31 / 120
第三章 屋敷でトラブル
10話
しおりを挟むそんな俺達家族の暮らしは、リーネと俺が出逢ってから十三年が過ぎていた。リーネは二十六(実年齢はたぶん二十五)となり、トーイとイワンもだいたい十四くらい(実年齢はたぶん十三くらい)、カーシャは十(実年齢はたぶん九)になっていた。
そうだ。トーイとイワンももうすぐ<大人>の仲間入りができる年齢なんだよ。
一方でリーネはすっかり<いかず後家>状態だ。でも、それでいい。しかも、イワンはますますリーネのことを真剣に好きになっているようだし。
「僕がリーネを幸せにする!」
堂々とそんなことまで口にするようになって。それに対して彼女は、
「ありがとう。嬉しいよ、イワン」
笑顔で応えてたりもする。
基本的に優男なイワンに比べるとトーイは、鉄を打つ姿もすっかり様になって、体も年齢の割にはがっちりしてきて、<一人前の男>の風格が出てきたな。さらにはトーイが作る品物の質も決して悪くない。まだまだひよっことはいえ、もう立派に<職人>の末席には加われたと思う。
で、カーシャはと言うと、
「リーネ! お鍋が吹きこぼれちゃう!」
竈にかけていた鍋が出す音を聞きつけて、教えてくれた。
「ありがとう! カーシャ!」
礼を口にしながらリーネは鍋を火力の低い方へと移した。
そんな感じで、相変わらず楽しくやってる。そこに、
「あ、マリヤおしっこした」
カーシャが今度は臭いを嗅ぎつけて報せてくれる。
「おお、おお」
俺は慌てて隣の部屋で寝ていたマリヤのところに駆けつける。
マリヤは今年生まれたばかりの赤ん坊だ。麓の村でな。そう。また子供を引き取ってきたんだ。
『男じゃなきゃ要らない』
と言う夫婦の下からな。そこにはもう女の子がいたから、あとは畑仕事に使える男しか要らなかったんだよ。で、
「赤ん坊、要らないかい?」
ってそこの母親が訊いてきたもんだから俺は、
「要らないんなら、貰う」
と、二つ返事で。カーシャも大きくなったし、正直、また子供を育てたくなってたってのもあってな。
ああ、いいよ。子供はいい。こっちのすることがダイレクトに反応として返ってくる。接し方をしくじれば機嫌を損ねるし、逆にハマればすごく喜んでくれる。その上、アントニオ・アークが育てたら、トーイもイワンもカーシャも、ゆかりとはまったく違った子に育ってくれた。特にカーシャは、俺のことが大好きな朗らかな子なんだ。そして彼女がどうしてそんな子に育ってくれたのか、今の俺にはその理由が分かる。
何しろ、彼女には委縮しなきゃならねえ理由がねえんだ。見ず知らずの相手に対しては警戒しても、家族の前では明るくいられてるんだよ。
そうだ。トーイとイワンももうすぐ<大人>の仲間入りができる年齢なんだよ。
一方でリーネはすっかり<いかず後家>状態だ。でも、それでいい。しかも、イワンはますますリーネのことを真剣に好きになっているようだし。
「僕がリーネを幸せにする!」
堂々とそんなことまで口にするようになって。それに対して彼女は、
「ありがとう。嬉しいよ、イワン」
笑顔で応えてたりもする。
基本的に優男なイワンに比べるとトーイは、鉄を打つ姿もすっかり様になって、体も年齢の割にはがっちりしてきて、<一人前の男>の風格が出てきたな。さらにはトーイが作る品物の質も決して悪くない。まだまだひよっことはいえ、もう立派に<職人>の末席には加われたと思う。
で、カーシャはと言うと、
「リーネ! お鍋が吹きこぼれちゃう!」
竈にかけていた鍋が出す音を聞きつけて、教えてくれた。
「ありがとう! カーシャ!」
礼を口にしながらリーネは鍋を火力の低い方へと移した。
そんな感じで、相変わらず楽しくやってる。そこに、
「あ、マリヤおしっこした」
カーシャが今度は臭いを嗅ぎつけて報せてくれる。
「おお、おお」
俺は慌てて隣の部屋で寝ていたマリヤのところに駆けつける。
マリヤは今年生まれたばかりの赤ん坊だ。麓の村でな。そう。また子供を引き取ってきたんだ。
『男じゃなきゃ要らない』
と言う夫婦の下からな。そこにはもう女の子がいたから、あとは畑仕事に使える男しか要らなかったんだよ。で、
「赤ん坊、要らないかい?」
ってそこの母親が訊いてきたもんだから俺は、
「要らないんなら、貰う」
と、二つ返事で。カーシャも大きくなったし、正直、また子供を育てたくなってたってのもあってな。
ああ、いいよ。子供はいい。こっちのすることがダイレクトに反応として返ってくる。接し方をしくじれば機嫌を損ねるし、逆にハマればすごく喜んでくれる。その上、アントニオ・アークが育てたら、トーイもイワンもカーシャも、ゆかりとはまったく違った子に育ってくれた。特にカーシャは、俺のことが大好きな朗らかな子なんだ。そして彼女がどうしてそんな子に育ってくれたのか、今の俺にはその理由が分かる。
何しろ、彼女には委縮しなきゃならねえ理由がねえんだ。見ず知らずの相手に対しては警戒しても、家族の前では明るくいられてるんだよ。
0
お気に入りに追加
954
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。







ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる