久しぶりだな」
「まったくだよ!でもここに何の用だよ?」
男は奥の部屋を指さした。
「あー、ちょっとな」
グレンの様子に男は何かを察した。
「訳ありってか、んじゃまた冒険でも行こうや」
「き、機会があったらな」
グレンはどんどんと冷たくなるマルクの視線を感じて早くこの場を去りたかった。
男がいなくなるとマルクは奥の部屋に向かって歩き出した。
「ほら見ろ」
「手は出されてないだろ」
「同じようなもんだよ」
馬車の中で完結したはずの押し問答が再び始まるのだった。
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